episode52
「ダブルデート...ですか?」
明楽の提案に薫子は少し考え込んだ。
「雅臣先輩にはまだ話してないんだけど、今パッと思いついたんだよね。薫子、私が一緒なら平気でしょ?」
「でも、それはそれで今度、女子から反感を買ってしまいそうな気もしますけど...」
「私が薫子の事傷つけさせるのを許すとでも思う?」
「私は薫子のナイトだよ」と明楽が言うと、薫子は「そういう所ですよ!」と心の中で呟いた。
「それに、薫子は気づきてないかもだけど、"現代のかぐや姫"って影で呼ばれてるんだよ?」
「...なんですか、それ。初めて知ったんですけど。」
「私も最近クラスの子に教えてもらったんだ。薫子、男子人気が高いみたいだよ?」
「それはないでしょう...」
薫子は明楽にそう言うと、「私、あなたみたいに愛想良くないし...」とポツリと呟いた。明楽はそんな薫子に「愛想の善し悪しの問題ではないんじゃないかなぁ」と思った。何しろ、男女問わず、"深窓のお嬢様"とも呼ばれていて、明楽といる時は、"王子と姫"と言う見られ方をされているのである。薫子は明楽よりもいろんな呼び名を持っている。それだけ薫子の容姿の良さを物語っているのではないかと明楽は思う。
「薫子も自信持って、ね?」
「...明楽から見て、勝算はあると思いますか?」
既に勇真の気持ちを知っている明楽は「両片想いなんだよなぁ。」と思いながら「もちろん!」と応えた。
「明楽がそう言うなら...私、頑張ってみようと思います。」
「薫子なら大丈夫だよ。雅臣先輩には私の方から話しておこうと思うんだけどいいかな?」
「恥ずかしいですが...明楽の事、信じてみようと思います。」
「うん。ありがとう。」そうして話しを終えると、薫子が「もう帰らないと」と言うので、明楽は薫子を家まで送って行った。そして再び家に帰ると、夕飯やお風呂を済ませ、自室のベッドの上でスマホと向き合い合っていた。そして意を決すると、通話ボタンを押した。
「もしもし、明楽?こんな時間にどうかした?」
「遅くにごめんなさい。今、大丈夫ですか?」
「オレは大丈夫だよ。バイトで何かあった?」
「いえ、バイトのことではなくて...」
通話の相手はもちろん雅臣であった。ワンコールで出たのにはビックリした明楽だったが、"鉄は熱いうちに打て"の精神で勇真と薫子の話しをした。すると雅臣は「勇真って明楽の事好きなんじゃなかったっけ?」と疑問を口にした。
「前まではそうだったらしいんですけど、雅臣先輩と正式に付き合うってなったから...身を引いた?ラシクって。その時に薫子と良い感じになって、お互い意識し始めたみたいです。私、二人のこと応援したくって。文化祭でダブルデートしたらいいんじゃないかと思ったんですけど...。雅臣先輩、どうですか?」
「明楽がそう言うならオレも手伝うよ。じゃあ文化祭のシフトが決まったら予定を組まなきゃね。」
「ありがとうございます!」
「明楽からのお願いを聞かない訳にはいかないからね。任せてよ。」
そうして明楽は雅臣に礼を言い通話を終えると、薫子に「雅臣先輩、OKだって。」とLINEした。すると少しして「ありがとうございます。」と短い返事が返ってきた。こういう時の薫子は大体照れている事が多いので、きっと今もそうなのだろうと明楽は思ったのであった。




