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明末の麒麟児  作者: sawami
第2章
20/217

不気味な小坊主

※結構長くしてみました。

※内容を修正しました。2026/05/06


 数日後、揚州の大通りで兵を率いて街の見回りが行われた。そして街の区画で担当部隊の将軍が部下の活動報告を聞いていた。 

 「この区画の街の治安は問題なさそうだな」

 「はい、兵士による乱暴狼藉も確認されていません。ただ...」

 兵士が言いよどむと、その将軍はわかっているといった感じで手で制した。

 「わかっている。見回りに行った兵士の何人かが帰ってこないのだろう?」

 「...都市内外の出入りを兵士達に禁じられて週ごとに増えています」

 「父、いや史兵部尚書も対応しておられるだろうがいかんせん、物資が乏しい。南京にいる奸臣どもは我々を見殺しにしたいと見えるな」

 「史将軍、お静かに。誰に何を聞かれているかわかりません」

 「わかっている。戯れ言だ」

 この将軍の名は史徳威。字は龍江といい史可法の養子であり側近として支えていた。

 ちなみに奸臣とは阮大鋮や馬士英ら反東林派を指している。

 「そういえばたいしたことが無いと思いますが、最近不気味な小坊主をよく見かけると耳にしております。」

 「不気味な小坊主?どう変なのだ?」

 「その小坊主、変な歌を歌いながら大通りを歩いてるんです。ええと……たしか、

『大なる江(かわ)の龍、何処へ往く。』

とかいう、訳の分からねえ歌でして」

 「確かに変な小坊主だな。...うん?」

 史徳威はその話を聞き何か違和感を感じた。そしてそれはすぐに気づいた。

 (もしや、私のことか?!)そう感じたのには理由がある。

 まず、大きな川は中国語では「江」で表せることができる。そして、龍を合わせれば自分の字である龍江になるからだ。

 (いや、ただの深読みかもしれん)

 史徳威はもう少し詳しく聞いてみることにした。

 「その小坊主は、他に何か言ってなかったか?」

 「他にですかい?『溧陽の末裔、法ぞ之く……』とか言ってましたが、史将軍?」

 史徳威はこれらのことを聞いて自分を探していると確信した。

 溧陽侯は後漢初の溧陽侯史崇のことであり、自身の父史可法は49世の孫に当たる。そして法は「憲」をゆくは「之く」を意味するならば史可法の字である「憲之」を意味することと、捉えることができた。

 (ただの偶然ではない。この小坊主は、明らかに私と父上を名指しで探している!)

史徳威の背筋に冷たい汗が伝わった。

誰だ? 南京の馬士英が放った密偵か、それとも清軍の細作(スパイ)か。こんな手の込んだ真似をしてまで、我々に接触しようとする者の正体と目的が全く読めない。

「……その小坊主、次に見かけたら絶対に目を離すな。私自らが出向いて捕らえる」

史徳威は剣の柄を固く握りしめ、密かに探索の網を張る決意を固めた。

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