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『悪役公爵令息レオンハルト』  作者: 覇王が好き
第二章・王立学園編

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第96話 七彩神星の裁き――最強公爵令息、再生魔獣を圧倒する

第96話 七彩神星の裁き――最強公爵令息、再生魔獣を圧倒する


王国暦八二一年、秋月二十四日。


王立アストレア学園、第五演習区域。


地下遺跡最深部。


「グオオオオオオッ!」


漆黒の魔獣が、地を震わせる咆哮を上げた。


赤黒い魔力が、巨大な身体から噴き出している。


その正面。


俺――レオンハルト・ヴァルディスは、静かに剣を構えていた。


背後には、シャルロットとルシウス。


さらに、中等部の生徒たちがいる。


「レオン兄様!」


ルシウスが、声を上げた。


「気をつけてください! あいつ、どれだけ攻撃しても再生するんです!」


「ああ。見れば分かる」


俺は、頷いた。


「でも、大丈夫だ」


「……兄様?」


俺は、振り返って笑った。


「二人とも、よく頑張ったな」


シャルロットが、少し驚いたように目を見開いた。


「……レオン」


「後は任せてくれ」


そう告げて、俺は魔獣へ向き直った。


七つの魔法陣が、ゆっくりと回転する。


火。


水。


風。


土。


雷。


光。


闇。


そして、その中心に輝く小さな黒い星。


《七彩神星陣》。


俺がルシウスの《五彩連環》から着想を得て、七属性と神力を組み合わせた新しい術式だ。


だが。


今回は、単純に力をぶつけるつもりはない。


……まずは、相手の仕組みを見極める。


「《神光・創世聖柱》」


右手に黄金の光が灯る。


その光を、細い糸のように魔獣へ伸ばした。


「グルルルッ!」


魔獣が、嫌がるように身を捩る。


……なるほど。


光属性への反応が強い。


だが、弱点というより、内部の魔力構造が露わになることを嫌っているようだ。


俺は、続けて左手を上げた。


「《黒影侵蝕》」


闇属性の魔力が、魔獣の足元へ広がる。


ただし、相手を侵蝕するためじゃない。


漏れ出した魔力を捕捉するためだ。


……見えた。


魔獣の胸部。


そこに、小さな赤黒い結晶が埋め込まれている。


「……あれが、再生の核か」


俺は、静かに呟いた。


だが。


次の瞬間。


魔獣が、猛烈な勢いで突進してきた。


「グオオオオッ!」


「レオン!」


シャルロットが、叫ぶ。


俺は、剣を構えた。


「《黒狼神速剣》」


一歩。


踏み込む。


次の瞬間。


俺の身体が、風のように加速した。


レオナード叔父上から学んだ神速の剣。


無駄を削ぎ落とした最短の動きで、魔獣の側面へ回り込む。


そして。


「《神狼・無影閃》」


シュンッ。


黄金の光を帯びた斬撃が、魔獣の前脚を切り裂いた。


「グギャアアッ!」


魔獣が、体勢を崩す。


だが。


切断された前脚が、赤黒い魔力によって再生し始めた。


……やっぱりか。


俺は、静かに息を吐いた。


普通に斬るだけじゃ、意味がない。


なら。


「《神海・蒼天奔流》」


青い魔法陣が、黄金に輝いた。


次の瞬間。


巨大な水流が、魔獣の身体を包み込む。


「グオオオッ!」


魔獣が、暴れる。


だが、水流は離れない。


俺は、右手を上げた。


「《神雷・天罰轟雷》」


紫色の雷が、黄金の光を帯びる。


そして。


水流を通じて、魔獣の全身へ走った。


ドォォォン!


巨大な雷鳴が、地下遺跡に響く。


魔獣の身体が、激しく痙攣した。


「……すごい」


ルシウスが、息を呑んだ。


「水と雷の神魔法を、同時に……」


だが。


まだ終わらない。


俺は、左手を上げた。


「《神地・不滅城塞》」


地面から、黄金の紋様を帯びた岩壁が立ち上がる。


魔獣の四方を囲み、逃げ道を封じる。


さらに。


「《神風・天穹裂刃》」


黄金の風が、岩壁の内側を駆け巡った。


魔獣の身体を、無数の風の刃が切り裂く。


……よし。


これで、動きは止まった。


だが。


胸部の結晶は、まだ輝いている。


俺は、剣を構え直した。


「……なら、最後は」


火属性。


そして、光属性。


二つの魔法陣を重ねる。


「《神炎・太陽劫火》」


黄金の炎が、剣を包み込んだ。


しかし。


今回は、燃やし尽くすための炎じゃない。


魔獣の再生を支える赤黒い魔力だけを焼き払う。


「……いくぞ」


俺は、一歩踏み込んだ。


「《神獅子・天断》!」


ゴォォォン!


父上から学んだ《黒獅子覇王斬》。


その技へ、神力と神炎を重ねた斬撃。


黄金の獅子が、空を駆けるような光景。


次の瞬間。


魔獣の胸部に埋め込まれた結晶が、真っ二つに割れた。


バキィィン!


「グオオオオオッ!」


魔獣が、最後の咆哮を上げる。


そして。


巨大な身体が、赤黒い光となって崩れ始めた。


……終わったか。


俺は、剣を下ろした。


だが。


その瞬間。


《七彩神星陣》の中心に浮かぶ黒い星が、わずかに震えた。


……ん?


俺は、眉をひそめた。


何かが、おかしい。


魔獣の核を破壊したはずなのに。


赤黒い魔力の流れが、完全には消えていない。


むしろ。


地下遺跡のさらに奥へ、流れ込んでいる。


……まさか。


俺は、すぐに右手を上げた。


「《神光・創世聖柱》!」


黄金の光が、地下遺跡の奥へ伸びる。


そして。


見つけた。


巨大な魔導装置。


その中心に、赤黒く輝く結晶。


……こいつが、本体か。


     ◇


同じ頃。


森林区域の奥。


アルベルト・レイフォードは、魔導装置の前で膝をついていた。


「……何だ、これは……!」


装置が、赤黒く輝いている。


彼が使用した魔力増幅術式。


本来なら、自身の魔力を一時的に高めるだけのはずだった。


だが。


装置は、想定を超える魔力を吸い込み続けていた。


「……止まれ!」


アルベルトが、叫ぶ。


しかし。


魔導装置は、止まらない。


むしろ。


内部の魔力が、さらに膨れ上がっていく。


「……っ!」


そのとき。


背後から、声が響いた。


「……何をした?」


振り向く。


そこには、グレゴール・ハインツが立っていた。


「……先輩!」


「答えろ!」


グレゴールの表情は、険しかった。


「この魔力反応は、何だ!?」


「……僕は」


アルベルトが、唇を噛んだ。


「……ただ、力を……」


「……馬鹿が!」


グレゴールが、叫んだ。


「こんな装置を勝手に起動したのか!?」


「……っ!」


「今すぐ止めろ!」


「……止まらないんです!」


アルベルトの声が、震えた。


「……何?」


「……止め方が、分からない!」


グレゴールの顔から、血の気が引いた。


……まずい。


これは、想定外だ。


彼は、すぐに通信魔導具を取り出した。


「……ユリウス!」


     ◇


地下遺跡。


俺は、魔導装置の反応を解析していた。


「……レオン」


シャルロットが、隣に立った。


「何か、分かった?」


「ああ」


俺は、頷いた。


「この装置、別の場所にある魔導装置とつながってる」


「……別の場所?」


「森林区域だ」


ルシウスが、目を見開いた。


「……兄様!」


「ん?」


「それって、誰かが起動したってことですか!?」


「……可能性は高い」


俺は、静かに答えた。


だが。


その瞬間。


地下遺跡全体が、激しく揺れた。


ドォォォン!


「……っ!?」


シャルロットが、剣を構える。


「何!?」


俺は、魔力の流れを見た。


……まずい。


装置の内部に、膨大な魔力が集まり始めている。


しかも。


その魔力は、単純な暴走じゃない。


何かに誘導されている。


……誰かが、仕掛けている?


俺は、すぐに《七彩神星陣》を展開した。


「全員、俺の後ろへ!」


ルシウスが、仲間たちを誘導する。


「みんな! こっちです!」


シャルロットも、剣を構えた。


「レオン! 私も手伝うわ!」


「頼む!」


俺は、七属性の魔力を循環させた。


火。


水。


風。


土。


雷。


光。


闇。


そして。


神力。


「《神銀・絶対領域》!」


七色の結界が、地下遺跡を包み込む。


……よし。


これで、ある程度は防げる。


だが。


次の瞬間。


装置の中心から、赤黒い光が噴き出した。


「……っ!?」


俺は、目を見開いた。


……これは。


ただの魔力暴走じゃない。


誰かが、装置の安全制御を外している。


しかも。


魔力が、二つの方向へ分かれていく。


一つは、俺たちのいる場所。


そして、もう一つは――。


「……まずい!」


俺は、叫んだ。


「シャル姉! ルシウス!」


二人が、振り向く。


「……何!?」


「装置から離れろ!」


その瞬間。


地下遺跡の奥で、巨大な魔法陣が輝いた。


そして。


赤黒い光が、爆発的に広がり始めた。


……間に合え!


俺は、地面を蹴った。


「《神狼・無影閃》!」


黄金の光が、地下遺跡を駆け抜ける。


だが。


その瞬間。


魔法陣の中心から、もう一つの術式が起動した。


……何だ、これは!?


俺の《神銀・絶対領域》とは異なる、古い封印術式。


それが、俺と二人の間に割り込んだ。


「……っ!」


俺の身体が、一瞬だけ止まる。


……しまった!


そして。


赤黒い光が、シャルロットとルシウスへ迫った。


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