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異世界妖怪奇譚〜雪女の場合〜  作者: るうと280
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第1話:なんか普通?


とりあえずは街に行ってみる?

そう思って、見知らぬ森の中を歩き始めたのはいいんだけど。


「……あ」


私が一歩踏み出すたびに、足元の草花がパキパキと音を立てて白く染まっていく。

どうやら、体から冷気が漏れ出しているみたい。しかも、霜が降りるなんて生易しいレベルじゃない。触れた瞬間に一瞬で凍りつく。これ、もしかして絶対零度ってやつかな?


このままだと歩くたびに環境破壊になってしまうので、意識して冷気をグッと内側に引っ込めてみた。

ラノベとかでよくある、魔力を引っ込める感じで・・・


「うん、なんか上手く行った」


冷気漏れは止まった。よしよし。

そう思った矢先、背後がなんだか騒がしいことに気づいた。複数の荒々しい足音と、下品な笑い声。


サクッ。


「あ」


気づいた時には遅かった。私のお腹から、ニョキッと何かが生えていた。

よく見なくてもわかる。これ、鉄の「槍」の刃先だ。


すぐさま二太刀目が振るわれ、またお腹に刃が刺さる。

血がドバドバとは・・・・出てないね。

痛みもない。刺されたお腹の周りには、パラパラと綺麗な雪が舞っている。

なんか、前世の漫画で見たな。変な木の実を食べて、色々な能力を持つとかいう、んで体が元素そのものになって物理攻撃を受け流すやつ。今の私はどうやらあれと同じ状態らしい。


「なんだ、こいつ、全然手応えがねえ!」


背後から男の声。

私は何も言わず、無表情のまま振り返りざまに手を振った。

氷を這わせ、極低温の刃と化した右手の手刀。それが男の首筋を撫でる。


チョンパ。


面白いように、男の首が胴体から離れて地面に転がった。

切り口は、すでに凍りついている。

……あれ? 意外に罪悪感がない。人を一人殺したはずなのに、心が驚くほど凪いでいる。どっかの骸骨みたいに精神が自然に安定させる機能でも働いているからだろうか。


そんな風に、盗賊チックな男の死体をじっと見つめていたら、森の奥からジャラジャラと騒がしい金属音が響いてきた。

現れたのは、ゴッツイ銀色の鎧をつけた、多分男たちの集団。


「なんだ、お前! 奴らの仲間か!」


一番前の男が、問答無用で、青く光を帯びた剣を勢いよく振り下ろしてきた。

さっきの槍は物理攻撃だけだったからノーダメージだったけど、あの剣の青い光は多分、魔力か何かが乗っている。あれはヤバイかも


「待て、カイン!」


ドシュッ、と肩のあたりに激しい衝撃。

真っ白な可愛い着物に、鮮烈な赤が飛び散った。

あ、血が吹き出た。これ、もしかして……やばいやつ?


(……え、嘘。転生して十分もしないうちに私、死亡?そっちに行っちゃうかも、おかえりって言ってくれるかな?それとも死んでしまうとは情けないって言うかな?)


私の意識は、そこで一度ぷつりと途切れた。


---


だけど、生きていた。


ゆっくりと目をあけると、視界に飛び込んできたのは木目の粗い板の天井だった。

現代っ子にはまず見馴染みのない、古い民宿のような板張りの天井。


「……見た事ない天井だ」


あ。

思わず口をついて出てしまった。

こういうお約束のセリフは絶対に言わないつもりだったのに。いざその状況になると、人間(元だけど)って言っちゃうもんなんだね。ちょっと恥ずかしい。


「気がついたかい?」


不意に、すぐ近くの横方向から男の声がした。


「ッ、――!」


ビクッと身体が反応した。男への警戒心と、おじさんのトラウマが脳裏をよぎる。

私は半ば条件反射で、寝たままの体勢から、声のした方向へ向けて全力の強烈な鉄拳をお見舞いした。


乙女の寝顔を許可なく覗き込むとは、イケメンでも許すまじ!イケメンだったかは知らないけど。


ドッゴォォォォン!!!


殴られた男は、凄まじい勢いで部屋の反対側まで転がっていき、壁に激突する大きな音が響いた。


あ、今の私、12歳くらいの小柄な女の子なんだけどな。

でも、寝たまま殴ったからそんなにダメージはないはず……だよ、ね?


恐る恐る壁の方を見てみる。

そこには、さっき私を剣で切りつけてきた銀色の鎧の男が、壁に上半身を派手に埋め込ませて埋まっていた。

足がピクピクと動いているので、死んではいないはずだ。


「……うん。私を切った人だし、殴ってオッケーだよね」


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