episode29
明楽と雅臣の2人は試作品である賄いのパスタに舌鼓を打ちながら食べ終え、家路へと着く。
「それにしても、オレが入ったばっかりの頃も凄かったらしいけど、明楽も凄い人気になったね。元々女性客が多いお店だったけど、こんなに忙しくなるなんてね。」
「私なんてまだまだです。でもお店としては嬉しい悲鳴ってやつになるんですかね?」
「だね。まぁ、オレ達も頑張って働こう。」
「ですね。...雅臣先輩。」
「ん?どうかした?」
明楽が歩みを止め雅臣を呼び止めると、2人は向き合うように立った。街灯が2人を照らしている。
「私をバイトに誘ってくれてありがとうございます。...雅臣先輩のお陰で毎日が楽しくて...」
「明楽...?」
「だから...その、えっと...」
明楽が言い淀むと、雅臣は明楽へと近づき明楽の両手を取った。そして耳元で「明楽」と囁くと、額と額を合わせ、見つめ合う形をとった。
「好きだよ明楽。後輩としてじゃなくて、1人の女の子として。一目惚れだったんだ。入学式の日、凛とした様子で代表あいさつをする姿を見て。」
「雅臣...先輩...」
「もし、良かったら...オレの恋人になってはくれませんか...?」
雅臣がそう言うと、明楽は信じられないと目をまん丸く見開いて顔を真っ赤に染めた。
「私...私も!雅臣先輩の事が好きです!あの日、階段から落ちたのを助けてくれた日から、ずっと雅臣先輩の事を...思って...」
明楽は感極まって涙した。その涙を雅臣は指で拭うと、静かに口付けをした。ほんの数秒の出来事であったが、明楽の思考を止めるには十分であった。
「じゃあ...これからは"恋人"として接してもいいんだよね...?」
「...ハイ...ハイ!」
「良かった...。これからもよろしくね明楽。あ、そうだ。」
「?」
「来週の日曜なんだけど、実は誕生日なんだよね。...良かったらデートしてくれませんか?」
明楽は色々と急展開が続いて頭がグルグルとパンク寸前になったが、そんな頭で何も考えられなく無意識に「はい」と応えたのであった。




