第6話:もふもふゲット!
王都の騎士団が、なぜこんな田舎の森にいるのか。
実は彼らは王都所属の一流騎士たちで、普段は王都を守るのが主な任務らしい。けれど、今回は特別な依頼があってこの地に遠征してきたのだという。
「町の近くの山で異変があったのよ。『巨大な狼を見た』とか『森の一部が突然凍りついた』とかね。だから私たちが調査に駆り出されたってわけ」
歩きながら説明してくれるレイラさんに、私は首を傾げた。
そういう怪物の調査って、普通は冒険者とかギルドの仕事じゃないのかな?
「私もできたら、そういう冒険者みたいな仕事がいいな」
「ツララちゃ〜ん? 浮気はNGだよ〜?」
ヒエッ。こわいこわい、レイラさん。笑顔のまま私の真後ろに立つのをやめてほしい。冷気使いの私でも背筋が凍る。
そんなわけで、騎士団の遠征に同行することになった私。
ちなみに、騎士団の男たちにも「ただの脳筋」としてだいぶ慣れてはきたのだけれど。
「氷麗ちゃん、この後、僕とお茶でも――」
「あ、ごめんなさい。ちょっとまだ男の人が近くにいるのは無理です」
パキィィィン。
声をかけてきた名も知らぬ団員Aさん(懲りないナンパ野郎)は、笑顔のまま一瞬でカチンコチンの氷像になった。
よし、これで本日3体目の道標が完成だ。帰り道迷わずに済みそう。
そうして和気藹々(?)と森を進むうちに、空気を震わせる鋭い遠吠えが響き渡った。
「しまった、フェンリルだ! 全員警戒せよ!!」
団長の怒号が響く。
フェンリル!? おおお! 雪女の供といえば、大概は狼と相場が決まっている。私ももふもふな狼、絶対にゲットしたい……!
そこから、数十分に及ぶ死闘(?)が始まった。
次々と戦闘不能になっていく騎士たち。
私は【吹雪】と【絶対零度の宮殿】にフェンリルをご招待してあげた。
相手は伝説の魔獣なので、殺さないように手加減するのが一番骨が折れる。
結果、私は見事にフェンリルを降した。
ちなみに、確認したらメスだった。良かった……もしオスだったら、近づいてきた瞬間に凍らせて粉々に粉砕していたかもしれない。
そして今、私の前で大きな白い狼がゴロンとお腹を見せている。
(……ッッッッ!!! かわいいいいいいい!!!)
内心の元気印が大暴走して鼻血を吹き出しそうになっているけれど、私は雪女の矜持を保つため、ツンとすましたクールお嬢様の顔(目はガチ)のまま、もふもふの巨体に歩み寄った。
「……名前をつけないと。何がいい?」
クゥン、とフェンリルが可愛く鳴く。
「こまめと、あずき、どっちがいい?」
ク〜ン……(どっちも嫌そうに目をそらす)。
え、いい名前なのに。和菓子っぽくて。
「じゃあ、おいなりは?」
(ジト目)。
ダメらしい。お稲荷さんは狐か。
「……雪華、いくない? 私の獣魔らしくて」
そう呟いた瞬間、フェンリルが嬉しそうにコクリと頷いた。
途端にまばゆい光が彼女を包み込む。光が収まると、雪華の額には美しい蒼い宝石が埋め込まれていた。契約完了の証だ。
「うんうん、よかよか……」
私は我慢できなくなり、雪華の真っ白な毛並みに顔をうずめ、お腹をわしゃわしゃと撫で回した。もう周囲の目なんて気にしておれない。もふもふ最高。
そんな私の姿を、レイラさんたち女性陣が温かい(生温かい)目で見つめていた。
「ツララちゃん、めちゃくちゃチートね……」
「伝説のフェンリルを従えるなんて……」
「ていうか、よく今までウチの男ども生きてたね」
「すけべ根性で近づいたやつ、全員一瞬で消し飛ばされてた可能性あるよ」
ちなみに男の騎士たちはというと、最初の雪華の全体範囲冷気攻撃に巻き込まれ、全員が凍傷で戦闘不能になって地面に転がっている。
「……よわっちぃ」
私は雪華をなでながら、小さな声で毒を吐いた。
すると、復活した団長が青白い顔で男たちを見下ろした。
「お前ら……帰ったら天国コース(地獄訓練の上位互換)な」
「「「「うげぇぇぇぇ!!」」」」
やっぱり訓練みたいだ。
「……おほん! ついてきなさい、雪華」
レイラさんたちの生温かい視線に気づいた私は、ハッと我に返り、わざとらしく咳払いをしていつものクール系お嬢様に戻った。
雪華は嬉しそうに私の後ろをトコトコとついてくる。
最高のもふもふをゲットした私は、内心でスキップをしながら森を後にした。




