表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明末の麒麟児  作者: sawami
第4章
42/47

変化する情勢のなかで

オリジナルのキャラクターが登場します。

 1645年(隆武元年)8月 福建省平海衛

 福州では朱聿鍵が皇帝に即位し、浙江の紹興では魯王朱以海が監国を称した。広西では靖江王朱亨嘉も監国を自称し、明の旗を掲げる者が各地で乱立した。乱世はまた一つ、混沌の層を重ねた。

 だが平海衛の路地では、子どもたちが走り回っていた。

 朱慈煥——いや、「朱文」は今日も路地の端に腰を下ろし、四人の子どもたちを眺めていた。

 一番足が速いのは陳海生だった。漁師に生まれた男の子で、年は十歳ほど。朝から浜で網を引く父親を手伝っているせいか、足腰が妙にしっかりしている。鬼ごっこになると誰も捕まえられないくせに、逃げるときだけ本気を出すという要領の良さがあった。

「阿福、そっちじゃないぞ!」

 呉阿福が路地の袋小路に迷い込んで、海生に捕まった。呉家の商家の子で、年は九つ。丸々とした顔に、いつも笑みが浮かんでいる。走るのは遅いが、なぜかいつも一番楽しそうだった。

 林虎子が壁を蹴って飛び越えた。武官の林家の傍系の子で、十一か十二か。四人の中では最年長で、体つきも一番がっしりしている。鬼になると妙な気迫で追いかけてくるので、朱慈煥も本気で逃げたことがあった。

 その後ろをちょこちょこついて回るのが林石頭だ。虎子の親戚で、年は七つか八つ。頭が大きく、走るたびに体がふらふらする。転んでも泣かない。ただ黙って立ち上がって、また走り出す。

 朱慈煥は最初、彼らと打ち解けるのに時間がかかると思っていた。書生風の見慣れない顔が路地に現れて、急に遊ばないかと声をかけてきた——子どもたちが警戒するのは当然だった。

 だが鬼ごっこを教えてから三日で、その距離は消えた。

 子どもというのは単純で、正直だと思った。面白ければ受け入れる。それだけだった。

 ——そういえば、こんな風に楽しく走ったことはなかった。

 朱慈煥は路地の喧騒を眺めながら、静かに思った。皇子という立場が、そういうことを全て遠ざけていた。転生してからも、常に何かを考えながら動いてきた。ただここにいるだけでいい、という時間が、これほど穏やかなものだとは思っていなかった。

 虎子が石頭を抱えて走っているのが見えた。石頭の足が地面から離れている。石頭は特に抵抗もせず、ぶらぶらと揺れていた。

 朱慈煥は少し笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ