第7話:帰還、そして王都へ凱旋
今回の調査任務を終え、私たちは街への帰路についていた。
私は新しく従魔になった雪華の背に乗っている。フェンリル状態の雪華はとても大きいので、レイラさんたち女性陣全員が一緒に乗ってもびくともしない。至高のもふもふに包まれる移動空間、これだけで転生してよかったと思える。
けれど、街の門が近づいてきた頃、レイラさんが困ったように眉を下げた。
「うーん、このままだと雪華ちゃん大きすぎて、街の門を通れないかも。一般の人たちもパニックになっちゃうし……」
「がう?」
私の膝元に顔を寄せてきた雪華が、短く鳴いた。
「え? 小さくなれるの? そうだね、秋田犬くらいになれるかな?」
あ。
また前世の癖で、この世界の人にはわからない「秋田犬」なんて単語を口にしてしまった。
「……っと、これくらいの大きさになれる?」
「ワフ!」
私の意図を察してくれたのか、雪華の巨体が眩い光に包まれる。光が収まると、そこには見事に(秋田犬くらいのサイズの)中型犬サイズになった真っ白なもふもふ狼が座っていた。
「……賢いね。えらいえらい」
私は表情筋を完全にピキピキに凍らせたクールなお嬢様の顔のまま、無言で雪華の頭を優しく撫でてあげる。心の中の元気印は『天才! 私の雪華ちゃん世界一可愛い!!』と大はしゃぎしているけれど、表には絶対に出さない。それが雪女の矜持。
すると、その様子をじっと見ていたコテツちゃんが、両手をグーパーさせながら限界そうな顔で近づいてきた。
「せ、せ、拙者も……拙者も撫でていいかな!? いいかな!?」
「……多分、大丈夫」
私が許可を出すと、コテツちゃんは目を輝かせて雪華の毛並みに飛び込んだ。
「うわぁぁ〜〜! もふもふだ〜〜!」
「お、じゃあ俺も――」
調子に乗って手を伸ばしてきた男の団員A(懲りないナンパ野郎・本日4回目)。
ガブッ!!!
「ギャァァァァァァァ!?」
男の悲鳴が森にこだまする。男はダメ。速攻で噛まれた。
首を食いちぎらないなんて、本当に雪華は賢くてえらいね。
あんなの食べたら、お腹壊しそう。
無事に街へ戻り、役場への報告を済ませた後。
レイラさんから、森の異常凍結(私が冷気を漏らしていたアレ)も完全に収まったため、明日には王都へ戻ると告げられた。
「そこでなんだけど、氷麗ちゃんはどうする? 正式な団員ってわけじゃないから、ここで自由に行動してもいいんだよ?」
そう言うレイラさんの目は、あからさまに「期待」で満ちていた。目の奥に『私を王都に連れて帰って毎日めでたい』とデカデカと書いてある。
実はこの数日、宿舎のお風呂で一緒だったのだ。
レイラさんには双子の妹がいるじゃん、と思ったけれど、どうやら「年下枠の女の子」は別腹らしい。男からのナンパとはまた違う意味で生存の危機を感じたのは、ここだけの秘密だ。
さて、これからどうしようかな。
長生きするための拠点探しも必要だし、熱くない安全な場所がいい。
「……うん。レイラさんたちに、ついて行ってみようかな。色々なことは、王都に行ってから決める」
私がツンとした顔のままそう告げると。
「やったぁぁぁーーー! ツララちゃん大好き!!」
ぎゅうううううっ!
「……っ!?」
レイラさんに勢いよく抱きしめられ、そのまま頭をわしゃわしゃとナデナデされた。
急な体温に一瞬びっくりしたけれど……不思議と嫌な熱さじゃない。
(……まぁ、これはこれで、悪くないかも)
クールなポーカーフェイスの下で、ほんの少しだけ頬を緩ませてしまった私だった。




