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『悪役公爵令息レオンハルト』  作者: 覇王が好き
第一章 運命を覆す者

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第27話 魂縛りの崩壊と、黒幕が残した王家の紋章

第27話 魂縛りの崩壊と、黒幕が残した王家の紋章


 王国暦八百二十一年、夏月四日。


 王城地下、七星の祭壇。


 七つの星が、白く輝いていた。


 聖女エリシアの光。


 そして、俺の《無限神力》。


 二つの力が重なり、黒い魂縛りの術式を押し返していく。


 だが。


 ……まだ、終わっていない。


 俺は、静かに目を細めた。


 祭壇の中心にある黒い結晶。


 そこから、さらに深い闇が溢れ出していた。


「……レオンハルト!」


 エリシアが、叫んだ。


「……結晶が、まだ動いています!」


「……わかってる!」


 俺は、右手を上げた。


 《万有引力》。


 黒い結晶の周囲へ、強烈な重力場を形成する。


 次の瞬間。


 ギギギギ……!


 結晶が、激しく軋んだ。


 だが。


 黒衣の男が、突然笑い始めた。


「……ははは……!」


 俺は、静かに振り返った。


「……何がおかしい?」


 男は、狂気じみた笑みを浮かべていた。


「……貴様らは、何もわかっていない!」


 そして。


 祭壇へ手をかざした。


「……魂縛りの儀式は、失敗しても意味がある!」


 ……何?


 俺は、静かに目を細めた。


 男は、叫んだ。


「……貴様の力を、測ることができたのだからな!」


 その瞬間。


 黒い結晶が、激しく光った。


 そして。


 空中に、巨大な魔法陣が展開された。


 ……記録術式?


 俺は、すぐに気づいた。


 この儀式には、対象の魔力反応や魂の構造を記録する機能が組み込まれている。


 ……なるほど。


 俺を倒すだけじゃない。


 俺の力を解析することも、目的だったのか。


「……なら」


 俺は、静かに微笑んだ。


「……その記録も、止める」


 ◇◆◇


 俺は、右手を上げた。


 《無限神力》。


 神力を、記録術式へ流し込む。


 だが。


 その瞬間。


 ……妙だな。


 記録術式は、すでに外部へ情報を送信し始めていた。


 ……遠隔転送か。


 俺は、静かに目を細めた。


 七つの星を結ぶ魔力導線。


 その先には、王都の地下へ続く複数の経路がある。


 ……全部を止めるのは、難しいな。


 だが。


 俺は、静かに息を吐いた。


 ……なら、送る内容を変えればいい。


 俺は、神力を細かく調整した。


 記録術式へ流れ込む情報を、偽装する。


 魔力量。


 魔力属性。


 そして、魂の反応。


 すべてを、一般的な高位魔導師の範囲へ収める。


 ……よし。


 これなら、相手に正確な情報は渡らない。


 次の瞬間。


 記録術式が、淡く光った。


 そして。


 シュン……。


 魔力導線が、静かに消えた。


 ……送信完了。


 俺は、静かに頷いた。


 ……これで、少し時間を稼げる。


 ◇◆◇


 その頃。


 祭壇の反対側。


 父アルフォンスは、最後の黒鎧騎士を打ち倒していた。


 ガキィン!


 剣が弾かれ、騎士が床へ倒れる。


「……終わりだ」


 父は、静かに大剣を下ろした。


 その周囲には、二十四人の騎士が倒れていた。


 全員、意識はあるか、気絶しているだけ。


 命を奪われた者はいなかった。


 ……父上らしいな。


 俺は、静かに微笑んだ。


 父は、俺の方へ歩いてきた。


「……レオンハルト」


「……はい」


「……祭壇は?」


「……もう少しです」


 父は、静かに頷いた。


「……なら、最後までやり遂げろ」


 その声には、深い信頼が宿っていた。


 ◇◆◇


 祭壇の中央。


 エリシアは、両手を胸の前で組んでいた。


 金色の光が、彼女の周囲を包み込んでいる。


 その瞳には、迷いがなかった。


「……レオンハルト様」


「……ん?」


「……私、わかりました」


 俺は、彼女を見た。


「……何が?」


 エリシアは、静かに微笑んだ。


「……七星の守護者が言っていたことです」


 そして。


「……私は、誰かの鍵ではない」


 その声には、確かな意志が宿っていた。


「……私は、誰かを救うために、この力を使いたい」


 俺は、静かに頷いた。


「……ああ」


 エリシアは、ゆっくりと手を伸ばした。


 金色の光が、祭壇へ広がる。


「……《七星聖光》」


 その瞬間。


 七つの星が、眩い光を放った。


 そして。


 パキィン!


 黒い結晶に、亀裂が入った。


「……馬鹿な!?」


 黒衣の男が、叫んだ。


 エリシアは、静かに続けた。


「……私は、あなたたちの道具にはなりません!」


 次の瞬間。


 黒い結晶が、完全に砕け散った。


 ……終わった。


 俺は、静かに息を吐いた。


 ◇◆◇


 だが。


 黒衣の男は、突然後退した。


「……くっ!」


 そして、懐から黒い魔石を取り出した。


 ……逃げる気か。


 俺は、静かに目を細めた。


「……させない」


 《万有引力》。


 男の身体へ、強烈な重力をかける。


 次の瞬間。


 ドンッ!


 男は、床へ膝をついた。


「……なっ!?」


 俺は、ゆっくりと近づいた。


「……終わりだ」


 男は、必死に抵抗しようとした。


 だが。


 身体は、まったく動かない。


 そのとき。


 母エレオノーラが、静かに前へ出た。


「……レオンちゃん」


「……はい」


「……この人、少し変よ」


 俺は、眉をひそめた。


「……どういうことですか?」


 母は、男の胸元を指差した。


「……そこに、魔導具があるわ」


 俺は、静かに目を細めた。


 黒衣の男の胸元。


 そこには、小さな銀色の紋章が隠されていた。


 ……これは。


 俺は、息を呑んだ。


 ルミナス王家の紋章。


 しかも。


 通常の王家の紋章とは、少し違う。


 七つの星を囲む、古い王家の紋章だった。


 ……まさか。


 俺は、静かに拳を握った。


 ◇◆◇


 その後。


 黒衣の男は、王国監察官へ引き渡された。


 銀色の紋章も、正式な証拠として押収された。


 だが。


 男は、最後まで名前を名乗らなかった。


 ただ、一つだけ。


 俺へ、奇妙な言葉を残した。


「……黒き暴君よ」


 その声には、冷たい笑みが混じっていた。


「……貴様は、まだ何も知らない」


 俺は、静かに男を見つめた。


「……何を?」


 男は、ゆっくりと笑った。


「……王国の真の歴史を、だ」


 その言葉を最後に、男は口を閉ざした。


 ◇◆◇


 王城、国王執務室。


 俺たちは、国王アレクシス陛下へ事件の報告をしていた。


 国王は、押収された紋章を見つめていた。


「……この紋章」


 その声には、驚きが混じっていた。


「……陛下、ご存じなのですか?」


 俺が尋ねると、国王は静かに頷いた。


「……ああ」


 そして。


「……これは、王家の旧紋章だ」


 俺は、息を呑んだ。


「……旧紋章?」


 国王は、静かに続けた。


「……現在のルミナス王家が成立する以前、王国の始祖たちが用いていた紋章だ」


 母の表情が、険しくなった。


「……陛下」


「……何だ?」


「……その紋章は、なぜ使われなくなったのですか?」


 国王は、しばらく黙っていた。


 そして。


 重い声で答えた。


「……王国の歴史から、消された一族がいる」


 俺は、静かに目を細めた。


「……消された、一族?」


 国王は、ゆっくりと頷いた。


「……七星王家」


 その名前を聞いた瞬間。


 俺の胸の奥で、何かが引っかかった。


 ……七星王家。


 原作ゲームでは、ほとんど語られなかった存在。


 だが。


 その名には、奇妙な既視感があった。


 国王は、静かに続けた。


「……その一族は、かつて魂へ干渉する禁忌の術式を研究していた」


 そして。


「……ある事件をきっかけに、王家の記録から抹消されたのだ」


 俺は、静かに息を吐いた。


 ……なるほど。


 黒幕は、単なる反公爵派の貴族ではないのかもしれない。


 ◇◆◇


 その日の夜。


 王都の地下。


 別の密室。


 一人の男が、机の上に置かれた魔導記録を見つめていた。


 そこには、レオンハルトの魔力反応が記されている。


 だが。


 数値は、想定より遥かに低かった。


「……なるほど」


 男は、静かに笑った。


「……情報を偽装したか」


 その声には、感心したような響きがあった。


「……やはり、面白い少年だ」


 そして。


 机の引き出しから、古い羊皮紙を取り出した。


 そこには、七星王家の紋章が描かれていた。


「……だが、問題ない」


 男は、静かに呟いた。


「……我々には、まだ切り札がある」


 そして。


 古い羊皮紙を広げた。


 そこには、一つの名前が記されていた。


『レオンハルト・ヴァルディス』


 その名前の横には、奇妙な一文が添えられていた。


『黒き暴君――覚醒予定年齢、十七歳』


 男は、冷たく微笑んだ。


「……運命は、まだ変わらん」


 ――レオンハルトが知らぬ間に、原作の悲劇へ繋がる新たな計画が動き始めていた。

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