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第三章 崩壊(3) 密約(1)

 「俺ももう六十か・・・」

 ダルタンは白髪混じりの頭を撫でた。

 歳はとったがダルタンの精力はまだ落ちていなかった。内に政治と経済を見、外にはホリンを狙うストランドスを横合いから牽制していた。

 コリント、オルト、ドローアスはいまだ健在。その上ダルタン子飼いの部将達も育ってきていた。

 そんなダルタンにも頭の痛い問題があった。ヘンリーのことである。彼は三ヶ月やそこらレジュアスにいるとまたログヌスへと旅立った。

 「またか・・・」

 ハンコックからその連絡を受けてダルタンは呆れたように溜息をついた。

 大道を通ればヘンリーは必ずロマーヌロンドに入る。そこで足止めをし、レジュアスから軍を持って迎えに来させ、言うことをきかねば幽閉同様とする。ダルタンはそこまで考えていた。が、ハンコックの考えは違った。少人数で、あくまで説得するつもりでロマーヌロンドまでやって来ていた。

 チッと舌打ちを漏らしダルタンは自分の軍を使った。

 甘い・・どいつもこいつも・・・

 ダルタンは思った。

 これではレジュアスは、早晩・・・


 ダルタンの軍に周りを囲まれヘンリーはタキオスまで戻っていた。

 「お前達、主人は誰か解っているのか。」

 そこでヘンリーの感情がキレた。

 「ハンコック、お前の王は誰だ。」

 「貴方です・・・ですが・・」

 ハンコックは間を置いて言い続けようとした。

 「そう、レジュアスの王は吾、ヘンリーだ。」

 それに被せヘンリーは怒鳴り声を上げた。

 「ダルタンではない。」

 ハンコックは何十年もレジュアスの官として仕えてきた。ヘンリーの怒声にその本能が反応した。

 「ですが・・・」

 声が王族に対する畏れを帯びる。それは野人として生きてきたダルタンにはないことだった。

 「国が・・・」

 「国は吾の為にある。」

 「王は・・民を・・・」

 「民は王を賄う為に存在する。」

 その言葉が間違いであることはハンコックには判っている。が、何十年も王制の中に生き、王を支えることだけの人生を送ってきたハンコックにそれに異を唱える言葉はなかった。

 「吾はログヌスへ・・姉の元に行くぞ。」

 「しかし・・それでは国が・・・」

 「一月(ひとつき)・・今回は一月(ひとつき)だけの滞在とする。」

 「約束ですぞ。」

 遂にハンコックは折れ、その場でダルタンに通行の許可を求める手紙を書いた。

 「やはり無理か・・ハンコックでは留めが効かぬ。」

 ダルタンは側のコリントに漏らした。

 ヘンリーはニヤニヤとダルタンを蔑むように笑いながらロマーヌロンドを通過した。

 次の大きな町モタリブスまでは小さな村や集落で寝泊まりを重ねる。その間にもヘンリーの欲望は色々な問題を起こした。ある時は女を拐かし、ある時は応接の仕方が悪いと民を鞭打った。そんな情報に触れるたび、ダルタンは苦々しげな顔をした。

 「レグノスに行ってくる。」

 約束の一月(ひとつき)が過ぎてもヘンリーに自身の国に帰る様子はなく、ダルタンは遂に腰を上げた。

 レグノスの会議の間に集まった者はハンコックは言うに及ばず、前の大戦を戦ったヘリオス、グラント、それに若いバッケイ、モアドスの元の将、ブルス、新参のオベイという者までが居た。

 「ヘンリーは諦めたらどうだ。」

 ダルタンは開口一番そう言い、驚く一同を見廻し、尚も続ける。

 「国政をおざなりにし、民を顧みず、自身の遊興と欲望のみに溺れる。このままこのようなことが続けば暴動が起きるぞ。」

 解っている・・ハンコック達にもそれは解っていた。が、どうすればいいのか・・・

 「共和制を敷いたらどうだ。」

 あっけにとられるハンコック達にダルタンが続ける。

 「この隙をストランドスに衝かれてはならない。国を潰さぬ為だ。」

 現実は解る・・だがずっと王制の中で生きてきたハンコック達にとって、ダルタンの意見は簡単に呑めるものではなかった。

 答えは一様に、“考えてみる”だった。

 遅く成らんがいいぞ。との言葉を残してダルタンはネオロニアスに帰っていった。

 ネオロニアスはダルタンが居ない隙をストランドスに衝かれていた。

 国境近くの集落が襲われ、荒らされていた。

 「こっちに攻めてきたか。

 まあ良い。その間はホリンが攻められることはない。

 但し、警戒だけは厳重にせんとな。」

 ダルタンは素早く自分の部下達に指示を出した。

 ストランドスとの戦いはモアドスに座るリュビーの牽制もあって大きなものにはならなかった。

 それからもダルタンは精力的に動いた。

 フィルリアに使いを送り来訪を伝えるとすぐに、ストランドスとの国境に兵を出しその辺りの敵を蹴散らし、自身はフィルリアへの使いの後を追った。それは独立した国家としてフィルリアと同盟を結ぶ為だった。

 ダルタンはギルサスの後に控える女王ミランダを初めて見た。四十を過ぎた女王は夫を持ち三人の子をなしていた。相対するギルサスは自分と同じかそれ以上の老将、彼は女王の全幅の信頼の元、全てを取り仕切っていた。色んな年齢の官や将も居並んでいたが、まだ青い。と言うのがダルタンの印象だった。

 それらの人物に取り囲まれた中でダルタンは中原の危機を語り、それを収める為の協力を求めた。

 ギルサス以外の者達はミランダの前に出てはあれこれと意見を言った。が、最後にはギルサス、

 「受けては如何ですかな。

 レジュアスが弱体化すればストランドスはホリンを狙います。ホリンを穫ればストランドスの国力は増大します。そうすれば次は・・次はとなる事は明白。ならばそう成る前にネオロニアスと結ぶ。それが最上の策かと思われます。」

 フィルリアとの裏の同盟はなった。


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