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異世界妖怪奇譚〜雪女の場合〜  作者: るうと280
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第13話:命名「ミケ!」



深夜の女子寮。

部屋を絶対零度にして捕獲した怪盗猫目(仮)を前に、私と、騒ぎを聞きつけて乱暴に踏み込んできた街の警邏(警察)の男たち、そしてなぜかゴリラ団長を交えての大悶着が始まっていた。


「おい、そいつは王都を騒がせる重罪人だ! さあ、早くこちらに引き渡してもらおう!」

「……嫌です。あれは私の(もふもふ)だ」


私がツンとすました顔のまま猫耳をぎゅっと抱きしめると、警邏の隊長らしき男が声を荒らげた。


「いやいや、犯罪人なんだから国に引き渡すのが人の道理だろう!?」

「ふふふ。私に人の道理は通じないのですよ」

「なんでだよ!?」

「なぜなら――私は人間ではないからです!」


そう、私の種族は雪女。どちらかといえば妖魔とか妖怪とかアヤカシの類。

よって、人間が作った都合のいい理屈なんてものは、今この場で冷気と一緒に吐いて捨てます。


「くっ、都合のいい時ばかり異種族を主張しおって……!」


あれ? この警邏の男、私の性質をよく知っている気がする。

もしかして、あの謁見の間(王太子タコ殴り事件)のときに現場にいた人かな? だからさっきから、私から絶妙な『避難距離』を取って会話しているんだね。賢い。


「あ〜、まあまあ。とりあえずここは、俺たち白狼騎士団が預かろう」

ゴリラ団長が間に入って提案してくる。


「「ダメだ(嫌です)」」


警邏の男と私の声がハモった。三者ともに一歩も譲らない膠着状態。

すると、私の腕の中でプルプル震えていた猫又が、遠慮がちに手を挙げた。


「あにょ……もう寒いし、吾輩は帰っていいかにゃ……?」

「「「ダメに決まってるでしょ(だろ)!!」」」


全員から一斉に怒鳴られ、猫又は「ヒェッ」と耳を伏せた。


「とにかく、ミケは私がゲットしたんです。ゲットしたものに所有の権利があるんです」

「勝手にミケとか変な名前にするにゃ! 吾輩は怪盗猫目……っ!」

「黙って、ミケ(冷気ピキッ)」

「ミャッ……はいにゃ」


名前はミケに決定した。三毛猫じゃないけど細かいことはいい。


「いや、しかし法というものが……!」

なおも食い下がる警邏の男に、私は冷ややかなジト目を向けた。


「法? ならどうして、商業区で堂々と脱税しているあの大商人のお偉いさんたちを、あなた方は放っておくんですか?」

「なっ……!? なぜ、お前がそんな国家機密トップシークレットを……!」


(探索・諜報要員のレナさんから、色々聞いてます。主に裏のゴシップ記事的なやつをね)

私の情報網(女子会の口コミ)を舐めてもらっては困る。


「くっ……! ここは譲ってやる! ただし、そいつが今後ひとつでも悪さをしたら、エバンデール卿、あなたにも責任を取ってもらいますからね!」


エバンデール? 卿?

警邏の男が忌々しそうに指差した先には、腕組みをして鼻を鳴らしているゴリラ団長がいた。


「……エバンデール?」

「ん? ああ。レオポルド・フォン・エバンデール。俺の名前だ。ちなみに肩書きは辺境伯だぞ」


ギギギギギ……。

中世の錆びついた歯車みたいな音を立てて、私はゴリラ団長レオパルドの顔を見上げた。

まさかの貴族。しかも辺境伯って、軍事権を持った地方のトップで、普通の公爵や侯爵よりよっぽど権力がある、実質この国で一番偉いレベルのガチ大貴族のはずなんだけど。


私は凍りついた無表情のまま、ぽつりと言い放った。


「……名は体を表さないのね」

「何言ってるか分からんが、今、もの凄く失礼なことを言われた気がするぞ」


王太子の件といい、この白狼騎士団、バックが強すぎて逆に怖くなってきた。

まあ、可愛いミケ(もふもふ2号)を合法的にゲットできたので、細かいことはすべてこのゴリラ辺境伯に押し付けるとしよう。


私は腕の中のミケをわしゃわしゃと撫で回しながら、心の中で邪悪な笑みを浮かべるのだった。

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