マンバの正体
マンバの休む小屋に行くと、バティムが難しい顔で、藁でできた寝台の隣で座っていた。
大きすぎる体が、小屋全体をいっそう狭く感じさせる。
「マンバは……?」
「力を使いすぎたようだ」
「マンバって、何者なの……?」
バティムは無言で上掛けをはいで、無造作に合わせた襟元を強引に開く。
「な、何するのよ!!」
いさめようと近づいた瞬間、胸元の痣のようなものが目につく。鳥居のようなマークだった。
「……知らんが……この女は、ヒーラーのようだ」
「ヒーラー?」
そんな、ゲームみたいな……。まぁ、ここにいるのも悪魔なんだし……そんなもんか。
「この女も転生者だと聞いたが……そのせいなのか……」
ブツブツと呟くバティムを押しのける。だって、マンバのまぶたが痙攣したから。
「んっ……」
「マンバ!」
「バ……バアルは……?」
「ありがとう! 無事だよ、マンバ!」
マンバの手に飛びついて、両手で握りしめる。
「ほら! バアル! ごめんなさいは!!」
「うーー」
上目遣いでマンバを見上げて、ごめんなさいのポーズ。あざとい奴め。
「良かった……ごめんね、ウチの子が」
「ううん、ブリトニは全然悪くなかったの。うちの子が祠の前で」
「……あぁ、そういうこと」
バティムが興味津々でのぞいているのに気づいて、手先で追い払う。ちっと舌打ちしそうな顔で、バティムは小屋を出て行った。
「……あなた、何者なの?」
「ウチ、転生前は巫女だったんよね〜」
「み、巫女……」
「実家が神社でさ〜、まぁ、正月とかはバイトしたりしてたけど」
「マンバの……巫女……」
メイクもばっちりのマンバスタイルの巫女を想像して笑ってしまう。
「まぁ、反抗期もあったよね」
「ふふ、そっかそっか」
「こっちきて、気づいたらこういう力とかあって。でも、これ知られると厄介だから基本的に秘密にしてる。ここの人たちは知ってるけど、まぁ怪我したり病気したとき便利だから置いてくれてるよ」
転生した私たちは、やっぱりこの世界では異質で、馴染んだような顔をしても、やっぱりどこかぎこちない。
いつか慣れる日が来るのか、外国で暮らすようなものなのかもしれないけど。
「ーーいいね、そういう力があって」
「どうだろ、怖いよ。バレて戦場に連れていかれるのも嫌だし。そうなったらあの子ともいれないから」
「そうだね、それは怖いね。……でも、ちょっと羨ましい。自分で自分を守れて」
「何言ってんの。アンタらに何かあったら、ウチが守ってやんよ。だって、ウチらもうダチっしょ」
「……だよね。もう、友達だよね」
「ウチ、初めてのママ友かも〜〜」
「あははは、マンバ、こっちで友達いなさそー」
「は、お前に言われたくねーし」
二人で笑い合いながら、こんなに腹の底から笑うのは、いつぶりだろうと考えた。
この世界に来る前から、久しくこんなふうに笑っていなかった。
この世界に来なければ、マンバと私はきっと知り合いにもなれていない、そんな私達が笑いあっている。
「マンバ、ありがとね」
「いいってことよ」
寅さんかよ、と心の底で突っ込みながら、ずっと気になっていたことを口にした。
「で、あの祠って、なんなの?」




