Ep85 Chapter“2” Scene“5” Cut“2” Take“1” 各々の思惑は唐突に
「ここかぁ。にへらッ」
志から“青い人”こと、“ココロブルー”のねぐらを聞き出したカレンは、その地へと一人でやって来た。
ちなみにジャスティスファイブの面々は、“職業”戦隊ヒーローだった為、各人の名前や素顔を知らない。
たまたま素顔を見てしまったりとか、パパラッチされて週刊誌などに載ってしまった結果、知ってしまう事はあるが、それ以外で知る方法は無かった。
※非公式な“覗き”を除く
よって、ココロブルーはカレンの素顔も名前も知らない。そして、その逆もまた然りだ。
ちなみにカレンが唯一知っているメンバーの顔は、“チノイロレッド”だけ。彼は過去にパパラッチ被害に遭っているからだ。
「たのもーうッ!」
彼女はそれはそれは景気のいい破裂音と共に、一際騒がしく、一際派手派手しく玄関を蹴破った。崩壊しかけている廃屋の玄関など、彼女にとっては紙切れ同然なのだろう。
そしてカレンはそのまま土足でズカズカと上がり込んでいく。
こうなっては戦隊ヒーローと言うよりは、押し込み強盗のようだがそこを気にしてはいけない。
「あ……れ?誰もいない?ウケるんですけど!
まぁ、ココロブルーだし、引き籠もってる可能性はあるから部屋を一つ一つ探していけば、そのうち見付かるっしょ!にへらッ」
先ずは一階の捜索。だが、誰もいない。ちなみにカレンはついでに金目のモノや食料なんかも探していたが、彼女のお眼鏡に叶うモノは何一つとしてなかったようだ。
どう見ても戦隊ヒーローには見えない――
「にへらッ。ここが、最後の部屋ね。ここにブルーが……いる!」
――ばんッ
「覚悟しなさい!ココロブルーッ!……て、あれ?」
結局、志に聞いた家に、カレンの目当て――“ココロブルー”の姿はなかった。
こうなるとカレンとしては、いてもたってもいられず、我慢が出来なくなる。
要するに、どうしようもなくむしゃくしゃして、地団駄を踏んでいた。
「マジで時間の無駄だったじゃん!こんな事なら、あの店のイケメンに会いに行くんだったッ!
ホントーーーッに、むしゃくしゃするんですけどおぉぉぉぉッ!」
結果――
“しゃららららーん”と軽快で場違いな音が周囲に木霊した後、廃屋は更地と化した。
そして、その様子を隣の家で、見ている“ブルーの瞳”があった事を、彼女は知らない――
「えっ?アレってアタマピンク?なんでこんなところに?
ってか、何やってんだろ?家を壊したりして……。解体業者にでもなったのかなぁ?でも僕、彼女苦手なんだよなぁ……いっつも馬鹿にしてくるし。
だからもしも見付かったら最後だよね。うん、そうそう。関わらないのがイチバン。僕の平穏な引き籠もりライフの為にもそうしよう!
そうなるとどうしようかなぁ……新しい住処を探した方がいいかもなぁ」
この辺りは特に戦禍の爪痕が色濃く残る地域。その結果、初見では確実に迷子になるような景色が広がっている。要するに、見分けの付きにくい廃屋が、まるで迷路のように並んでいるのだ。
――と、まぁ、そんなワケでカレンは、家を間違えていた。よって“ココロブルー”をパシる千載一遇のチャンスを逃した事になる。
そして、この日の夜。“ココロブルー”は、引っ越しする事にした。彼は“ココロブルー”の協力者である、チンピラにしか見えない“彼”と共に、“カレン”に見付からない住処へと移っていったのだった。
まぁそうなると再び、この迷路のような街で“彼”は迷子になるだろうが、志が運良く見付けてくれればそうはならないかもしれない――
―― To the Next Cut ――
「どすこぉぉぉい!なんだな」
「あんちゃん凄げぇな!助かったぜ。また機会があったら頼むわ」
彼が気合いを入れると、重機でも手こずる大きなコンクリートの塊が発泡スチロールのように軽々と持ち上がっていく――
彼は「柚木 大吾」という名を持つ青年だ。そしてここは工事現場。
要するに肉体労働に精を出しているという事だ。
そんな彼は朝八時から、夕方の五時まできっちりと作業をこなし、その日の日当を受け取って自分の“ねぐら”に帰る毎日を送っている。
彼が今、住んでいる街は戦争被害によって、廃墟と化した街。心優しい彼は、その事に心を痛めていたが、それでも腹は減る。人間は食べなければ生きてはいけない。
よってその体躯を維持する為に、工事現場に出入りするようになった。
それは当然の流れだ。
廃墟の街を渡り歩き、その街に積もった瓦礫の山を撤去する仕事。そんな事をする毎日。
大吾は渡り歩いた先で工事現場に押し掛けて、勝手にバイトを始める。そんな彼はどこの現場に行っても一躍人気者だ。
それは彼のパワーが段違いに凄いからだが、それ以上に人柄も大いに関係しているだろう。しかしその実、その桁外れのパワーは、どんなに鍛えようとも本来ならば常人が手に入れられるモノなどではない。
よって、解体業者の間では、瞬く間に有名人になっていた――
―― To the Next Cut ――




