マヤカシ町での出来事
202X年、T県U市の小さな町、マヤカシ町。物語はここから始まる。
アニメの聖地になった駅や活気があり人々が溢れる商店街、小さな路地を抜けると居酒屋や小料理屋などが集まった飲み屋街がある。少し北に向かうと、静かに輝く湖や空気の澄んだ森、苔むした岩が転がる山。その山には家内安全を司る神が祀られている。時々イベントで賑わうこともありながら、マヤカシ町は住民が平和な暮らしを送るいたって普通の町だった。
最近のマヤカシ町では失踪事件や変死など、不可解な事件が多発している。新興宗教、眠ったまま静かに亡くなる者、傷や痣だらけの学生達、ある日突然 腕や脚が動かなくなった者、飢えが治まらない者、恋人や伴侶を奪われた者、嫉妬による殺人…… 更には天使のような姿をした人型の生物が辺りをうろついていた。時々 人を襲い攫っていく。
爽やかな蒼をした美しいはずの空には、土地をえぐり取ったような地形に宮殿のような建物がそびえ立っている不気味な浮遊物が禍々しく浮かんでいた。言うなればファンタジーに出てくる浮遊城といったところである。誰もここに近づくことは許されない、というような何やら不快なオーラを放つ透明なベールを纏っている。
マヤカシ町の住民達は不安を感じていたが、今日を無事に終えられるように祈るしかないのだ。