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『悪役公爵令息レオンハルト』  作者: 覇王が好き
第一章 運命を覆す者

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第51話 七つの絆が導く奇跡――黒き星、運命の鎖を断つ

第51話 七つの絆が導く奇跡――黒き星、運命の鎖を断つ


 王国暦八百二十一年、夏月十六日。


 午前七時二十二分。


 聖オルディス廃修道院、地下第三層。


 七つの魔力炉が、赤く輝いていた。


 対神兵器《七星魔神兵》。


 その最終防衛機構が、起動している。


 リゼットの測定器が、激しく警告音を鳴らした。


「……自壊まで、残り六十秒!」


 アリシアが、剣を握りしめた。


「……冗談でしょ!」


 エレノアも、青ざめた顔で魔神兵を見上げた。


「……レオンハルト様!」


 俺は、静かに右手を掲げた。


 《万有引力》。


 七つの魔力炉を、再び重力場で拘束する。


 だが。


 魔力炉の内部では、魂縛りの術式が暴走を始めていた。


 ベルナールの魂が、赤い光の中で苦しげに揺れている。


『……もう、いい……』


 かすかな声が響いた。


『……私を、殺せ……』


 俺は、静かに首を振った。


「……断る」


『……何……?』


「……お前を殺すために、ここまで来たんじゃない」


 そして。


「……救うために、来たんだ」


 ◇◆◇


 リゼットが、必死に測定器を操作していた。


「……レオン様! 七つの魔力炉のうち、一つだけ構造が違います!」


「……どれだ?」


「……中央の黒い炉です!」


 俺は、魔神兵の胸元を見た。


 七つの魔力炉。


 その中心に、黒い結晶がある。


 そこから、無数の魔力回路が伸びていた。


 ……なるほど。


 他の六つは、補助炉。


 中央の黒い炉が、魂の拘束を制御している。


「……リゼット!」


「はい!」


「……黒い炉だけ、切り離せるか?」


「……理論上は可能です!」


 彼女は、震える声で続けた。


「……ですが、七つの回路を同時に遮断する必要があります!」


 俺は、静かに笑った。


「……なら、やるだけだ」


 ◇◆◇


 そのとき。


 エリシアが、俺の隣へ歩み寄った。


「……レオン様」


「……どうした?」


 彼女は、七星のペンダントを握りしめた。


「……私に、考えがあります」


 俺は、彼女を見た。


「……聞かせてくれ」


 エリシアは、真剣な表情で答えた。


「……七星聖光は、魂を縛る術式を浄化できます」


「……ああ」


「……ですが、今は対聖光結界に阻まれています」


 彼女は、魔神兵の胸元を見つめた。


「……なら、その結界だけを破壊できれば」


 俺は、静かに頷いた。


「……魂を解放できる」


「……はい!」


 ◇◆◇


 残り四十秒。


 俺は、右手を掲げた。


 《無限神力》。


 膨大な神力が、身体の奥から溢れ出す。


 だが、その力を直接魔神兵へぶつけることはしない。


 俺は、空間そのものへ干渉した。


「――《万有引力・空間圧縮》」


 魔神兵の胸元に、巨大な重力場が発生した。


 だが、その重力場は装甲を破壊するためのものではない。


 対聖光結界の外側だけを、極限まで圧縮する。


 ゴゴゴゴゴ……!


 黒い結界が、激しく軋み始めた。


 リゼットが叫ぶ。


「……結界強度、低下しています!」


 俺は、静かに息を吐いた。


「……まだだ」


 そして。


「――《万有引力・結界崩壊》!」


 バキィィィン!!


 黒い結界が、粉々に砕け散った。


 ◇◆◇


「……エリシア!」


「はい!」


 彼女が、七星のペンダントを掲げた。


 黄金色の光が、部屋全体を包み込む。


「――《七星聖光・魂環解放》!」


 その光が、魔神兵の胸元へ突き刺さった。


 黒い結晶が、激しく揺れる。


 そして。


 ベルナールの魂を縛っていた鎖が、一本ずつ消えていく。


『……な……何だ……?』


 ベルナールの声が、震えた。


『……苦しく、ない……?』


 俺は、静かに笑った。


「……もう少しだ」


 ◇◆◇


 残り二十秒。


 だが、その瞬間。


 七つの魔力炉が、一斉に暴走を始めた。


 リゼットが叫ぶ。


「……レオン様! 魂の拘束が外れたことで、魔力炉が制御不能になっています!」


 俺は、眉をひそめた。


 ……そうか。


 魂を解放すれば、魔力炉は暴走する。


 ……最初から、そういう仕組みか。


 黒幕は、どちらを選んでも破滅するように設計していた。


 だが。


 俺は、静かに笑った。


「……なら、全部止める」


 ◇◆◇


 俺は、両手を広げた。


 《無限神力》。


 膨大な神力が、身体の奥から溢れ出す。


 そして。


「――《万有引力・絶対封鎖》」


 七つの魔力炉が、完全に停止した。


 時間が止まったように、すべての魔力が静止する。


 リゼットが、目を見開いた。


「……そんな……!」


 その声が、震えた。


「……七つの魔力炉を、完全に停止させた……!」


 俺は、静かに息を吐いた。


「……これで、終わりだ」


 そして。


 右手を握りしめた。


「――《万有引力・重力圧壊》!」


 ドォォォォォン!!


 七つの魔力炉が、同時に砕け散った。


 巨大な魔神兵の身体が、ゆっくりと崩れ始める。


 黒い装甲が、次々と剥がれ落ちる。


 そして。


 最後に残ったのは、一つの赤い光だった。


 ベルナールの魂。


 エリシアが、そっと両手を差し出した。


 黄金色の光が、赤い魂を包み込む。


「……もう、大丈夫ですよ」


 彼女は、優しく微笑んだ。


「……あなたは、自由です」


 ◇◆◇


 午前七時二十五分。


 対神兵器《七星魔神兵》は、完全に消滅した。


 地下第三層には、静寂が戻っていた。


 俺は、ゆっくりと息を吐いた。


「……終わったな」


 アリシアが、剣を鞘へ収めた。


「……本当に、無茶苦茶ね」


 エレノアも、静かに微笑んだ。


「……ですが、誰も失わずに済みました」


 リゼットは、測定器を見つめたまま呟いた。


「……古代王国の対神兵器を、完全に無力化するなんて……」


 エリシアが、俺の隣へ歩み寄った。


「……レオン様」


「……何だ?」


「……ありがとうございます」


 俺は、首を傾げた。


「……どうして?」


 彼女は、優しく微笑んだ。


「……ベルナール様を、見捨てなかったからです」


 俺は、少しだけ笑った。


「……当然だろ」


 そして。


「……救えるなら、救いたい」


 ◇◆◇


 そのとき。


 赤い光が、ゆっくりと人の形へ変わった。


 ベルナール・クロイツ。


 肉体は失われていたが、魂だけの姿で俺たちの前へ現れた。


『……レオンハルト……』


 俺は、静かに彼を見た。


「……ベルナール」


 彼は、深々と頭を下げた。


『……すまなかった……』


 その声は、震えていた。


『……私は、王太子殿下を利用し……お前を陥れようとした……』


 俺は、黙って聞いていた。


『……だが、最後には私自身が利用され……魂を奪われた……』


 ベルナールは、顔を上げた。


『……それでも、お前は私を救った……』


 俺は、静かに答えた。


「……罪は、消えない」


 ベルナールは、頷いた。


『……わかっている……』


「……だが」


 俺は、彼を見つめた。


「……お前が知っていることを、全部話してくれ」


 ベルナールの瞳が、わずかに揺れた。


『……黒幕のことか……』


「……ああ」


 ベルナールは、静かに頷いた。


『……ならば、話そう……』


 そして。


『……あの男の名は……』


 その瞬間。


 地下第三層の空気が、急激に冷たくなった。


 ベルナールの魂に、黒い亀裂が走った。


『……ぐあああっ!』


 エリシアが叫ぶ。


「……魂に、呪いが残っています!」


 俺は、咄嗟に右手を掲げた。


 《万有引力》。


 ベルナールの魂を、空間ごと固定する。


 だが。


 黒い亀裂は、止まらなかった。


 ベルナールが、苦しげに叫んだ。


『……聞け……!』


 そして。


『……黒幕は……王国の……』


 その声が、途切れた。


 次の瞬間。


 赤い光が、激しく弾けた。


 エリシアの聖光が、必死に魂を包み込む。


 だが。


 ベルナールの姿は、ゆっくりと消えていった。


 最後に、かすかな声が響いた。


『……すまない……』


 そして。


『……ありがとう……』


 赤い光が、消えた。


 ◇◆◇


 俺は、しばらく動けなかった。


 エリシアが、静かに涙を拭った。


「……魂は、消滅していません」


 俺は、彼女を見た。


「……本当か?」


「……はい」


 彼女は、七星のペンダントを握りしめた。


「……最後の瞬間、魂を保護することができました」


 その言葉に、俺は安堵の息を吐いた。


「……よかった」


 だが。


 同時に、別の疑問が浮かんだ。


 ……黒幕は、王国の何者なのか。


 ベルナールが言いかけた言葉。


『黒幕は、王国の……』


 その先に、何がある?


 ◇◆◇


 同じ頃。


 王都中心部、王城地下。


 誰も知らない秘密の部屋。


 一人の男が、静かに水晶を見つめていた。


 水晶には、崩壊した七星魔神兵の姿が映っている。


「……なるほど」


 男は、静かに笑った。


「……対神兵器まで、破壊するか」


 その声には、怒りも焦りもなかった。


 むしろ、楽しそうだった。


「……やはり、面白い」


 男は、ゆっくりと立ち上がった。


 そして、壁に掛けられた古い王家の紋章へ手を伸ばした。


「……レオンハルト・ヴァルディス」


 その名を、静かに呟く。


「……お前は、まだ知らない」


 そして。


「……自分が、何のために生まれたのかを」


 男の瞳が、赤く輝いた。


 ――七星魔神兵、撃破。


 ――ベルナールの魂、救出。


 ――そして、黒幕の正体へ近づく新たな手掛かり。


 レオンハルトの運命を巡る戦いは、さらに深い闇へと進み始めていた。

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