episode49
今日は珍しく雅臣が放課後予定があるとかで、明楽一人での出勤となるはずだった。玄関まで行くと、下駄箱の前で座り込んでいる勇真に会った。
「あれ?勇真。帰ったんじゃなかったの?」
「あぁ...。雅臣に頼まれたんだよ。明楽とバイト一緒に行ってやってくれって。」
「...てことは、もしかして?」
「おう!これからオレもお前らと一緒にバイトすることになったぜ!よろしくな!」
「キッチンスタッフ人手足りてなかったから頼もしいよ。」
そう言いながら靴を履き替え、二人で校門を出ようとした時だった。...後ろから「花ヶ崎ぃー!!」と声を上げながら走ってくる男子生徒がいた。明楽が振り返ろうとした時、男子生徒は拳を振り上げていたので、咄嗟に勇真が明楽を抱き寄せ、その拳を掴んだ。
「な、何すんだ!離せよ...!!」
「それは出来ねぇ頼みだな。...なんで明楽を殴ろうとした?」
勇真が低い声でそう問うと、男子生徒は「だって...だって...!」と声を上げしゃがみ込んだ。
「そいつがオレの彼女をたぶらかしたお陰でオレのこと振ったんだよ!"明楽君が好きになったから"って!!」
男子生徒はそう言うと、ボロボロと泣きながら「あやぁ...」と彼女の名前を呼んだ。勇真は掴んだ手を離すとその男子生徒のまえに座り込み、胸ぐらを掴んで顔を近づけた。そして勇真はその男子生徒に声をかけた。
「振られたからって明楽に当たるのは間違ってんだろ?お前にそいつを引き止められる程の魅力がなかっただけだ。いいな?お前のそれはただの"逆恨み"ってんだよ。明楽はお前の女に手を出してない。知ってるよな?明楽は雅臣と付き合ってるんだ。見当違いの八つ当たりをしてんじゃねぇよ。」
勇真はそう言うと胸ぐらを掴んでいた手を離す。そして明楽に「もう行こうぜ」と言うと歩みを進めた。だが、明楽はその男子生徒に近づいて行ったので、勇真も「おい?!」と声を上げた。
「私のせいで彼女さんと別れてしまったのは申し訳ないと思うけど、彼女さんのそれは一時の間の感情でしかないよ。だからもう一度彼女さんとよく話し合ってみるといい。仲直りしたら私達の働く喫茶店に二人で遊びに来てくれると嬉しい。」
明楽はそう言うと笑みを浮かべて手を差し出した。男子生徒は「...悪かった」と言うと明楽の手を取って立ち上がった。そんな一連の流れを見ていた生徒達は、「やっぱり明楽君は王子様だった...」という言葉と共に「1年の小鳥遊...まるでナイトだな」「王子をナイトが守った」という声を上げた。そんな言葉を他所に、明楽と勇真は笑い合いバイトへと向かうのであった。




