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明末の麒麟児  作者: sawami
第2章
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休日

 1644年7月南京

 南明は史実通り反東林派の擁立により弘光帝が即位し、その最初の政策は、民間の婚姻を禁止し、続いて自らの皇妃選定という、あまりにも身勝手なものであった。漢民族の期待は脆くも崩れ去り、街中には失望と不安が渦巻いている。

 そんな中、朱慈煥は仕事が休みの日に民信局へと向かっていた。

 民信局とは長江の両岸に発達した民間の郵便局のことで手紙の郵送や送金などを請け負っている。

 朱慈煥はお世話になった郷紳の家族とときどき手紙のやり取りに民信局を利用していた。

 少しすると民信局の建物が見えてきた。それほど大きくはないが、活気に満ちていた。人々は受付の人たちに手紙や小包を手渡していった。朱慈煥は順番を待ちながら、自分の番を待つ。

 「次!」受付の呼び掛けに聞こえ慌てて手紙と郵送料を渡した。

 「おう坊主、おめぇの名前たしか王叔三だったな。坊主宛に手紙が来てたぞ。ほれ」

 「ありがとうございます。」

 受付から手紙を受け取った朱慈煥はお礼をいい、民信局を後にした。

 その帰りの途中で兵士とそれに連れられていてどこか憂鬱そうな顔をしている女性たちの集団を通りかかった。

 朱慈煥は見物していた野次馬の男性にあの集団が何か聞いてみた。

 「すいません、あの人たちはどこへ向かっているんですか?」

 「ん?ああ、少し前に皇妃選定が言いわたされてただろ。だから今南京に住む美女をたくさん呼び寄せられてんだよ。貴人、庶民関係なくな。まったく、嫁探しする前に解決策を探せって話だ。」

 男性は呆れたようにそう言って去っていった。

 朱慈煥は一度周りにいる野次馬の人々を見た。悲しげな顔の裕福そうな老人の男性。怒りをはらんでいそうな目で兵士を睨む青年。「お姉ちゃ~ん」と泣きながら女性の集団の後を追いかける女の子。この混沌とした状況の中、朱慈煥は、自分の進むべき道を、改めて見定めようとしていた。

 (このまま外国にでも行って世界中を旅をするか、それとも踏ん張って明の再興でも謳うか。) 

 朱慈煥は、南京の街を歩きながら、様々な思いを巡らせていた。

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