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『悪役公爵令息レオンハルト』  作者: 覇王が好き
第一章 運命を覆す者

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第55話 運命を喰らう黒星――七つの絆と、神を超える意志

第55話 運命を喰らう黒星――七つの絆と、神を超える意志


 王国暦八百二十一年、夏月十六日。


 午後二時二十七分。


 ルミナス王城、地下禁書庫。


 金色の光が、俺とセレスの間に広がっていた。


 彼女の手は、温かかった。


 そして、驚くほど力強かった。


「……レオン」


 セレスが、静かに俺を見つめる。


「……私、もう逃げないわ」


 俺は、ゆっくりと頷いた。


「……ああ」


 そして。


「……俺もだ」


 その瞬間。


 七星魂環術式が、激しく輝き始めた。


 黒い魔法陣。


 七つの星。


 そして、中央に浮かぶ黒き星。


 ルシアンが、静かに笑った。


「……素晴らしい」


 その声には、興奮が混じっていた。


「……絆が深まるほど、魂の共鳴は強くなる」


 俺は、眉をひそめた。


 ……なるほど。


 敵は、俺たちの絆を利用しようとしている。


 だが。


 それは同時に、俺たちが術式へ干渉できるということでもある。


 ◇◆◇


「……リゼット!」


「はい!」


「……この術式、逆に利用できるか?」


 リゼットが、目を見開いた。


「……逆に?」


「……ああ」


 俺は、静かに頷いた。


「……魂を縛るための術式なら、魂を解放するためにも使えるはずだ」


 リゼットは、しばらく考え込んだ。


 そして。


「……理論上は、可能です!」


 その声が、少し明るくなった。


「……七星魂環術式は、七つの魂を一つの器へ集める構造です」


 そして。


「……その流れを逆転させれば、魂を元の持ち主へ返すことができます!」


 俺は、静かに笑った。


「……よし」


 そして。


「……なら、やってみよう」


 ◇◆◇


 ルシアンが、右手を掲げた。


「……無駄だ」


 その声が、冷たく響く。


「……七星魂環術式は、三百年前の王家が完成させた禁術だ」


 そして。


「……お前たち程度が、簡単に覆せるものではない」


 俺は、静かに答えた。


「……そうか?」


 そして。


「……なら、試してみるか」


 ◇◆◇


 俺は、両手を広げた。


 《無限神力》。


 膨大な神力が、身体の奥から溢れ出す。


 だが、その力を直接ルシアンへぶつけることはしない。


 代わりに。


 七星魂環術式の魔力回路へ、少しずつ神力を流し込んだ。


 リゼットが、驚いたように叫ぶ。


「……レオン様! 術式が、書き換わっています!」


「……ああ」


 俺は、静かに頷いた。


「……支配の術式を、解放の術式へ変える」


 その瞬間。


 黒い魔法陣の一部が、金色へ変わった。


 ルシアンの瞳が、わずかに揺れた。


「……何……?」


 ◇◆◇


 セレスが、俺の手を握りしめた。


「……レオン!」


「……ああ!」


 彼女の身体から、金色の魔力が溢れ出す。


 《王血解放》。


 王家の血に刻まれた、七星術式の制御権。


 そして。


 エリシアが、七星のペンダントを掲げた。


「――《七星聖光・魂環浄化》!」


 黄金色の光が、黒い魔法陣を包み込む。


 リゼットが、素早く術式を解析する。


「……七つの回路、すべて接続しました!」


 アリシアとエレノアは、俺たちを守るように前へ立った。


「……邪魔はさせないわ!」


「……レオンハルト様の道は、私たちが守ります!」


 俺は、仲間たちを見渡した。


 ……本当に。


 ……俺は、恵まれているな。


 ◇◆◇


 その瞬間。


 ルシアンの身体が、黒い炎に包まれた。


「……ふざけるな!」


 初めて、彼が怒声を上げた。


「……三百年だぞ!」


 その声が、書庫全体へ響いた。


「……私は、三百年も待ち続けた!」


 そして。


「……今さら、すべてを奪われてたまるか!」


 巨大な黒い魔法陣が、彼の背後に展開された。


 七属性魔法が、一斉に発動する。


 火。


 水。


 風。


 土。


 雷。


 氷。


 光。


 そして。


 そのすべてが、黒い炎へ変わった。


 リゼットが、悲鳴を上げた。


「……レオン様! 七属性魔法が、魂縛りの禁術へ変換されています!」


 俺は、静かに剣を構えた。


「……了解」


 そして。


「……なら、全部受け止める」


 ◇◆◇


 ルシアンの黒い炎が、俺たちへ襲いかかった。


 ドォォォォォン!!


 凄まじい衝撃。


 だが。


 俺は、右手を掲げた。


「――《万有引力・絶対防壁》!」


 空間が、完全に固定された。


 黒い炎が、俺たちの前で停止する。


 ルシアンが、驚愕の声を上げた。


「……馬鹿な……!」


 俺は、静かに笑った。


「……悪いな」


 そして。


「……俺の神力は、底なしなんだ」


 ◇◆◇


 午後二時三十五分。


 七星魂環術式の半分以上が、金色へ変わっていた。


 リゼットが、叫ぶ。


「……レオン様! あと少しです!」


 俺は、静かに頷いた。


「……ああ!」


 その瞬間。


 ルシアンが、突然笑った。


「……なるほど」


 その声は、奇妙なほど落ち着いていた。


「……お前たちは、確かに強い」


 そして。


「……だが、一つだけ見落としている」


 俺は、眉をひそめた。


「……何?」


 ルシアンは、ゆっくりと右手を掲げた。


「……七星魂環術式には、最後の鍵がある」


 その瞬間。


 書庫の床に、巨大な黒い紋章が浮かび上がった。


 そして。


 俺の身体が、突然動かなくなった。


「……っ!?」


 ……何だ?


 重力場は、正常に動いている。


 神力も、問題なく使える。


 なのに。


 身体が、動かない。


 ルシアンが、静かに笑った。


「……それは、魂そのものへ刻まれた命令だ」


 そして。


「……黒き星は、十七歳で完成する」


 俺は、眉をひそめた。


 ……十七歳。


 ……また、その年齢か。


 ルシアンは、ゆっくりと近づいてきた。


「……だが、異界の魂が宿る場合」


 その声が、冷たく響いた。


「……完成の時期は、早まることがある」


 俺は、目を見開いた。


 ……何?


 ルシアンは、静かに笑った。


「……レオンハルト・ヴァルディス」


 そして。


「……お前の魂は、すでに完成している」


 ◇◆◇


 その瞬間。


 俺の胸元に、黒い星の紋章が浮かび上がった。


 リゼットが、驚愕の声を上げた。


「……そんな……!」


 セレスが、俺の手を強く握りしめた。


「……レオン!」


 エリシアのペンダントが、激しく輝く。


 アリシアとエレノアが、剣を構えた。


 だが。


 俺は、静かに息を吐いた。


 ……なるほど。


 ……そういうことか。


 俺の魂は、すでに完成している。


 つまり。


 黒幕は、もう十七歳まで待つ必要がない。


 ルシアンが、ゆっくりと手を伸ばした。


「……さあ、黒き星よ」


 そして。


「……私の器となれ」


 その瞬間。


 俺の意識が、暗闇へ引きずり込まれた。


 ◇◆◇


 暗闇。


 音も、光もない世界。


 俺は、ただ一人で立っていた。


 そして。


 目の前に、一人の少年が現れた。


 黒髪。


 赤い瞳。


 そして。


 俺と、まったく同じ顔。


「……お前は……」


 少年は、静かに俺を見つめた。


 そして。


「……ようやく、会えたね」


 その声は、俺自身の声だった。


 だが。


 どこか、懐かしかった。


 少年は、静かに微笑んだ。


「……僕は、レオンハルト・ヴァルディス」


 そして。


「……君が転生してくる前、この身体に宿っていた魂だよ」


 俺は、息を呑んだ。


 ……原作のレオンハルト。


 ……本来、この世界で生まれるはずだった少年。


 その魂が、今。


 俺の目の前に立っていた。


 ――黒き星の完成。


 ――ルシアンの最後の罠。


 ――そして、もう一人のレオンハルトとの邂逅。


 物語は、ついに転生の真実へと踏み込んでいく。

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