episode34
メイクと言っても、そんなに特別難しいものではなかったので、明楽でもすぐ覚えることが出来た。そして鏡を見ると、凝ったことはしていないのに女性らしい顔をした明楽が映っていた。
「わ、私?コレ私?」
「元が良いんですからちょっとのメイクでも十分変わりますよ。凄く可愛らしくなったじゃないですか。」
「...ありがとう薫子...」
「さ!それじゃあショッピングに行きますよ!」
薫子に手を引かれ玄関へと向かうと、洗濯物を持った母に遭遇した。母は明楽の姿を見ると、洗濯カゴを落として固まった。
「お、お母さん?」
「あ、明楽...!ようやくその服着てくれたのね!メイクまでして...!とても可愛いわよ!」
「ですよね。これからスカートも買いに行ってくるんです。」
「スカート!制服以外では履こうとしないからお母さんも買わなかったのに...。どういう風の吹き回し?!」
母のテンションが爆上がりしてしまって平静を装えていない。薫子はそこに追い打ちをかけるかのように、「明日デートらしいんです。」と応えてしまった。
「で、デート?!相手の男の子は?!ハッ!...ま、まさか雅臣...君?」
「あら。おばさん小鳥遊先輩をご存知で?」
「バイトの日は家まで送ってきてくれるのよ...。まさか...」
「えぇ、おばさん。そのまさかです。明楽と小鳥遊先輩はお付き合いを始めました。」
「キャー!」
「な、なんだ?!何があった?!母さん?!」
母の悲鳴にリビングでテレビを見ていた父まで現れてしまった。明楽はこれ以上面倒にならないように、薫子の手を引き「行ってきます!」と言い家から飛び出した。
「おじさんにも見せて差し上げれば良かったのに。」
「お父さんにまで見せたら収集つかないよ...」
「ですが、明日はイヤでも見られると思いますよ?」
「まぁ...そうなんだけど...」
「今日の明楽の家の夕飯はきっとご馳走ですね(笑)」
「やめて...。ほら、行くよ。」
「ハイハイ。」
明楽は薫子の手を引いたまま、明日行く方とは別方向にあるデパートへと向かう。そこもなかなか人気のスポットなので人が多く集まる。明楽は今の自分の格好にまだあまり自信が持てずにいたが、デパートに着くなり沢山の視線を集めた。耳を澄ませてみると「モデルさんかな?」「メッチャ美人」と言う声が聞こえてきた。通りかかるショップからも、「お客様!よろしければウチのショップ見ていってください!」などと声をかけられる。
「ね?心配いらないでしょう?」
「う、うん。」
「あ、明楽!あそこのショップのあのロングスカート素敵ですよ!明楽に似合いそうです!」
薫子はそう言うと、今度は薫子が明楽の手を引いてそのショップへと入る。そして、そのロングスカートを手に取ると、明楽にあてがい「うん!」と大きく頷いた。
「明楽!スカートはこれにしましょう!」
「あら!お客様、とてもお似合いです!そちらのスカートでしたらこちらのトップスを合わせるととても良いですよ!」
「明楽、取り敢えずこれ一式試着してください。」
「試着室はこちらです!」
明楽は薫子と店員に促されるまま試着室へと入っていった。




