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5話 聖女降臨! 今日の神様は『食べログ』星3.5

 騎士団を撃退した俺達は、『新緑の聖域』で採れた新鮮野菜を 近隣の集落に宣伝も兼ねて訪問販売しているうちに、『真理の神殿』という場所に一人の少女が囚われているという噂を耳にした。


「なんでも、その子……ミコトちゃんていうらしいんだけどね、ある日突然、神様のお告げが聞こえるようになったんだって。で、それを聞きつけた新興宗教団体がミコトちゃんをかっさらって、『真理の神殿』とかいう怪しい場所で夜な夜な何かやってるみたいなのよ」


 採れたて野菜の定期購入契約を結んだ主婦の一人が、事情を詳しく教えてくれた。他の定期購入契約者からも情報を受け取り、俺達は『真理の神殿』とやらに乗り込むことにしたのだった。


 『真理の神殿』――傍目には ぽつんと一軒家的な、人けのない山中に建つ少し大きな古屋敷といった様相をしていた。警備はなく、恐る恐る中に入ってみると、そこはすでに大広間だった。

 真っ昼間だというのに黒いカーテンで薄暗くなった広間の中心では、怪しげな司祭たちが少女を囲み、天啓を授かろうと謎の儀式を行っていた。


「おお、神よ! 我らに次なる導きを……!」


 祭壇にちょこんと座る少女――彼女がミコトだろう――は 虚ろな目で虚空を見つめ、徐ろに口を開いた。


「……神様が降臨なさいました。今日の神様は……デデン! 『食べログ』様です。真実のグルメを司りし神様です」


 食べログだと!? 間違いない。前世の日本では 八百万の神々の中でも最も人々の生死を左右していた、審判の神だ。低評価の天罰が下れば、その店は跡形もなく消滅してしまうと語り継がれる、恐ろしい神のはず。その存在を知っているということは……!!

 俺は確信した。彼女もまた、俺と同じ現代日本の記憶を持つ『預言者』に違いない。

 忍び込んだ俺たちに気づく様子もなく、司祭の一人が震えながら問う「た、食べログ様は 何と……!?」。


「神は仰っています……この教団の戦闘力、星1.2、と。戦闘力、たったの星1.2ですか。ゴミですね。接客もてなしの心も 清潔感(信仰心)も感じられません。おまけにメニュー数(祭壇)がショボすぎます。再訪はあり得ません。……爆破推奨、とのことです」

「なっ……!?」


 少女ミコトの紡いだ言葉に絶句する司祭たち。良い頃合いだ、前世の『カスタマーサポート』で鍛えた威圧感を持って、俺はその場に踏み込んだ。


「そこまでだ、低評価の掃き溜めども! 神のレビューを真摯に受け止められない組織に、存在価値バリューはない!」

「何者だ!?」


 我に返り襲い来る教団兵に対し、俺はミコトに向かって叫んだ。


「君がミコトだな!? 敵の弱点を食べログ神に照会するんだ! 『ワンコインランチ』並の、脆弱なポイントがどこかにあるはずだ!!」

「承知しました。食べログ神の検索結果を共有します。……14件ヒットしました。彼らの陣形は『盛り付けが雑』です。左側面から箸を入れれば、一気に崩壊します。……あ、ちなみに彼らの生命維持コスパは最悪なので、放置しても自滅します」

「了解だ! シノ、聞いてたな? 左側面から盛り付けをかき回してやれ!」

「承知いたした! 盛り付け……すなわち、はらわたの配置をかき回せば良いのでござるな! 十八番でござる」


 シノの剣閃が、レビューに違わず弱点を的確に突いていく。

 虚ろな表情のまま、ミコトは言葉を続けていた。


「星1.2の評価にふさわしい、無様な散りざまでらっしゃいますね。おっと、ここで次の神様がご降臨です。いらしたのは『Yahoo!知恵袋』様ですね。……『質問:このまま全員ぬっ殺しちゃっても大丈夫でしょうか?』……ベストアンサー、出ました『法律(俺)が許すなら、問題ないと思いますよ。ひと思いにやっちゃいましょう!』だそうです」

「よし、ベストアンサーが出たなら 徹底的にやるぞ!」


 こうして俺たちはミコトを救出し(というか、囚われのヒロインに飽きたタイミングで回収し)、仲間として迎え入れたのだった。


 それにしても、引っかかることがある。ミコトのいう『食べログ』のレビューは、俺の記憶では『敵の脳内に、直接 低評価の念を送り込んで 精神を崩壊させる攻撃魔法』だった気がするが……。まあ、きっと解釈の違いだろう。

 俺の記憶の中の現代日本。そこでは『星が3以下の人間は、出歩くだけで塩を投げられる』、過酷な格差社会だった。……うん? いや、そんなはずはないぞ。……はずはない、よな?

 自問自答する俺の隣で、相変わらず宙を見つめながら ミコトがポツリと呟いた。


「……アルマさん、お次は『メルカリ』様がいらっしゃいました。邪教徒の装備品は、送料込みで専用出品できますか?」


 ここまで来て、いよいよ引き返せない領域へと突入している。肌に感じる違和感を振り払い、俺は仲間たちを引き連れ『真理の神殿』を後にしたのだった。

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