第10話:皆さん、落ち着きましょう。(お前がな)
衝撃!「ゴリラ」団長の本名が判明!なんと、レオパルド、名は体を表さないとは、まさにこの事、さらにまさかの「レイラ&アイラの兄」という衝撃の血縁関係(遺伝子の気まぐれ)が発覚する!
そして王太子(仮)がタコ殴りされながらそっちの属性に目覚めていく(M男化)おぞましいホラー展開
極めつけは、レイラさんとアイラさんの華麗なる婚約事情。とりあえず、ステーキが食べたい。情報がバグって氷麗の脳は考える事をやめました。
お腹がすいたので謁見の間を出ようとしたら、背後から王様の焦ったような声が響いた。
「ま、待て! お前たち、このままにしていくな!」
ん? ああ。
雪だるまたちにタコ殴りにされ、雪に埋まったままの王太子(仮)を完全に放置して帰ろうとしていた。
というか、関わりたくなくなったのだ。
だって、タコ殴りの最中に、雪山の中から、
『もっと……!』とか、
『いいぞ……!』とか、
『もっと強く……ッ!!』とか、
なんか変な声が聞こえてきたから。……うん、この話は言わなくて良いよね。乙女の耳が穢れる。
「氷麗ちゃん、さすがに放置は良くないよ」
「うむ、放置ぷれいはマニアックすぎるからな」
レイラさんとゴリラ団長が、なぜかそんな専門用語を交えて私を諭してくる。
仕方がないので、私はパチンと指を鳴らして雪だるまたちを引っ込め、大雪崩の雪をすっと退けた。
現れた王太子(仮)は、顔が元の2倍くらいに腫れ上がり、今度こそガチで白目を剥いて気を失っていた。彼はそのまま、近衛兵の人たちに両足を持たれてズルズルと奥へ引きずり込まれていった。……一応王太子なのに、そんな扱いでいいのだろうか。
呆然とその光景を見送っていた王様が、ふぅと大きなため息をついて、団長の方を向いた。
「それにしても、えらいものを拾ってきたな、レオパルド」
レオパルド? 誰それ。
「はい、思わぬ拾い物です。これもレイラのおかげですな」
「うむ、良い妹を持ったな」
ポン、と王様に親しげに肩を叩かれているのは――他でもない、我が騎士団のゴリラ団長だった。
(……げ。レオパルドなんて、無駄にかっこいい名前だったの!?)
しかも、会話の内容を処理していくうちに、私の脳内に激震が走った。
良い妹? レイラのおかげ?
ってことは、このゴリラ、何気にレイラさんのお兄さんなの!?
ということは当然、あの聖母のようなアイラさんとも兄妹ってこと!?
何それ。遺伝子の気まぐれが過ぎる。
でも、そういえば「地獄特訓」とか、脳筋な力技を発揮するところは似た部分があったかもしれない。団長はただのゴリラじゃなくて、由緒正しき不思議人間(超良血統)だったのか。
私のあからさまな不振の目を察したのか、レイラさんが苦笑しながら肩をすくめた。
「ツララちゃんが何を考えてるか大体わかるけど……私とアイラは母親似で、団長はお父様に似ただけよ」
おおお……神様に感謝です。
もし逆で、レイラさんとアイラさんが父親(ゴリラ遺伝子)似だったら、目も当てられない事態になっていたかもしれない。
そんな風に胸を撫で下ろしていると、レイラさんが私の耳元に顔を寄せて、とんでもない爆弾をサラリと追加してきた。
「あ、ちなみにね? 私、あそこに埋まってたバカの弟――第二王子の婚約者だから」
「ほえ?」
思わず、普段のクールさを忘れて間抜けな声が出てしまった。
「言っておくけど、第二王子はちゃんとお利口でまともな人よ? あと、ついでに言うと、調理担当のアイラは公爵家に嫁ぐことになってるわよ」
「げ?」
眩暈がした。
経費で高いステーキを奢ってもらう気満々だったけど、私がこの数日間お風呂に一緒に入ったり、美味しいご飯を作ってもらっていたお姉様方は、国を揺るがすレベルの超お嬢様たち(ただし一人はゴリラ枠)だったらしい。
「……とりあえず、お肉食べに行きましょう。話はそれからです」
私はこれ以上の情報処理を脳が拒絶したため、やっぱりツンとすました表情のまま、レイラさんの手を引いて今度こそ謁見の間を後にした。王都のステーキハウスが、私を待っている。




