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「正義の味方、遅れて参上。」
外見はそんなに珍しくもない綺麗な顔をした人物は、真夜の家を破壊しながらそういった。
真夜はそんな破壊された家を見て唖然というよりは呆れたというような顔をしている。
そんな真夜の隣で結友も突然の闖入者になにをするでもなく、ただただ固まっていた。
というより、全く状況が分からない。突然聞きなれない音が聞こえたと思ったらすぐ近くで真夜の家を破壊しながらあがってきた...ということまでは辛うじて理解しているが、当然結友はこんなことをする人物にあったのは初めてだ。というより大抵の人物はこんなことができる人物に会ったことはないだろう。
真夜も、結友もそして突然乱入してきた本人さえも黙ったままその場で固まっている。
しかし、真夜は黙ってはいるものの驚いているというよりは少し、というか確実に怒っているような様子で口を噤んでいた。結友がどうするべきかしばらく迷っていると、乱入者が口を開いた。
「いやー、ごめんごめん。まさか小夜達がもう出て行ってるとは思わなくてね。」
申し訳なさそうに乱入者がそう謝罪した。家を破壊したことを謝っているとは思えないくらいの軽い台詞だ。
「でも、逃げろって小夜ちゃんに電話したのって多分だけどあなたですよね?」
何とも思っていなさそうな不審者に対して真夜が物怖じせずに強めの口調で問いを投げかける。
家を壊されたからといっておそらく初対面であろう相手に対して強い口調で責められる人物はそうそういないだろう。家を破壊したのが武器を使ったりしたわけでもなく素手で破壊したというのだからなおさらだろう。
「あぁ、そうだよ。」
しかし、その不審者は真夜の質問に対して何とも思っていないかのようにあっさりと答える。
その答えを聞いて、真夜は何かを理解したような表情をして質問を続ける。
「じゃあ、あなたが小夜ちゃんの言ってたパートナーってことですか?」
「あぁ、そうだね。」
真夜の質問に今度もほとんど間を空けないまま質問に答える。
真夜の今聞いた小夜のパートナーについては結友は何も知らない。というか聞いていない。
質問の答えを聞く限り少なくとも小夜のそして優希の敵、二人を追っている、というわけではなさそうだ、とは思うが。それもこの人物が嘘をついていなければの話だ。
「それが嘘じゃないって証明できますか?」
結友が二人の会話に言葉を挟んだ。別に黙っていろと言われたわけではないが、事情を把握し切れていない結友が口をはさむような場面ではなかっただろう。
「とりあえず座ろうか?」
とても他人の家とは思えないような口ぶりで自分が破壊した家の床に腰を下ろす。
しかし、結友も真夜も特になにもいうこともなく少し離れたところに腰を下ろした。
「さっきの質問だけど別に証明はできないかな。小夜に会って直接聞く出もしない限り君たちの納得のいく証明とやらはできないだろうからねぇ。」
露骨どころかはっきりと疑われているというのにやけにのんびりとした口調で言う。
よく分からない態度をとり続ける不審な人物に結友は苛立ちを隠せないでいた。
そんな結友の不安を察したのか、真夜が今度は結友に対して言葉を投げる。
「この人を疑ったところで私たちにこの人は止められないと思うよ?
さっき結友君も見てたけどこの人は素手だけで私の住んでる家を滅茶苦茶に壊しちゃってたからね。
そんな人が敵だったら素人の私と結友君だけじゃどうしようもないしね。」
真夜が結友に対して冷静に、しかし少し苛立ったように話す。
事実、真夜は家を目の前で荒らされているというか壊されているので、高校生にしては些か冷静すぎるほどだ。
「まあ、その証明をするためってわけでもないけど小夜と優希ちゃん...だったかな?
その二人を今の状況からどうにかするために来たんだけどさ。」
二人の前の名も知らない人物はそんなことを事も無げに言った。
「今の状況...?」
現状を把握することすらできていない結友は疑うことすら忘れてその言葉を繰り返した。
「説明の途中だったから結友君はまだ分からないよね。簡単に言うとね、小夜ちゃんと優希ちゃんは現状、この世界にいるべき人間じゃないんだよ。」
真夜も正体もよく分からない人物の前だというのにあっさりと二人のことを話し始めた。
そして真夜の言葉を引き継ぐように、目の前の人物も再び口を開く
「まあ正確には違うけど、間違ってはないよ。だいたいそんな感じ、っていうか自己紹介もまだか。」
今更のように少し間をあけた後に、自己紹介を始める。
「名前は凪霧要。さっき答えたけど小夜とはパートナー...というか仕事仲間みたいなものだね。」
目の前の名乗った人物を信用していいものか結友には分からない、本名かどうかすらも怪しいものだ。
しかし、それでもさきほどの真夜の発言を考えれば、信用するまでは行かなくともとりあえずは言うことを聞いているしかなかった。
「まあ、信用できるかどうかは君たちが決めな。人はみんな自由さ、今逃げている小夜と君の分身にしたってね。」
意味深なことを言っているような気がするが先ほどの行動といい、今までのあっさりとした会話と良い、慣れているのか考えていないのかは分からない...しかし、それでも今適当なことを言ってこの人物にまで敵にまわられたら何をされるか分かったものではないのも事実だ。
「おっと、話が飛ぶところだった。君たちも優希ちゃんだかのことが知りたいのなら話の方向修正くらいは手伝ってくれよ。基本的に私は何も考えていないんだからね。全く考えていないわけではないけど君たちの思っているような万能人間ではないんだよ。」
なんだかよく分からない人...という印象が結友の中に強く刻み込まれる。
少なくとも彼女の言うような万能人間などと思ったことは一瞬たりともないのは事実だ。
しかしそれでも、今のところ敵意がないということは分かった。
その判断も目の前の彼女が嘘をついていなければ...という大きな問題があるわけだが、本当に目の前の人物は何か深く考えているようには思えない。
そんなことより、と目の前の人物、凪霧要が話を区切る。
「さて、とりあえず一番最初に確認しておきたかったことを忘れていたんだけど、君たちはどうしたい?」と、そんなことを聞いてきた。
結友は意味が理解できず、隣に座っている真夜の方に顔を向けるとと、真夜も理解できていないようで首を傾げるだけだった。
「どういう意味ですか?」
真夜は要に言葉の真意を問う。要は「言葉の通りだよ。」と答えて真夜と結友の方を向いて言葉をつづけた。
「小夜は私のパートナーでもあるし、そもそも小夜と敵対する理由もないわけだしね。
現状、とても面倒なことに小夜と優希ちゃんは私と小夜のいる組織みたいなものに追われてるんだよね。
それを、どうにかしようと思うんだけど君たちはどうする?って話さ。」
「どうにかって...私にどうにかできるようなことなんですか?」
簡単に言う要に対して真夜は思った通りの疑問をぶつける。
それに関しては結友も同意見で平行世界やら組織やらの話ですらまともな話でないのに、それを全て信用したうえでそのアニメのような大事に対して自分や真夜のような素人に介入できるような余地があるとはとても思えない。
「いや、まあ意思確認程度のつもりだったんだけどね。
それにしても真夜の方からそんな言葉が出るとは思わなかったな。」
さっきの質問に大した意味はない、とでも言うように要は流すように言う。
「意思確認程度ってことなら、そもそも俺には優希と小夜をそんな大事に首突っ込んでまで助けようって義理はないですよ。」
結友は思っていることを素直に言葉にした。
当然といえば当然か、優希も小夜も知り合って本当にわずかな時間しか共有していない。
優希に関して言えば「平行世界の自分」なんて言われたところで信用できるはずもなく、なんで関わっているかさえ分からないような赤の他人の可能性の方がはるかに高い。
「まあ、そう言うだろうとは思ったんだけど...。
その態度はちょっと優希ちゃんがあまりに可哀想だし少しフォローしてみようかな。」
一瞬の間をおいて要が結友に問いかけた。
「優希ちゃんのことが信用できないならそもそも家にいれるどころか、真夜と関わらせようとしなかったと思うんだよね。少なくとも現状君の友達は多いとは言えないだろう?
幼いころから一緒にいた真夜を大切に想っているならいきなり目の前に現れて「平行世界の自分だ」なんて言い出す不審人物が真夜に関わることに対して多少の嫌悪を抱くと思うんだよ。
それががないのは、無意識とは言っても優希に対して多少は信用してたんじゃないかな?」
結友には要が何を言っているのか一瞬で理解できていた。
優希と会ってからの短い間に心当たりが多過ぎる。
初対面の優希をあっさりと家に入れてしまったこと。
優希と小夜の現実味の無い話を多少の疑念はあったと言え、聞き入れていたこと。
そして、大切だったはずの真夜が大事に巻き込まれているというのに何もしていなかったこと。
これらは、多少の疑いはあったものの最終的には優希とその周囲に安心し切って、任せ切ってしまっていたことから始まっている。
なら、きっと自分は優希という一人の人間を信用していた可能性は十分にある。
だからきっとこんな面倒でかつ、非現実的すぎる出来事に巻き込まれて平然としていられる。
今まで生きてきたように傍観者でいられた。傍観して、楽観していた。
それらの感情や自分の行動が初対面のはずの優希への信頼だとするなら、俺は優希に任せっきりだった押し付けっぱなしだったんだろう。
現実を見たうえで、それでも責任感と正義感の強い結友には優希の現状を見過ごすという選択肢はなかった。
「あぁ。俺って初対面の優希なんか信用してたのか...。」
今まで気付けなかったことに気付いて、結友は思ったことが思わず口に出てしまった。
「今更でも、気付けて良かったんじゃないかな。これで間違えた方を選んでもきっと君は後悔しないよ?」
結友の思わず零した一言に目の前の要が話しかける。
その一言はきっと結友がどんな選択をしても良いという意味で、結友に考えうる限りの全ての選択肢からどれを選んでもいいという意味の言葉だった。
結友にはそのことが分かっていた。きっと知らなければ良かったことなんかじゃなかった。
このことを知らずに優希を見捨てる選択肢を選べば目の前にいる要の言う通り本当のことに気付いた時にきっと後悔する。
後悔というのは後から悔やむこと。先に後悔しておくことなんてできない。
だったら先にどんな結果になっても自分が一番悔やまない。
自分ができることをやりきって、望まない結果になったとしてもきっと他人に敷かれた道を歩くよりきっと信じられる。
しかし、そう決意したところで一番の問題が残っている。
「要さん。優希達の状況を変えるために俺にできることはありますか?」
これが一番の問題だ。要は意思確認程度といった。つまり実際に手伝えることはない可能性もあり得る。
どころか普通に考えれば一般人の結友にできることの方が少ないだろう。
「ということは結友の意志は決まったみたいだね。
まあ、優希の分身って言ってもいいくらいだから断ることは無いだろうとは思ってたけど。」
要は結友の意志が既に分かっていたかのように言った。
言ったうえで言葉をつづけた。「まあ、あとは真夜しだいかな。」
要の言葉を聞いて真夜の方を見ると真夜は納得できない、とでも言うようにいつもは全く見せないような険しい表情で要の方を見ていた。
「真夜姉...?」
いつも穏健な真夜の滅多に見せない表情に思わず結友の口から言葉がこぼれる。
結友の呼びかけを聞いてか、要さん。と真夜が要にたいして呼びかけた。
要の返事は待たない。「結友君はきっと自分にやれることなら危険なことでもやるって言うと思ってました。昔から正義感は強いし、責任感も人並み以上に持ってる。そんな結友君が少しでも関わってしまった優希ちゃんのことを見捨てられるわけがないって思ってました。」
真夜の言う通り昔から結友は何かあるたびに自分を真っ先に切り捨ててきた。
自分が関わってきたことならなんでも、誰でも助けようとしてきた。そんな結友が優希を見捨てられるわけがないことは本人である結友以上に真夜が分かっていた。
「要さんは本当は結友君が断れないことを知ってたんじゃないですか?」そう結論付けて要に問いかけた。
「それはないんじゃないかな?」要はしらばっくれるように、本当に知らないのかもしれないがそう答えた。
そして続ける。「私は少なくとも結友とは初対面だよ。そんな結友のことを私が知ってるはずがない。
それに...真夜の方がそうあってほしいと望んでるんじゃないの?優希のことだけじゃないからね。この問題には平行世界の真夜である小夜も関わってる。結友が関わってなかったとしても真夜自身無視して良いことじゃないよね。少なくとも小夜に協力的だった君が断れるとは思えない。」
要の反論に真夜は口をつぐむ。きっとその通りなのだろう。
「質問時間はこれでいいかな?じゃあ、質問を変えてもう一度聞こう。二人は小夜と優希の二人を助けたい?」
真夜がまたしても口を挟んだ。
「一応これだけは先に言っておきます。結友君が途中からでもやりたくない、無理だって思ったら絶対やめさせてくださいね」
「当然だね。少なくとも命の保証は私がしよう。私の前で仲間は死なせないよ。仲間の内は」要の妙な言い方が引っかかりつつもこの人を敵に回したらどちらにしても生きてなさそうだ。
短い問答が終わったところで二人が結友を見る。
真夜と要の二人の視線に答えるように結友は言った。
「俺にできることで二人が助けられるなら俺は二人を助けたい。」
一気に読んで来られた方は初めまして。
前から読んでいただいた方にはごめんなさい&超絶お久しぶりです紫音優夢です
もうなんというか申し開きのしようもございませんというくらいには空いてしまってます。というかこれもう終わらないんだろうなって思ってた方が9割9分だと思います。
しかもまだまともに話が進んでないというgdgdっぷりです。
大学1年に描き始めてもう3年生です。3年生は講義が一気に減ったのできっと書く機会が増えるんだと思います。そう願いたいです。
後がき書く暇があったら続き書いてってお叱りが来そうなので(このフレーズも何度目だろう。)この辺で。今年こそ一定のペースで書けるようにさぼらないように精進します。
では、まだ読んでいただいてる方がいると信じて。またあとがきでお会いましょう。




