表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泣き虫吸血鬼は最後の恋をする〜ミイラを拾って水(血)をやったら超絶イケメンになりました〜  作者: 甲野 莉絵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/66

64話 決戦3

 レイラが振り返った瞬間、蒼はポケットから出していたスマホを向け、懐中電灯をつけた。


 レイラは俺とフィンリーに夢中になっていたせいか、蒼を侮っていたのかは分からないが、蒼が密かに爪を研いでいた事に気付かなかったらしい。


「ギ、ギャァッーーー!!! 目がぁっ……!!」


 超至近距離で懐中電灯の目潰しをくらったレイラは、反射的に両手で目を押さえた。すかさずフィンリーが銀の短剣を手に飛び起き、スマホの明かりを頼りに強く床を蹴る。


 まるで弾丸のようにレイラの懐へ突っ込み、胸ぐらを掴むと、勢いそのままに押し倒した。攻撃を外した時のことは度外視した動きだ。


 しかし完全に反応が遅れたレイラには、フィンリーのありったけのスピードと体重が乗ったタックルを、避ける事も振り払う事も出来なかったらしい。


「チェックメイトね」

 

 フィンリーは目をギラリと光らせ、掌で肩を、膝で鳩尾と焼け爛れて無い方の腕を押さえつけ、レイラの動きを封じた。


「――蒼っ!」

 

 解放されてその場にへたり込み、ゼーハーと荒い呼吸と咳をしていた蒼に駆け寄り、背中をさすった。


「どこかおかしい所とか無いか? 大丈夫かっ? …………大丈夫じゃないな。俺が放っておいたせいで、辛い思いをさせてすまなかった」


「いっ……いいえ、確かに苦しかったけど……譲っ二さんなら気付いて……助けてくれると信じていたから」


 蒼は息を整えながら掠れた声でそう返す。首元の痣が見てて痛々しい。


「だけどもっと早く目潰しする事だって出来ただろ?」


「あれ……が最高のタイミングだったでしょ? レイラがちょうど良くフィンリーさんを……連れて来いって言うから。渡りに船だと思って」


「もっ、もしもの事があったらどうするんだ! 無理しないでくれよ」


「ね、ねえ……譲二さんは自分の傷を気にした方が良いんじゃない?」


 息を呑み、俺の腹の傷に手を伸ばす蒼を慌てて遠ざける。


「俺の血には触らない方が良い。こんなの擦り傷だ。それより蒼はもう少し自分を大切にしてくれ……」


「その言葉、そっくりそのまま返すわ」

 

 ……この様子だと、俺がどれだけ心配したか伝わってないな。蒼に向かって手を伸ばしかけた時、横からフィンリーとレイラの呻き声が聞こえた。


「さっ、刺さらないっ!」


「クッ……人間ごときの力で私を殺せる訳がなかろう」


 フィンリーはレイラの右胸に銀の短剣を突き立てようとしている。だがレイラが大火傷を負った手で短剣を止めていた。両者の力は拮抗しているように見える。


「フィンリーさん、手を貸しましょう」


 銀の短剣の柄を握るフィンリーの手を上から押さえる。レイラはゆっくりと刺さっていく銀の短剣と俺の顔を交互に見ながら苦笑いした。


「こ、婚約者だろう、助けてはくれぬのか? 何でもするぞ?」


「何を今更。お前が蒼に手を出さなければ助けたかもしれないな」


 レイラは口の端から血を垂らしながら俺を疑念の眼差しで見る。


「……お主は本当にあのジョージなのか? まるで人間のように振る舞い、愛を知ったと言わんばかりに一人の女へ固執して……」


「そうだ。俺はお前が知っているジョージではない」


 お前が今こうなっているのは、それに気付けなかったからでもあるだろう。フィンリーの手の上から短剣の柄に力を込め一気に押し下げた。レイラが耳をつんざかんばかりの断末魔の叫びをあげる。


 短剣の切先がレイラの体を突き抜け、床に当たる感触が手に伝わると同時に、それまでモゾモゾと動いていたレイラの動きが鈍くなり始めた。


 そして徐々に生気がなくなっていく。肌がくすみ、張りが無くなり皺が寄り、眼窩や頬が落ち窪む。呻き声もしわがれ、髪の色が褪せて行き、あっという間に干からび、息絶えていた。


 フィンリーも驚いてると言う事は普通こうはならないんだろう。たぶん蒼にかけた呪いが、術者であるレイラが死ぬ事で倍になって戻ったんだ。もしくは、体内に残っていた銀成分が原因かもしれない。


 デボンを鎖から解放しに行こうと立ち上がると、レイラの虚に見開かれた目と目が合った。もう何も写さなくなった目を手でそっと閉じる。


 デボンは鎖を解いてやると、レイラの亡骸へ駆け寄った。だがあまりの変わりように膝をつき、茫然とした様子だ。レイラの体から降りたフィンリーが短剣へ再び手を伸ばす。


「もう抜いてしまって大丈夫なんですよね? 復活したりしませんか?」


「ええ、確実に生命活動が止まってれば問題無いわ。それにこの短剣はあの子のお墓に供えてあげたいの。その時は一緒に来てくれるかしら?」


「はい。リチャードも見てますかね?」


「どうかしら? 今頃はレイラ コリンズを指さして笑うので忙しいかもしれないわよ?」


 蒼がスマホを見てそろりと手を挙げた。


「あのー、もうすぐ人が起きだす時間になります。誰かに見つかる前に帰りましょう?」


 確かに。この時期は日の出が遅いから暗いうちから動きだす人も多い。俺達のボロボロな格好は人目につかない方が良さそうだ。


「ええ、協会に見つかる前に逃げた方が良いわね」


「ですがレイラの亡骸は放っておいて大丈夫なんですか? それにあいつは?」


「協会が対処するわ。今はそっとしておきましょう。この先レイラ コリンズが目覚める事は無いんだから」


 倉庫の出口でフィンリーと別れ、俺と蒼は手を繋ぎ(日常)へ帰った。

お読みくださりありがとうございます。

次回、第65話ではひと段落ついた2人に、ようやくロマンスの予感が──? 6/17、09:25頃投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ