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異世界妖怪奇譚〜雪女の場合〜  作者: るうと280
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プロローグ:雪降らぬ森の氷麗(ツララ)


私は雪女。

名前は「自分で考えろ」って言われたから、氷麗ツララって名乗ることにしたよ。

……どうかな? なんか、響きがいくない?


あ、ごめん。あんまり人と話すの、得意じゃないんだ。


ここって転生するとこ?


そうなんだね。


うん、なんか背中から光が出てる人に、転生しない?って言われてさ。


そうじゃなくて?


ええと、ここに来た経緯だっけ?

うんと、あんまりいい話じゃないよ。聞く?

……そう? じゃあ話そうか。まぁ、大した話でもないんだけどさ。


私は向こうの世界では、16歳の女子高生だった。

その時に……うん、殺されたんだ。

犯人? 勿論知ってる。けど、それはもういいんだ。復讐? いいよ、正直めんどくさいし。それに……ま、いいや。


犯人は私のおじさん。つまり、お父さんの弟。

お父さんとは結構歳が離れてて、私より10歳くらい年上だったんだ。

昔から結構仲良くてさ、私に勉強を教えてくれたりもしてた。


ある時、自分の部屋で寝てたら、なんかがお腹にのしかかって来たんだ。

目を開けたら、おじさんでさ。

……まぁ、あれだよ。そう、わかるよね。


勿論、必死で抵抗したよ。

そしたら、なんか胸に、サクって感じの衝撃が走って。

痛いっていうより、びっくりしたな。おじさんが、そんなことできる人だと思ってなかったから。


向こうも予想外だったんだろうね。完全にパニクっちゃって、近くにあったストーブをひっくり返しちゃったんだ。

私の家、雪国だからさ。電気ストーブじゃない、灯油で焚くちゃんとしたやつ。

勿論、灯油が床一面にこぼれた。

そしたらおじさん、持ってたライターでそれに火をつけちゃってさ。


……うん。いや、でも先に煙を吸って気を失っちゃったから、火傷の痛みはなかったかな。

ただ、とにかく熱かった。


あの時、最期に気になったのはお父さんとお母さんのこと。自分のこと? 自分のことは「まぁ、いいや」って感じだった。


あ……そうなんだね。

二人とも、私より前にそっちに行ってたんだ。

ここにはいない? そっか。……うん、じゃあ、次はあっちで幸せになるといいね。


転生にあたっての希望?

そうね、できれば次は長生きしたいかな。

うん、あと、熱いのはもう嫌かな。


それでいいよ。

わかった。……ところで、魔王退治とかってあるの?

ゲーム? あんまりしないけど、ラノベでよくあるパターンじゃない? 転生してなんか魔王的な人をやっつけたり、婚約破棄されたり、自分が討伐対象として追われたり。

ああ、そういうのは無いのね? よかった。


男の人? しばらくは、いいかな。うん、結構。


前世への未練?う〜ん、ないと言えばないし。あると言えばあるのかな?

そうそう、マックはあるかとかさ。あははは、流石にないよね。


でもね、もしかして、憧れの世界っぽくて楽しみなところもあるよ。


うんそっか、わかった、じゃあ本当に好きにさせてもらうね。

うん、じゃあ、いってくる。帰ってきちゃいけない。あはは、そのつもりは今のところないよ。


教会? あるの? わかった、落ち着いたら行ってみるよ。

ふふ、なんか、お母さんみたいだね。ははは。

うん、それじゃあ、行くね。


色々ありがとね


---


案内人との対話が終わり、私は淡い光に包まれた。


浮遊感のあと、パッと視界が開ける。

気がつくと、私は見慣れない森の中にぽつんと立っていた。


「……あれ?」


雪女っていう種族だから、一面の銀世界にでも放り出されるのかなと思っていたけれど、そうでもなかった。

見上げるほどの巨木が青々と葉を茂らせ、木漏れ日が優しく地面を照らしている。


衣服の感覚に違和感を覚えて、自分の体を見下ろした。

白地に青い雪の結晶があしらわれた、すごく可愛い着物を着ている。手足は元の自分より少し小さくて、だいたい12歳くらいの見かけになっているみたいだ。


深呼吸をしてみる。

かつて胸を刺された痛みも、皮膚を炙ったあの嫌な熱さも、もうどこにもない。驚くほど体が軽い。


異世界転生モノの主人公なら、ここで「ここが異世界か!」なんて両手を広げて叫ぶところかもしれないけれど。


「……言わないよ、恥ずかしいし」


小さく呟いて、私は草履の鼻緒についた小さな雪だるまの飾りを、トントンと地面に打ち付けた。


うん、私かわいい、

氷麗ツララとしての、新しくて長い人生がここから始まるだ。・・・多分

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