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◇◇
夜通し馬を飛ばして朝日が昇る頃にアッサム王国の王都に入った。
でも様子がおかしい……。人の気配がないのだ。朝早いから通りに人がいないのは分かる。でも家の中からも声がいっさい聞こえてこない。
いったいどうなっているの?
「くっ。遅かったのね……」
リゼットが悔しそうに漏らしている。
「いったい何なのよ!? そろそろ教えなさい!」
私が大きな声を出したとたんに、「ヒヒィィィン!」と馬がいななき、大きくのけぞりながら止まった。
「メリッサ!」
メリッサ?
ショートカットの若い女性が両手を広げて馬の前に立っているのがリゼットの背中越しに見える。
「リゼットさん! ソフィア慈愛教会の跡地へ急いでください! 宮廷魔術師様たちが強力な結界を張って、人々を守っております!」
「メリッサ。いいの。そこを通しなさい」
「どうしてですか!? 王宮には恐ろしい悪魔があらわれて、近衛兵たちが何人も犠牲になっているのですよ!」
恐ろしい悪魔……。
念のため自分の手を確認する。
いや、まだ私は悪魔じゃない。
となると他の誰かが悪魔になったということ?
それとも外から悪魔が襲ってきたの?
「いいからどきなさい!!」
「嫌です!! いくらリゼットさんでもかないませんもの!!」
メリッサが泣き叫ぶ。
本当にリゼットの身を案じているのだろう。
リゼットはほんの少しだけ考え込んでいたが「仕方ないわね……」と漏らして、ピンと背筋を伸ばした。
そしてとんでもないことを言い出したのである――。
「ここにいるのは女神イシス様の生まれ変わり。悪魔を退治できる聖女様なの」
は?
誰が?
そんな人、どこにいるの?
キョロキョロと周囲を見回す私に、首をこちらに向けたリゼットとメリッサの視線が集まる。
「シャルロット様。あなたは悪魔などではありません。むしろその逆……。悪魔を倒せる唯一の人間――聖女様なのです!」
ちょ、ちょっと待って!
じゃあいったい誰が悪魔なの?




