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異世界妖怪奇譚〜雪女の場合〜  作者: るうと280
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第11話:憧れのステーキハウスのはずが。


肉。高いステーキ。レイラさんのおごり(隊の経費)。

私の頭の中はそれだけで満たされていたはずだった。


なのに、なぜだろう。


「……ステーキハウスは、どこに行ったんだろう」


私は今、お肉の匂いのする大衆店ではなく、きらびやかなシャンデリアが輝く巨大な広間の、やたらと長いテーブルの特等席に座らされている。


本日の座席表なんでこうなった

【上座(一段高いテーブル)】

王様 & 王妃様

王太子(さっきタコ殴りにされたのにもう復活してる。ゾンビかな?)

金髪ドリルのご令嬢(王太子の婚約者、ってレイラさんが言ってた)

第二王子(レイラさんのこんにゃく者……じゃなくて婚約者。確かにまともそう)

レイラさん(ドレス姿。今日だけは騎士じゃなくて未来の王族モード)



【下座の前席】

ツララえ?なんでここ?

レオパルド団長ゴリラ



【さらに下の席】

白狼騎士団(さっき初めて団の正式名称を知った)の女の子たち&男ども


何これ。私、前世のテレビで見たことあるよ。

「晩餐会」ってやつだよね。


名目上は、今回の遠征を無事に終えた『白狼騎士団』の慰労会ということになっているらしい。部外者の私がなぜ団長の隣という超 VIP 席に鎮座させられているのかは、考えたら負けな気がする。


ちなみに、秋田犬サイズの雪華せっかも、私の足元で行儀良くお座りしている。周囲の視線に怯えることもなく、実につまらなそうにフンスと鼻息を漏らしている。本当に空気が読める頭のいいもふもふだ。えらいえらい。


ガタゴトと、上座の方で椅子が鳴る音がした。

見ると、顔の腫れが引いた王太子(仮)が、上座から私を見下ろして、不敵な笑みを浮かべながらパチンとウィンクをしてきた。


(……気持ち悪い)


私の細胞が最速で拒絶反応を起こした。

私はツンとすましたポーカーフェイスのまま、王太子の顔面に視線を固定し、魔力を編む。


ピキッ。


「――っ、ぶふぉっ!?」


王太子がウィンクしたまさにその瞬間、彼の両目の表面だけが綺麗にカチンコチンに凍りついた。

視界を奪われた王太子が、両手で目をガシガシと引っ掻きながら大慌てで悶絶し始めている。ふん、しばらくはそのままアイスノン代わりに冷やしているといい。女の敵への慈悲はない。


金髪ドリル令嬢が扇子を広げて顔を隠しているけど、絶対笑ってる。肩が震えてるもん。


その後、王様の短い(というか目をガシガシやっている長男を呆れた目で見ながら、そして笑いを堪えての)挨拶があり、お兄様の代わりに第二王子がスマートに乾杯の音頭を取って、ようやく食事が始まった。


さすがは王宮、運ばれてくる料理はどれも一級品だ。

アイラさんの家庭的なご飯も最高だったけれど、この綺麗に飾り付けられたお肉も、じゅわっと肉汁が溢れて信じられないくらい美味しい。熱耐性のおかげで、フーフーしなくてもパクパク食べられる。


コテツちゃんやメイちゃんたちも、下の席で楽しそうに美味しそうに料理を口に運んでいる。


うん、ご飯はとっても美味しい。美味しい、んだけど……。


(……あー、お茶会しながらお買い物したかったなぁ。ミナちゃんたちと恋バナとかしてみたかったなぁ。ていうか、周りの貴族たちの視線が痛いなぁ……)


私はやっぱり、マイナス40℃のクールなお嬢様のつもりの顔を貼り付けたまま、心の中で限界ツッコミを連発していた。


美味しいお肉をモグモグ噛み締めながら、私は切実に思った。


「……かえりたい」

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