↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役公爵令息レオンハルト』  作者: 覇王が好き
第二章・王立学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
101/390

第101話 銀月の断罪――逃げ道なき証拠と崩れ落ちる仮面

第101話 銀月の断罪――逃げ道なき証拠と崩れ落ちる仮面


王国暦八二一年、秋月二十五日。


王城、緊急王国審問会議。


「……少し、興味深い証拠が見つかりましたの」


母上エレオノーラ・ヴァルディスの声が、静かに響いた。


その手には、一つの魔導結晶。


銀色の光を放つ、小さな結晶だった。


「……それは?」


司法卿が、尋ねた。


母上は、優しく微笑んだ。


「……昨日の演習で使用された魔導装置の記録です」


……沈黙。


ユリウス・ファルケンハインの表情が、わずかに変わった。


「……記録は、一部消失していたはずですが」


母上は、頷いた。


「……ええ」


そして。


静かに続けた。


「……ですが、完全には消えていませんでした」


その瞬間。


ユリウスの瞳が、鋭くなった。


     ◇


「……レオンちゃん」


母上が、俺を呼んだ。


「……はい」


俺――レオンハルト・ヴァルディスは、一歩前へ出た。


「……リゼットさんと一緒に復元した記録を、皆様へ見せてあげて」


「……分かりました」


俺は、右手を上げた。


「《神光・創世聖柱》」


黄金の光が、魔導結晶を包み込む。


次の瞬間。


空中に、巨大な立体映像が浮かび上がった。


そこには。


第五演習区域の魔導装置。


そして。


三つの区域を結ぶ、魔力回路。


「……これは……!」


重鎮たちが、息を呑んだ。


俺は、静かに説明を始めた。


「……この装置は、本来、三つの区域を独立して管理する仕組みでした」


「……独立?」


「はい」


俺は、頷いた。


「……ですが、事件当日、三つの装置が互いに接続されていました」


その瞬間。


立体映像に、赤い線が浮かび上がる。


森林区域。


岩山区域。


地下区域。


三つの地点が、赤黒い魔力線で結ばれた。


「……誰かが、回路を書き換えたということか?」


司法卿が、尋ねる。


「……その可能性が高いです」


俺は、答えた。


「……そして」


右手を動かす。


映像が、拡大された。


「……この部分」


そこには。


安全停止術式を迂回する、細い魔力回路が存在していた。


「……本来なら、異常が発生した時点で装置は停止するはずでした」


……沈黙。


「……ですが、この回路があったため、停止しなかった」


国王が、眉をひそめた。


「……つまり」


「……はい」


俺は、静かに答えた。


「……誰かが、安全装置を無効化した可能性があります」


     ◇


「……異議があります」


ユリウスが、静かに口を開いた。


「……何だ?」


司法卿が、尋ねる。


「……その回路が、意図的に作られたものだという証拠はありますか?」


……なるほど。


そこを突いてきたか。


俺は、静かに頷いた。


「……確かに、今の映像だけでは断定できません」


ユリウスの口元に、わずかな笑みが戻った。


だが。


その瞬間。


母上が、静かに微笑んだ。


「……ええ」


そして。


机の上に、もう一つの魔導結晶を置いた。


「……だから、こちらも用意しましたの」


……っ!?


ユリウスの表情が、固まった。


母上は、静かに続けた。


「……これは、演習開始前の術式記録です」


「……開始前?」


「……ええ」


母上は、頷いた。


「……レオンちゃんたちが見つけた記録とは、別の保管庫に残っていたものです」


その瞬間。


空中に、二つの立体映像が並んだ。


一つは、演習開始前。


もう一つは、事件発生時。


そして。


二つの映像の違いが、明確に浮かび上がった。


「……っ!?」


司法卿が、息を呑んだ。


「……安全停止術式が、書き換えられている……!」


母上は、静かに頷いた。


「……その通りです」


     ◇


「……クラリッサ・ベルモンド」


母上が、静かに名前を呼んだ。


「……はい」


クラリッサが、一歩前へ出た。


その顔は、青ざめていた。


「……あなたは、今回の演習の記録管理を担当していましたね?」


「……はい」


「……では、この記録について説明できますか?」


クラリッサは、しばらく黙っていた。


そして。


「……できます」


静かに答えた。


ユリウスの表情が、わずかに変わった。


「……クラリッサ?」


だが。


彼女は、ユリウスを見なかった。


「……私は、演習開始前の術式記録を保管していました」


……沈黙。


「……そして、前回の異常反応が発生した後、安全管理の再確認を求めました」


司法卿が、頷いた。


「……その記録は?」


「……こちらです」


クラリッサは、書類を差し出した。


そこには。


安全管理上の懸念。


追加演習の延期提案。


そして。


運営責任者への報告記録。


すべてが、記されていた。


「……なるほど」


司法卿が、静かに呟いた。


「……つまり、危険性は事前に報告されていた」


「……はい」


クラリッサが、頷いた。


「……ですが、演習は実施されました」


その瞬間。


ユリウスの笑顔が、完全に消えた。


     ◇


「……ユリウス・ファルケンハイン」


父上アルフォンスが、静かに口を開いた。


「……はい」


「……貴様は、この報告を受けていたのか?」


ユリウスは、唇を噛んだ。


「……はい」


……沈黙。


「……それでも、演習を実施した?」


「……はい」


父上は、静かに頷いた。


そして。


「……なぜだ?」


その声は、低かった。


ユリウスは、しばらく黙っていた。


そして。


「……競技会の準備日程を優先したためです」


静かに答えた。


その瞬間。


レオナード叔父上が、笑った。


「……日程?」


……。


「……俺の娘が、血を吐いて倒れた理由が」


叔父上の声が、震えた。


「……日程だと?」


ユリウスは、何も答えられなかった。


「……ふざけるな」


叔父上が、低く呟いた。


その瞬間。


会議室の空気が、震えた。


「……俺の娘の命より、大事な日程があるのか?」


……沈黙。


誰も、声を出せなかった。


     ◇


「……次に」


母上が、静かに口を開いた。


「……魔導装置を起動した人物についてです」


その瞬間。


アルベルト・レイフォードの顔が、青ざめた。


母上は、彼を見つめた。


「……アルベルト君」


「……は、はい」


「……あなたは、事件当日、森林区域の魔導装置へ接近しましたね?」


「……っ!」


アルベルトが、息を呑んだ。


「……なぜ、それを……」


母上は、静かに微笑んだ。


「……魔力の痕跡が残っていましたの」


その瞬間。


空中に、アルベルトの魔力署名が浮かび上がった。


「……これは……!」


司法卿が、驚いたように声を上げた。


「……装置に、アルベルトの魔力が……!」


アルベルトは、拳を握った。


「……僕は……」


「……何をしたの?」


母上が、静かに尋ねた。


アルベルトは、しばらく黙っていた。


そして。


「……魔力増幅術式を、使いました」


……沈黙。


「……何?」


司法卿が、眉をひそめた。


「……なぜ、そんなことを?」


アルベルトは、唇を噛んだ。


「……レオンハルトに……」


……。


「……レオンハルトに、勝ちたかったんです!」


その声が、会議室に響いた。


俺は、静かに彼を見つめた。


……そうか。


やっぱり、そうだったのか。


     ◇


「……アルベルト」


俺は、静かに口を開いた。


「……何だ」


彼が、俺を睨んだ。


「……俺に勝ちたかったのか?」


「……そうだ!」


「……なら」


俺は、真っ直ぐに彼を見つめた。


「……俺に挑めばよかっただろ」


……沈黙。


「……俺は、逃げなかった」


アルベルトの瞳が、揺れた。


「……でも」


俺は、静かに続けた。


「……シャル姉とルシウスは、関係ない」


その瞬間。


背後に、小さな黒い星が浮かび上がった。


「……二人は」


俺は、低く呟いた。


「……お前の嫉妬のために、傷ついていい人間じゃない」


アルベルトの顔が、歪んだ。


「……っ!」


「……俺は、お前を何度も助けた」


俺は、静かに続けた。


「……それを、恩に着せるつもりはない」


……。


「……でも」


俺は、拳を握った。


「……今回のことだけは、絶対に許さない」


その声は、静かだった。


だが。


アルベルトは、何も言い返せなかった。


     ◇


「……グレゴール・ハインツ」


母上が、次の名前を呼んだ。


「……何だ」


グレゴールが、低く答えた。


「……あなたは、アルベルト君が魔導装置を起動したことを知っていましたね?」


「……ああ」


「……では、なぜ、すぐに停止させなかったの?」


「……止めようとした!」


グレゴールが、叫んだ。


「……だが、止まらなかったんだ!」


母上は、静かに頷いた。


「……そう」


そして。


「……では、その時点で、誰へ報告したの?」


グレゴールが、唇を噛んだ。


「……ユリウスだ」


……沈黙。


母上の瞳が、鋭くなった。


「……なるほど」


彼女は、静かに微笑んだ。


「……つまり」


「……?」


「……異常を知った時点で、学園の緊急停止権限を持つ教師ではなく、運営委員長へ連絡したのね」


グレゴールの顔が、青ざめた。


「……っ!」


「……なぜかしら?」


……沈黙。


誰も、答えられなかった。


     ◇


「……ユリウス・ファルケンハイン」


母上が、静かに口を開いた。


「……はい」


ユリウスが、顔を上げる。


「……あなたは、今回の演習を企画した」


「……はい」


「……安全管理の不備を知っていた」


「……はい」


「……そして、異常発生の報告も受けていた」


「……はい」


母上は、静かに頷いた。


「……では」


その瞳が、冷たく輝いた。


「……なぜ、すぐに演習を中止しなかったの?」


……沈黙。


ユリウスは、唇を噛んだ。


「……それは……」


「……答えて」


母上の声が、低くなる。


「……私の大切な家族が、血を流している間」


……。


「……あなたは、何をしていたの?」


その瞬間。


ユリウスの顔から、血の気が引いた。


     ◇


「……陛下」


父上が、静かに口を開いた。


「……何だ、アルフォンス」


「……これで、十分でしょう」


国王は、しばらく黙っていた。


そして。


「……ああ」


静かに頷いた。


「……今回の事件は、単なる事故では済まされぬ」


……沈黙。


「……安全管理の不備」


「……術式の無断使用」


「……記録の消失」


「……そして、重大な負傷者」


国王の声が、厳しく響いた。


「……すべて、徹底的に調査する」


その瞬間。


父上が、一歩前へ出た。


「……陛下」


「……何だ?」


「……我がヴァルディス家は」


父上の声が、低くなる。


「……この件に関与した者たちの背後関係も、調査いたします」


……沈黙。


「……ファルケンハイン家」


「……ハインツ家」


「……ベルモンド家」


父上は、一つずつ名前を告げた。


「……そして、関係するすべての者」


その瞬間。


会議室の空気が、凍りついた。


「……罪を犯した者は、身分に関係なく裁く」


母上が、静かに続けた。


「……証拠を隠した者も」


レオナード叔父上が、低く呟いた。


「……責任を逃れようとした者も」


そして。


イザベラ伯母上が、最後に告げた。


「……誰一人、見逃しません」


……沈黙。


誰も、声を出せなかった。


その日。


王国貴族社会を支えてきた三つの名門貴族家は。


自分たちの足元に、巨大な亀裂が走り始めたことを。


まだ、理解していなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。