episode28
佐々木の言った通り、今日はまるで馬車馬の如くこき使われたような忙しさであった。息付く暇もなく、次から次へと接客していく。女性客の相手をする時は、数え切れない程連絡先を聞かれる明楽と雅臣であった。一応仕事中であるのでそれに応える事は出来ないと断るのだが、「じゃあ仕事終わるの待ってる!」と言う熱心な客もいる。そんな時は爽やかな笑顔を浮かべ、「お店でお会いするのが特別なんですよ。」と甘い言葉をかける。そうすると大抵の客は顔を赤らめながら諦めてくれるのだ。そうこうしているうちにピークが過ぎ、客足も落ち着いてきてバイト終了まで1時間を切っていた。
「いやぁ、2人共大変だったね!でも2人のお陰で平日なのに休日並の売り上げになりそうだよ!」
「そう言ってもらえると頑張った甲斐があります。」
「そうだ、店長。相談があるんですけど...」
「ん?なんだい?」
雅臣は佐々木に勇真のことを話した。すると佐々木は目を輝かせ、「そういう事なら大歓迎!」と声高らかに言った。
「となると、近日中に面接させてもらいたいな。」
「オレの方から勇真に連絡しておきます。」
「じゃあ、雅臣を通してのやり取りで構わないかな?」
「大丈夫です。」
そして勇真のバイト話が一歩前へ進んだ。
「いやぁ、忙しくなってきたからキッチンスタッフの募集かけてたんだけど、なかなか決まらなかったんだよねぇ。料理が得意なら即戦力だよ!」
佐々木は疲れを感じさせない程テンションが高くなっていて、その様子に明楽と雅臣は「この人タフだなぁ」と感心するのであった。
「あ!もし良かったら今日賄い食べて行って!新作メニューの試作品なんだ!」
「久々ですね、新作。何ですか?」
「フッフッフ...暑くなってきた今にピッタリのレモンの冷製パスタだよ!」
それを聞いた明楽は目を輝かせた。それに気づいた雅臣は「明楽?」と声をかける。
「あ、スミマセン...。レモンが好きなもので...」
明楽の言葉を聞いた佐々木は「明楽ちゃんのお墨付きがつけば即メニューに追加するよ!」と言い、「今日はもう上がっていいから賄い食べて行ってね!」と明楽と雅臣に言って去って行った。
「それじゃあ、お言葉に甘えて賄い頂いていこうか。」
「ハイ!」
そうして明はルンルン気分で雅臣と賄いを頂くことにした。




