第9話:王都到着
せっかく王都に到着したのに、お買い物やティータイムを邪魔された氷麗ちゃんの不機嫌さが爆発しています。
そして、ファンタジーの王道にして最もスカッとするイベント「傲慢な王族のやらかし&即お仕置き」!
地雷を全踏みしてきた王太子(仮)が、ガチガチの氷柱にされる結末は最高にスッキリ。と思いきや、まさかのf¥復活に氷麗ちゃんの雪魔法(?)が炸裂します。
ついにアルビオン連合王国の首都、王都『コロン』に到着した。
歴史を感じる壮大な石造りの街並み。本来なら、ミナちゃんやコテツちゃんたち女の子メンバーと一緒に美味しいスコーンでも食べながら、紅茶でお茶会をしてお買い物巡りをするはずだった。
団長から、今までの魔物討伐や護衛の報酬として、たくさんのお小遣いの袋もちゃんともらっていたのだ。
それなのに。
「……なんで、私がここにいるんだろう」
私は今、なぜか王城の立派な廊下を歩かされている。
団長とレイラさんは王様へ報告に行くらしいのだが、なぜか部外者の私まで連行されているのだ。私は王様に用なんてない。早く美味しいものが食べたい。
「ごめんねツララちゃん、王様がどうしても直接会ってみたいって希望されてるの。少しでいいから我慢してね?」
「……お腹すいた」
「ふふ、終わったらすぐご飯にしよ? ステーキ奢ってあげるから。……(隊の経費でね)」
レイラさんが耳元で悪戯っぽく囁く。よし、ミナちゃんに怒られない程度に高いお肉を食べさせてもらおう。
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謁見の間にて
重厚な扉が開かれ、私たちは広大な謁見の間へと足を踏み入れた。
正面の玉座には、威厳のありそうな初老の王様が座っている。……そこまではいい。
「――おい。なぜその者は跪かない?」
部屋に響き渡ったのは、低く不快な男の声だった。
声の主は、王様の隣の豪華な椅子で偉そうに踏ん反り返っている、やたらときらびやかな服を着た若い男。
ん? 私のこと?
逆になぜ跪かねばならないのだろう。私はあなたの臣下でもなければ、この国の国民でもないのだが。というか誰だお前、一体何様だ。
「……(ツララちゃん、静かにね。彼はこの国の王太子よ)」
レイラさんが冷や汗を流しながら、こっそり小声で教えてくれた。あんな尊大で見るからに器の小さそうな男が次の王様候補だなんて、この国の未来は大丈夫なのだろうか。
「おい、聞こえんのか! この無礼者が、跪かんか――ッ!!」
私の冷ややかなジト目に腹を立てたのか、王太子(仮)が玉座の階段をドカドカと下りてきて、私の頭に向かって乱暴に手を伸ばしてきた。
どうやら、無理やりにでも私の頭を押さえつけて床に擦り付けさせるつもりらしい。
(……男が、上から、無理やり、私を――)
脳裏にあの最悪な夜の記憶がフラッシュバックする。
私の意志を無視して、のしかかってきた男の影。私の防衛本能(絶対零度)が、脳からの指令を待たずに最速で弾けた。
ピキィィィィィンッ!!!!
「なっ、がふ――!?」
一瞬だった。
王太子(仮)が私の髪飾りに触れるよりも早く、彼の足元から突き上げた巨大な氷の結晶が、その全身を瞬時に包み込んだ。
伸ばした手の形のまま、驚愕の表情を浮かべて完全に静止する男。
「あ〜あ……」という顔をするレイラさん。
「やっちまった……」という表情を浮かべるゴリラ団長。
事前に「私の地雷を踏むな」って注意しとかない方が悪い。それとも、注意しても効かないタイプのバカなのだろうか。
私は、ツンとすました表情のまま、冷徹な目でレイラさんに合図を送る。
(今度の氷には癒し成分入っていないので。誰か急いで溶かしてあげてね。失敗したらパリンって割れるから)
――と、その時だった。
「ハハハ! なかなかやるね! 君のアツい思いは確かに伝わったぞ。どうだい、私の『第二夫人』になるというのは?」
パキパキと氷を自力で叩き割って、王太子(仮)が歪んだ笑顔で復活した。
……しまった、加減しすぎただろうか。なんか知らないけど無駄に元気だ。
っていうかさ。私、中身はともかく、今の見た目は12歳くらいの可憐な少女なんだけど。
私の完全なゴミを見るような表情を察したのか、王太子(仮)はさらに胸を張った。
「気にするな! 私は幼女から壮年まで、幅広く愛せるクチだからな!」
(……うわぁ。めっちゃ女の敵だった)
これは手加減無用、という名の挑戦状だね。
分かった。受けて立つ。
「――『大雪崩』」
私が両手をすっとかざした瞬間、謁見の間の天井裏から、凄まじい轟音とともに大量の雪が津波のように押し寄せた。
ゴガガガガガガガッ!!!
あまりの激流に、王様や近衛兵たちはちゃっかり部屋の端っこへと超スピードで避難している。避難の手際が良すぎる。何気にあの王様、レベルいくつだよ。
そして、逃げ遅れた王太子(仮)は、雪崩の濁流に容赦なく巻き込まれた。
ドサッと雪が落ち着いた時には、部屋の中央に巨大な雪の山。そこから、王太子(仮)の首から上だけが、地面に埋まった大根のようにスポッと突き出ていた。
「な、なんだこれは!? 出せ! ここから出――」
「……からの、雪だるまタコ殴り」
私が小さく呟くと、周囲の雪がボコボコと盛り上がり、頭に氷のバケツを乗せたミニ雪だるまたちがおよそ20体、ポップコーンのように湧き出した。
私は無言のまま、王太子(仮)を見つめ、自分の首を指でスーッと真横に切るジェスチャー(やっちゃえの合図)をしてみせる。
「「「「チチチチチッ!!!」」」」
雪だるまたちの手には、どこからどう見ても頑丈そうな木の一角獣の棒。
身動きの取れない王太子の頭部を目がけて、ミニ眷属たちによる容赦のない、一切の手加減のないタコ殴り祭りが始まった。
ポカポカポカポカポカポカポカポカポカポカッ!!!
「ぎゃあああ! 痛い! 痛い! やめろ! 誰か助け――ぶふぉっ!?」
王族にそんなことして大丈夫なのかって?
大丈夫。喧嘩を売ってきたのは向こうだ。万が一の時は、雪華に乗ってこの国から全力で逃走します。
「レイラさん、本当にお腹すきました。ステーキ、3枚食べます」
私はツンとすました顔のまま、お母さんの服の袖を引く子供のようにレイラさんの鎧の裾をきゅっと引っ張り、背後で繰り広げられる「狂乱のタコ殴りサウンド」をBGMに、謁見の間を堂々と歩き出した。




