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『悪役公爵令息レオンハルト』  作者: 覇王が好き
第二章・王立学園編

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第71話 黒星と蒼雷の共鳴――勇者の仮面に走る亀裂

第71話 黒星と蒼雷の共鳴――勇者の仮面に走る亀裂


 王立アストレア学園、大講堂。


 黒い巨人が、再び咆哮を上げた。


 その足元では、七つの星を描いた魔法陣が激しく明滅している。


『第二封印、解放条件』


『七つの絆のうち、二つ目を証明せよ』


 その声を聞いた瞬間。


 俺の胸に宿る黒星の紋章が、強く脈打った。


 そして、隣に立つカイルの身体からも、青い光が溢れ出す。


「……おい、レオン」


「何だ?」


「俺、何か変なことになってねえか?」


「……まあ、少しな」


「少しってレベルかよ!」


 カイルは、自分の胸元を見下ろした。


 そこには、淡い星の紋章。


 俺の黒星とは違う、青白い光。


 まるで、雷を閉じ込めたような輝きだった。


「……何だ、これ」


「多分、俺の力と共鳴してる」


「……多分?」


「詳しいことは、後で説明する」


「お前、説明が雑すぎるだろ!」


 ……悪い。


 俺だって、完全には理解してないんだ。


 だが、一つだけ分かる。


 この力は、俺一人では完成しない。


 誰かを信じること。


 誰かと共に戦うこと。


 その絆こそが、黒星の力を変えていく。


「……カイル」


「おう」


「俺を信じられるか?」


 カイルは、一瞬だけ目を丸くした。


 そして。


「……馬鹿か、お前」


 にやりと笑った。


「親友を信じなくて、誰を信じるんだよ!」


 その言葉と同時に。


 青い星が、強く輝いた。


     ◇


 巨人の胸にある魔力核が、激しく脈打つ。


『第二試練、開始』


 次の瞬間。


 巨人の両腕から、無数の黒い刃が放たれた。


 狙いは、俺たちだけではない。


 避難中の生徒たちにも、刃が向かっている。


「……っ!」


 俺は即座に重力を操作した。


 ――《万有引力》。


 黒い刃の軌道を、すべて自分の方へ引き寄せる。


 そして。


 ――《重力圧縮》。


 無数の刃が、一点に集まり、砕け散った。


「……相変わらず、無茶苦茶だな!」


 カイルが笑う。


「でも、助かった!」


 彼は雷光を纏い、巨人へ突進した。


「アッシュフォード流魔剣術――《雷燕》!」


 青い斬撃が、巨人の脚部を斬り裂く。


 だが、装甲はすぐに再生した。


「……ちっ!」


 カイルが舌打ちする。


「硬すぎんだろ!」


「カイル、右肩!」


「……おう!」


 俺は、巨人の右肩へ重力を集中させた。


 装甲が軋む。


 その隙間へ、カイルの剣が滑り込む。


「――《蒼雷穿牙》!」


 青い雷光が、装甲の内部へ突き刺さった。


 轟音。


 巨人の右腕が、大きく弾かれる。


『……連携攻撃、確認』


『信頼係数、上昇』


 ……信頼係数?


 そんなものまで測っているのか。


 だが、今は考えている暇がない。


 巨人の胸の魔力核が、再び光った。


『最終段階へ移行』


 次の瞬間。


 会場全体を覆うほどの黒い魔法陣が展開された。


 ……まずい。


 あれは、広域殲滅魔法だ。


 このまま放てば、会場ごと吹き飛ぶ。


「……カイル!」


「分かってる!」


 俺たちは、同時に地面を蹴った。


     ◇


 その頃。


 会場の西側。


 フィオナは、最後の避難誘導を行っていた。


「あと少しよ! 落ち着いて!」


 その隣では、セレスが巨大な結界を維持している。


「……っ!」


 額に汗が浮かぶ。


 王血解放の力は強大だ。


 だが、長時間の維持には相応の負担がかかる。


「……セレスティア殿下!」


 エリシアが駆け寄った。


「私が、魔力を補助します!」


「……ありがとう!」


 純白の光が、金色の結界へ流れ込む。


 その瞬間。


 結界が、さらに強く輝いた。


 アリシアは、最後まで残っていた生徒たちを守りながら、黒い魔力の獣を斬り伏せていた。


「……リゼット!」


「分かってる!」


 リゼットは、古代魔法陣の解析を続けていた。


「……見つけた!」


 彼女の瞳が輝く。


「レオン! あの巨人、胸の核だけを壊しても駄目!」


 声が、魔法で会場全体へ響いた。


「核の奥に、七つの封印回路がある! そのうち一つだけが、青く光ってる!」


 俺は、巨人の胸を見た。


 ……確かに。


 黒い装甲の奥。


 七つの星を描いた回路。


 そのうち、二つ目だけが青く輝いている。


「……カイル!」


「おう!」


「最後は、合わせるぞ!」


「……任せろ!」


     ◇


 俺は、剣を構えた。


 黒星の力が、静かに目覚める。


 だが、すべてを解放するつもりはない。


 この力は、強すぎる。


 会場を守るためには、必要な分だけ使えばいい。


「……《黒星解放》」


 胸の紋章が、黄金色に輝いた。


 黒と金の魔力が、剣へ流れ込む。


 隣では、カイルが雷光を纏っていた。


「……いくぜ、レオン!」


「ああ!」


 俺たちは、同時に飛び出した。


 カイルが先行する。


 雷光が、巨人の視界を奪う。


「――《蒼雷穿牙》!」


 青い雷が、巨人の胸を貫いた。


 装甲が砕ける。


 その奥に、七つの封印回路が露出した。


 俺は、剣を振り上げた。


 ――《万有引力》。


 周囲の魔力を、一点へ集める。


 ――《黒星解放・重力断界》。


 黒と金の斬撃が、巨人の胸へ突き刺さった。


 だが、狙ったのは魔力核ではない。


 その奥にある、封印回路。


 七つの星のうち、二つ目。


 青い光を放つ部分だけを、正確に切り離した。


 その瞬間。


 ――カァァァァン!


 澄んだ鐘のような音が、会場全体へ響いた。


『……第二試練、達成』


『友情の星、認証』


『第二封印、解除』


 巨人の動きが止まった。


 そして、ゆっくりと崩れ始める。


 黒い装甲が、光の粒子へ変わっていく。


 最後に、巨人の声が響いた。


『……継承者よ』


『残る封印は、五つ』


『継承の刻まで、残り二年』


 その言葉を最後に。


 巨人は、完全に消滅した。


     ◇


 静寂。


 会場に残された生徒たちは、呆然としていた。


 そして。


「……勝った?」


 誰かが呟いた。


 次の瞬間。


「うおおおおおっ!」


 大歓声が響いた。


「レオンハルト様!」


「カイル様もすごかった!」


「二人で、あの巨人を倒したんだ!」


 拍手が、会場を包む。


 カイルは、照れくさそうに頭をかいた。


「……いやあ、参ったな」


「何が?」


「お前と一緒に戦うと、目立ちすぎる」


「……今さらだろ」


「ははっ! 違いねえ!」


 俺たちは笑い合った。


 そして、拳を合わせた。


 ……いい戦いだった。


 だが。


 俺は、まだ気づいていなかった。


 この事件が、学園全体を揺るがす大きな問題へ発展しようとしていることに。


     ◇


 会場の片隅。


 アルベルト・レイフォードは、拳を握り締めていた。


「……くそっ」


 誰にも聞こえない声。


 自分が英雄になるはずだった。


 レオンハルトを悪役に仕立て上げるはずだった。


 それなのに。


 すべてを救ったのは、レオンハルトとカイル。


 しかも、王女たちまで活躍している。


 ……何故だ。


 何故、あいつばかりが。


 その時。


「……アルベルト」


 ノエルが、静かに近づいてきた。


「……何だ」


「少し、まずいことになった」


 アルベルトが振り向く。


「……何が?」


「君が使った魔道具の残骸が、回収された」


 アルベルトの表情が、凍りついた。


「……誰に?」


「……生徒会長だ」


 ノエルは、低い声で続けた。


「しかも、リゼット・クローディアが解析を始めている」


 アルベルトの背筋に、冷たいものが走った。


 ……まずい。


 あの魔道具の術式を調べられれば。


 自分が事件を引き起こしたことが、露見するかもしれない。


 だが。


 アルベルトは、すぐに笑顔を取り戻した。


「……大丈夫さ」


 その声は、わずかに震えていた。


「僕は、何もしていない」


 ノエルは、何も答えなかった。


     ◇


 同じ頃。


 ヴァルディス公爵家。


 執務室の扉が、勢いよく開いた。


「……あなた!」


 エレオノーラだった。


 その手には、学園から届いた緊急報告書。


「……レオンちゃんが!」


 アルフォンスが立ち上がった。


「……何があった?」


「学園で、古代魔法の暴走が……!」


 その瞬間。


 アルフォンスの表情が、完全に消えた。


「……レオンは?」


「無事よ。でも……」


 エレオノーラの声が、震えた。


「……誰かが、意図的に事件を起こした可能性があるって……」


 沈黙。


 そして。


「……そうか」


 アルフォンスは、静かに剣を取った。


 エレオノーラの銀色の瞳が、冷たく輝く。


「……あなた」


「ああ」


「……今度こそ、行くわよね?」


 アルフォンスは、ゆっくりと頷いた。


「……当然だ」


 王国最強と謳われる黒獅子。


 そして、銀月の魔女。


 二人が、ついに動き出す。


 王立アストレア学園。


 その翌朝。


 学園の歴史に残るほど恐ろしい一日が、始まろうとしていた。

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