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はっきり見て取れる、焦りと驚き。
これまでどんな無茶ぶりをしても見せたことのない表情だ。
――信じられない……!
と言わんばかりだけど、それはこっちのセリフだわ!
そんなに休日をもらえないことが意外でならなかったのね。
いいわ。だったらちゃんと説明してあげる。
サイテーの執事でも分かるようにね。
「あんたねぇ。いったい誰のおかげでご飯が食べられてると思うの? この際だから言っておくけど――」
自分でも信じられないほど言葉がスラスラと口をついて出てくる。
まるで堰を切ったみたい。
一方のクロードの方はますます怖い顔になって、一歩また一歩と私に近づいてきた。
威圧をかけてるつもりなのかしら?
ふふ。そんなものに屈する私ではないわ!
「そもそも1日中ゴロゴロしていたいって何? これだから近頃の執事はダメなのよ!」
ついに私のすぐそばまでやってきたクロードが私の目をじっと見つめている。
逃げるものか!
私もクロードから目をそらさない。
「私にギャフンと言わされて、言葉も出ないようね。ふふ。いい気味だわ! だったらもう一度言ってあげる! 休日がほしいですって? そんなもの――」
絶対にくれてやらないんだから!
そう言いかけた瞬間だった――。
「なんでだよ!!」
――ダンッ!
クロードが私の肩越しに手を伸ばし、壁を突いたのだ。
ほんのり上気した顔がすぐ目の前に迫る。
ドキンと胸が脈打ち、頭が真っ白になった。
ちょっとだけ荒れたクロードの息が、私の前髪に触れる。
生暖かくて、背中がゾクリと震える。
何も考えられない。
でもここで怯んだら負けだ。
何か言わなくちゃ。
先走った感情のおもむくまま、口をついて出てきたのは……。
「す、す、好きにしていいわよ!」
『純情王女、俺様系わがまま執事に壁ドンで迫られる~「好きにしていいわ!」からはじまる危険な恋~』と同じセリフ……。
もしあの小説と同じ展開なら、私はクロードに……。
あわわっ! ど、どうしよう!?
ゆっくりと私から離れる。
クロードの顔から固さが抜けている。
ほんの少しだけ沈黙が流れる。
ドキドキして震えが止まらない――。
そしてクロードは私に……。
「では、そうさせてもらう」
クルリと背を向け、そのまま早足で部屋を出て行ってしまったのだった。




