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小雫夜話  作者: はなび
25/26

25雫目・幸せの基準 小雫夜話(前編)

一話完結…できませんでした…。


最終話です。珍しく前後編です。若干、メルヘンホラーかも…?

書き下ろしです。


…昔ながらのガラスを覗くの好きです。あの、微妙な歪み具合が…///



僕の爺ちゃんは、とても不思議な人だ。穏やかで優しくて、少し厳しい。

よく昔話をしてくれて、正月や盆に集まった兄弟や従兄弟たちが、揃って話をせがみに詰めかけたものだ。

その昔話の中で、なぜか僕にだけ話してくれたものがあった。とても不思議で、少し悲しい話だった。

今から70年くらい前、まだ、爺ちゃんが幼い頃の話だ。

爺ちゃんの従姉妹の中に、爺ちゃんの家に病気の療養に来ていた人がいたそうだ。おっとりして優しい人で、やんちゃだった爺ちゃんを、とても可愛がってくれたらしい。

彼女は人が居ない時に、宙を見つめて囁く癖があった。誰かが来ると口を(つぐ)むが、時折、そっと寄って来た爺ちゃんに気付かず、誰もいない場所に話し掛けていたという。



ある日、気になって、爺ちゃんは彼女に聞いた。

「なにと、はなしてるの?」

彼女は、驚いて目をぱちくりさせてから、くすくす笑い、

「何だと思う?」

と逆に問い返した。

「…わかんない」

「お友達と話してるの」

「ここ、おれとねぇちゃんしか、いないよ?」

爺ちゃんが不思議そうにすると、

(ぶん)ちゃんには、まだ視えないかな。ちょっと待ってて」

彼女は言い置いて、押し入れの中から木箱を取り出した。木箱の中に、両手ほどの大きさのガラスの皿が、厚手の敷物に包まれて入っている。

ガラスの皿は透明だったが、ほんのり青味掛かっていた。

彼女はそれを取り出すと、皿の上面を爺ちゃんに向ける。ガラスの向こうが、厚みのせいで薄青く歪んで見えた。

ふと、彼女の肩に、小さな影が現れる。

爺ちゃんが、あ、と声を上げると、彼女はまた、くすくすと笑った。

「これ、文ちゃんにあげる。『小雫』っていうの。大事にしてね」

「ねぇちゃん、いいの?」

「良いよ。あたしは、それが無くても視えるから」

彼女は皿を箱に仕舞うと、爺ちゃんに持たせた。



爺ちゃんは、暇があれば、その皿を覗いて遊んだそうだ。

ガラスを通して視た世界は、不思議に満ちていたという。

そよぐ風の、流線系の形。

音楽を奏でる、豊かな音の色彩(いろ)

雨粒たちの、賑やかなお喋り。

誰かの背中にひっそり生えた、透明な羽根…。

特に、新月の日は、良く視えたそうだ。

でも、ある日を境に、ガラスを覗くのを止めたと言った。



ありがとうございました。


後編に続きます。

あと一息ですが、お付き合い、よろしくお願いしますm(_ _)m

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