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『悪役公爵令息レオンハルト』  作者: 覇王が好き
第一章 運命を覆す者

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第24話 七星の祭壇と、聖女を誘う偽りの救済

第24話 七星の祭壇と、聖女を誘う偽りの救済


 王国暦八百二十一年、夏月四日。


 ヴァルディス公爵家、王都別邸。


 朝の執務室には、王都の古地図が何枚も広げられていた。


 俺は机に肘をつき、地図に記された七つの印を見つめていた。


「……これで、六か所か」


 セバスティアンが頷いた。


「はい。王都周辺に残る古代七星信仰の遺構のうち、六か所について位置を確認いたしました」


 リーベル村の祠。


 王都北部の廃修道院。


 旧城壁の地下礼拝堂。


 南区の古井戸。


 西の共同墓地。


 そして、王立魔導学院の地下資料庫。


 いずれも、七つの星を象った紋章が発見された場所だ。


 ……問題は、七つ目。


 俺は、地図を見つめた。


 七つの星。


 魂縛りの儀式。


 そして、エリシアの失われた記憶。


 これらが無関係とは思えない。


「セバスティアン。六か所の位置を線で結んでみてくれ」


「承知いたしました」


 老執事は定規を取り出し、地図の上に線を引いた。


 すると。


 六つの点が、奇妙な形を描いた。


 ……これは。


 俺は、静かに目を細めた。


「……七星陣?」


 セバスティアンも、驚いたように息を呑んだ。


「……確かに」


 六つの地点は、巨大な魔法陣の外周を構成していた。


 そして。


 残る一つの星が置かれるべき場所は、王都の中心部に近い。


 ……まさか。


 俺は、地図へ指を置いた。


「……王城の地下?」


 ◇◆◇


 午前十時。


 王城、国王執務室。


 俺は父アルフォンス、母エレオノーラと共に、国王アレクシス陛下へ報告していた。


「……王城の地下に、古代の祭壇が?」


 国王は、眉をひそめた。


「可能性がございます」


 俺は地図を広げた。


「七つの星を象った古代遺構が、王都周辺に配置されています」


 国王は、静かに地図を見つめた。


「……確かに、妙な配置だな」


 母が、静かに口を開いた。


「陛下。王城の地下には、古い封印区画が残っているはずです」


 国王の表情が変わった。


「……よく知っているな、エレオノーラ」


「昔、魔導院の資料で読んだことがあります」


 母は、穏やかに微笑んだ。


「王都が建設される前から存在していた、古代の地下施設です」


 父が、静かに頷いた。


「……調査が必要だな」


 国王は、しばらく考えた。


 そして。


「……許可する」


 その声は、重かった。


「ただし、王国監察官と近衛騎士団を同行させよ」


「承知いたしました」


 俺たちは、深々と頭を下げた。


 ……よし。


 これで、正式に調査できる。


 ◇◆◇


 午後一時。


 王城地下、旧封印区画。


 長い石造りの階段を下りた先には、巨大な扉があった。


 扉には、七つの星を象った紋章が刻まれている。


 ……やっぱり。


 俺は、静かに息を吐いた。


 母が、扉へ手をかざした。


「……古い封印ね」


「……開けられますか?」


 俺が尋ねると、母は微笑んだ。


「もちろんよ♡」


 銀色の魔力が、扉の表面を走る。


 そして。


 ゴゴゴゴ……。


 巨大な扉が、ゆっくりと開いた。


 その先には、広い円形の空間があった。


 中央には、古い祭壇。


 そして、床一面に描かれた七星陣。


 ……間違いない。


 ここが、七つ目の遺構だ。


「……レオンちゃん」


 母が、静かに声をかけた。


「……何か、感じる?」


 俺は、目を閉じた。


 魔力の流れを探る。


 ……ある。


 微かな魔力が、地下のさらに奥へ続いている。


「……祭壇の下に、別の空間があります」


 父の瞳が、鋭く光った。


「……隠し通路か」


「……おそらく」


 俺は、静かに頷いた。


 そのとき。


 突然、祭壇が淡く光り始めた。


「……っ!?」


 護衛騎士たちが、剣を抜いた。


 母が、すぐに防護結界を展開する。


 そして。


 空中に、一人の女性の幻影が浮かび上がった。


 白い衣。


 金色の髪。


 そして、優しい青い瞳。


 ……七星の守護者。


 リーベル村の祠で見た幻影と、同じ姿だった。


『……黒き星を宿す少年よ』


 女性は、静かに俺を見つめた。


『……ついに、ここまで辿り着きましたね』


 俺は、静かに頷いた。


「……あなたは、何者ですか?」


 女性は、少しだけ微笑んだ。


『……私は、古代七星文明の記録を守る者』


 そして。


『……この場所は、魂を縛るために作られたのではありません』


 俺の瞳が、わずかに動いた。


「……では?」


『……魂を解き放つための場所です』


 ……なるほど。


 俺は、静かに目を細めた。


 黒幕は、この施設を逆の目的で利用しようとしているのか。


『……ですが、すでに闇の術式が侵入しています』


 女性の声が、少しだけ低くなる。


『……七星の封印が、破られようとしているのです』


 その瞬間。


 祭壇の奥から、黒い光が漏れ始めた。


 ◇◆◇


 同じ頃。


 王都中央聖堂。


 エリシア・フィオーレは、礼拝堂で祈りを捧げていた。


 昨日、リーベル村で見た幻影。


 七星の守護者。


 そして、自分の失われた記憶。


 ……私は、何者なのでしょう。


 彼女は、胸元へ手を当てた。


 ペンダントは、今は聖堂の保護結界内に保管されている。


 だが。


 それでも、胸の奥に奇妙な感覚が残っていた。


 そのとき。


「……エリシア様」


 背後から、修道女が声をかけた。


「……はい?」


「……こちらへ、お越しいただけますか?」


 エリシアは、振り返った。


 そこには、見覚えのない修道女が立っていた。


「……どちら様でしょう?」


 修道女は、静かに微笑んだ。


「……聖堂の古文書管理を担当しております」


 そして。


 小さな封筒を差し出した。


「……あなたの出生について、わかったことがございます」


 エリシアの瞳が、大きく見開かれた。


「……私の、出生?」


「……はい」


 修道女は、静かに頷いた。


「……どうか、こちらへ」


 エリシアは、しばらく迷った。


 だが。


 彼女は、ゆっくりと首を振った。


「……申し訳ありません」


 修道女の表情が、わずかに変わった。


「……なぜです?」


「……私は、正式な記録を確認してから動くと決めています」


 エリシアは、穏やかに微笑んだ。


「……それに、レオンハルト様にも相談したいので」


 その瞬間。


 修道女の瞳が、冷たく光った。


「……残念です」


 次の瞬間。


 彼女の袖から、黒い魔石が現れた。


「……っ!?」


 エリシアが、咄嗟に後退する。


 だが。


 黒い光が、礼拝堂全体へ広がった。


 ◇◆◇


 王城地下。


 俺は、突然胸の奥に走った違和感に顔を上げた。


 ……何だ?


 遠くから、何かが呼んでいる。


 ……エリシア?


 その瞬間。


 七星の祭壇が、激しく光った。


『……始まりました』


 守護者の幻影が、静かに告げた。


『……闇の者たちが、聖女を狙っています』


 俺は、拳を握った。


「……父上!」


「……わかっている」


 父の瞳が、鋭く光った。


「……エレオノーラ!」


「ええ!」


 母は、すぐに転移魔法を展開した。


「……レオンちゃん、行くわよ!」


「……はい!」


 俺は、静かに頷いた。


 ……エリシア。


 必ず、助ける。


 ――七星の祭壇が目覚めたとき、黒幕の仕掛けた罠もまた動き始めていた。

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