表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界妖怪奇譚〜雪女の場合〜  作者: るうと280
PR
13/34

第12話:その名も猫目


あの胃が痛くなるような晩餐会から数日。

私は念願叶って、ミナちゃんやコテツちゃんたち女の子メンバーと一緒に、王都の街へ散策とお買い物に出かけたよ。


美味しいお菓子を食べながら賑やかな市場を歩いていると、街の人々がある噂話で持ち切りなのが耳に入ってきたんだ。


いま王都で最大の話題――それは、『怪盗猫目ねこめ』と呼ばれる盗賊の存在。


なんでも、狙った獲物の所有者にわざわざ事前に「予告状」を送りつけ、厳重に強化された警備をあざ笑うかのように掻い潜って、鮮やかに宝を盗み出していく輩らしい。

パクリ? いや、リスペクト。というか怪盗といえばこれしかないよね。


正体は誰も知らない。分かっているのは、頭に猫耳が生えていて、お尻の尻尾が二つに分かれているということくらい。


「……十分じゃね?」


情報量としてそれだけ分かっていれば十分すぎると思った。

っていうか、尻尾が二つに分かれた猫って。


「猫又じゃん」


うん、私のなかで決定した。新種の妖怪(同業者)の気配がする。

猫又ってのはね、百年生きた猫が妖力を得て、妖怪になるんだけど、きっかけは飼い主を殺されたりで悲しい話が多いんだよね。で、殺した相手に復讐しちゃうんだけどね。結局人を呪わばって奴でさ、討伐されちゃうんだよね。


深夜の女子寮にて


そんな噂を聞いた、ある日の夜のこと。

騎士団宿舎の女子寮(男連中がいないユートピア)で健やかに寝ていた私は、外の異様な騒がしさに目を覚ました。


外が妙にバタバタしている。

眠い目をこすりながら窓を開けて下を見てみると、白狼騎士団の男たちが「猫はあっちだ!」「いやこっちに逃げたぞ!」と、大声をあげて右往左往していた。相変わらず使えない男たちだ。


「……ふわぁ、うるさいなぁ」


そう呟いて窓を閉めようとした、その瞬間だった。


「ミャーーーッ! 退くのにゃーーーっ!!」


バリンッ!と小気味いい音を立てて、窓から何かが勢いよく飛び込んできた。

私は半ば条件反射でそれをスッと避けると、自分の吐息に軽い冷気を乗せて、侵入者へ向けてお見舞いした。


「ひゃうっ!? め、めっちゃ寒いにゃ……っ!?」


床に転がった侵入者が、身震いしながら恨めしそうにこちらを見上げる。

夜闇のなか、そいつの頭にはピコピコと動く猫耳。そしてお尻のあたりからは、細い尻尾が綺麗に二本、ゆらゆらと揺れていた。


本当に猫又だ。


「…………っ」


キラン。

暗闇の中で、私の目が怪しく、そして爛々と光り輝いた。

普段のポーカーフェイス(マイナス40℃)が、嬉しさのあまり一瞬でひび割れる。


(……待って。もふもふ。猫耳。しかも猫又。超絶かわいい。欲しい。絶対にゲットする)


「こ、こいつ、目がマジにゃ……。な、なにかヤバい気配がするにゃ……っ!」


私のガチすぎる視線に生命の危機を察したのか、怪盗猫目はジリジリと後ずさりをして窓から逃げ出そうとする。


「――逃がさない」


私は冷徹に言い放った。

この世の生き物の大概は、寒さに弱い。猫だって例外ではないはず。ましてや、元がコタツを愛する猫なら尚更だ。


「おとなしく――コタツで丸くなりなさい!」


私が両手を広げた瞬間、私の部屋の中の温度が一気に氷点下へと叩き落とされた。壁や床がパキパキと白い霜で覆われていく。


「ひゃ、ひゃおぉぉぉぉぉんっ!? さむっ! さむいのにゃーーーっ!!」


あまりの急激な極寒に、猫又は窓枠に手をかけたままプルプルと激しく震え出した。

自慢の髭はヘナヘナと下がり、全身の柔らかそうな毛並みが見事なまでに逆立っている。寒さのあまり完全にキャパシティオーバーを起こして、その場に丸くなって固まってしまった。


「……ふっ」


私はツンとすました顔に戻り、ガタガタ震える最高のもふもふ(猫又)にゆっくりと近づいた。


猫耳ゲットだぜ!

私の心の中の元気印が、深夜の部屋で狂喜乱舞の勝利のダンスを踊っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ