↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役公爵令息レオンハルト』  作者: 覇王が好き
第二章・王立学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
75/390

第75話 捏造された罪――学園が下した不当な裁定

第75話 捏造された罪――学園が下した不当な裁定


 王国暦八二一年、秋月一日。


 王立アストレア学園。


 その日の朝。


 学園全体に、一つの噂が広まっていた。


『リゼット・クローディアが、古代魔道具の解析結果を改ざんした』


『しかも、レオンハルト・ヴァルディスが、その行為を庇っている』


 ……何だ、それ。


 俺は、掲示板に貼られた紙を見つめていた。


 昨日、改ざんの可能性が確認されたばかりだ。


 しかも、リゼット本人が改ざんした証拠はない。


 それなのに。


「……ふざけてるな」


 隣で、カイルが低く呟いた。


「レオン、どうする?」


「……まず、リゼットのところへ行こう」


 俺は、静かに答えた。


     ◇


 生徒会室。


 リゼットは、机に向かって座っていた。


 その表情は、いつも以上に険しい。


「……リゼット」


 俺が声をかけると、彼女は顔を上げた。


「……レオン」


「大丈夫か?」


「……大丈夫なわけないでしょ」


 その声は、少し震えていた。


「私、何もしてないのに……」


 リゼットは、拳を握り締めた。


「……解析結果を改ざんしたなんて、絶対に許せない」


 俺は、彼女の隣へ座った。


「……分かってる」


「……本当に?」


「ああ」


 俺は、まっすぐ彼女を見た。


「俺は、リゼットを信じてる」


 その瞬間。


 リゼットの瞳が、大きく見開かれた。


「……っ」


 そして、ゆっくりと俯いた。


「……そういうこと、簡単に言わないでよ」


「……え?」


「……嬉しくなるじゃない」


 小さな声だった。


 だが、確かに聞こえた。


 俺は、少しだけ笑った。


「……なら、よかった」


 リゼットは、頬を赤くして顔を逸らした。


     ◇


 その日の昼。


 学園長室へ、俺とリゼットは呼び出された。


 室内には、学園長。


 数人の教官。


 そして、学園監察官。


 机の上には、一枚の処分通知書が置かれていた。


「……レオンハルト・ヴァルディス君」


 学園長が、重い声で口を開いた。


「……はい」


「リゼット・クローディア君」


「……はい」


 学園長は、深く息を吐いた。


「……今回の解析記録改ざん疑惑について、暫定的な措置を取ることになった」


 俺は、静かに頷いた。


「……どのような?」


「リゼット君には、解析作業からの一時的な離脱を命じる」


 リゼットの表情が、強張った。


「……何ですって?」


「調査が完了するまで、解析室への立ち入りを制限する」


 俺は、眉をひそめた。


「……理由は?」


 学園長は、書類を見つめた。


「記録改ざんの疑いが、完全には晴れていないためだ」


「……でも」


 俺は、静かに言った。


「彼女が改ざんした証拠は、ないですよね?」


 沈黙。


 学園長は、答えなかった。


 その時。


「……さらに」


 監察官が、口を開いた。


「レオンハルト君にも、同様の措置を取る」


「……俺にも?」


「君が、解析記録の改ざんに関与した可能性がある」


 ……は?


 俺は、思わず目を細めた。


「……証拠は?」


 監察官は、机の上の紙を指差した。


「昨夜、解析室付近で君を見たという証言がある」


「……それ、昨日も聞きました」


 俺は、静かに答えた。


「昨夜は、公爵家の屋敷にいました」


「……しかし、証言がある以上、調査対象から外すことはできない」


 ……なるほど。


 つまり、証拠はないけど疑っている。


 俺は、少し考えた。


「……それなら」


 ゆっくりと口を開く。


「証言者の名前と、具体的な時刻を教えてください」


 監察官が、眉をひそめた。


「……それは、調査上の機密だ」


「……分かりました」


 俺は、静かに頷いた。


「では、俺のアリバイを確認してください」


「……何?」


「父上と母上、それに屋敷の使用人たちが証明できます」


 監察官は、少しだけ表情を強張らせた。


「……公爵家の人間による証言では、客観性に欠ける可能性がある」


 その瞬間。


 室内の空気が、静かに変わった。


 ……は?


 俺は、監察官を見つめた。


「……それは、どういう意味ですか?」


「……つまり、身内の証言だけでは……」


「じゃあ、俺を見たという人の証言は、客観的なんですか?」


 沈黙。


 学園長が、ゆっくりと顔を上げた。


「……レオンハルト君」


「はい」


「君の言い分は理解している」


 その声には、苦悩が滲んでいた。


「だが、今は学園の秩序を守るためにも……」


「……分かりました」


 俺は、静かに頷いた。


「調査には協力します」


 リゼットが、驚いたように俺を見た。


「……レオン?」


 俺は、彼女へ小さく微笑んだ。


「大丈夫」


 そして、学園長へ向き直った。


「ただ、一つだけお願いがあります」


「……何だね?」


「正式な証拠が出るまで、俺たちが犯人だと決めつけるような発表はしないでください」


 学園長は、しばらく黙っていた。


 そして。


「……分かった」


 静かに頷いた。


 だが。


 その約束は、長くは守られなかった。


     ◇


 午後。


 学園の掲示板に、一枚の通知が貼り出された。


『古代魔道具解析記録の不正疑惑に伴い、以下の生徒の関連施設利用を一時制限する』


『リゼット・クローディア』


『レオンハルト・ヴァルディス』


 ……。


 俺は、その紙を見つめていた。


 名前が、堂々と掲示されている。


 犯人だと断定する文面ではない。


 だが、周囲の生徒たちがどう受け取るかは、明らかだった。


「……やっぱり、関わってたんだ」


「公爵家でも、不正することがあるんだな」


「リゼットって、天才だと思ってたのに……」


 小さな声が、あちこちから聞こえてくる。


 リゼットは、俯いていた。


 その肩が、微かに震えている。


 俺は、静かに彼女の前へ立った。


「……リゼット」


「……何?」


「帰ろう」


「……でも」


「今は、ここにいる必要ないだろ」


 俺は、彼女へ手を差し出した。


「俺たちは、何も悪いことをしてないんだから」


 リゼットは、しばらく俺を見つめていた。


 そして。


「……うん」


 小さく頷いた。


 その手が、俺の手を握った。


     ◇


 同じ頃。


 学園の旧校舎。


 アルベルト・レイフォードは、掲示板の通知を見ていた。


「……ふふ」


 小さな笑みが漏れる。


「……うまくいった」


 隣にいたノエルが、少し不安そうに尋ねた。


「……本当に大丈夫なのか?」


「何が?」


「ヴァルディス公爵家が、黙っているとは思えない」


 アルベルトは、爽やかな笑顔を浮かべた。


「……だからこそ、面白いんじゃないか」


「……え?」


「公爵家が怒れば怒るほど、周囲には圧力に見える」


 彼は、ゆっくりと笑った。


「そして、レオンハルトが何か行動を起こせば、さらに疑惑が深まる」


 ノエルは、黙っていた。


「……結局、権力者は自分たちを守るために動くものだからね」


 アルベルトは、窓の外を見た。


「……さあ、どうする?」


 その口元が、歪んだ。


「最強の公爵令息様」


     ◇


 その日の夕方。


 ヴァルディス公爵家。


 執務室には、重苦しい沈黙が漂っていた。


 アルフォンスは、学園から届いた通知書を読んでいた。


 エレオノーラは、その隣に立っている。


「……あなた」


 母上の声は、驚くほど静かだった。


「……ああ」


 父上が答える。


「……これは、どういうことかしら?」


 エレオノーラは、通知書を指差した。


「レオンちゃんが、不正をしたかもしれないって……」


 その声が、わずかに震える。


「……証拠もないのに?」


 アルフォンスは、静かに頷いた。


「……そうだな」


 エレオノーラは、ゆっくりと微笑んだ。


 だが。


 その笑顔には、いつもの温かさがなかった。


「……あなた」


「……何だ」


「……私、もう我慢できないわ」


 その瞬間。


 室内の空気が、凍りついた。


 窓ガラスに、白い霜が広がる。


 机の上の水差しが、静かに凍った。


 アルフォンスは、ゆっくりと立ち上がった。


 その瞳には、黒獅子と呼ばれる男の威厳が宿っていた。


「……俺もだ」


 低い声。


「……証拠もなく、息子の名誉を傷つけた」


 アルフォンスは、静かに剣を取った。


「……学園には、説明してもらう」


 エレオノーラが、優しく微笑んだ。


「……ええ」


 その瞳が、冷たく輝く。


「……今度こそ、遠慮はしないわ」


 黒獅子と銀月の魔女。


 二人の怒りが、ついに限界へ達した。


 そして翌朝。


 王立アストレア学園は、歴史に残る一日を迎えることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。