Ep84 Chapter“2” Scene“5” Cut“1” Take“1” 絶滅危惧種は唐突に
――時は随分と遡るように見えて、意外と遡らない。よってこれは、夕樹菜サイドが“果たし状”でわちゃわちゃするよりも前の出来事――
「カレンさん、聞いてもいいですかぁ?」
「なぁに、ミコロっち。アタシのスリーサイズ?それとも好きな体位とか、アタシの性感帯とか?
なになに、ミコロっちも遂に目覚めちゃった感じ?だとしたら、マジで超ウケる!
でもでも、アタシはいつでも準備オッケーだから、いっでもばっちこい!ミコロっちをメロメロにしてア・ゲ・ル♡」
ここは志の家。彼女は朝からミチルに引っ付く事が、いつも通りの日課になっていた。
……が、最近のミチルは更に変わってしまった。それでも少ないながら“ミチル成分”を吸収し、体内の“ミチル値”を上げる事で、なんとか持ちこたえている。
そして、帰り道。例の“彼”とまた出会ってしまったのだ。今回は迷子ではない様子だったが、途中まで方向は同じ。その結果、またまた“小さい先輩”の話しで盛り上がってしまった。
結局、彼の廃屋まで共に歩き、そこでふと思い出したのだ。
“青い人”の存在を――
“赤い人”こと、チノイロレッドの事は「二人だけの秘密」と約束したので、その事はカレンにも伝えていない。
だがその一方で、“青い人”とは何も約束をしていない志は、カレンに知り合いかどうかを聞こうとした……と、言うのが事の発端だ――
「カレンさん、怒りますよぉ!ミコロには、まだ早いですぅ!
それに、そういうのは、好きな人とするものなんですぅッ!」
「うぇッ?! ミ、ミコロっち、アタシのコト、好きじゃ……好きじゃなかった……の?
アタシはてっきり……うっ……うっ……」
突如としてその瞳を潤ませ始めたカレンに対して、志は動揺を隠し切れない。カレンのその大きな瞳にみるみるうちに涙が溜まり、今にも零れ落ちそうにプルプルしていたからだ。
よって、しどろもどろになった彼女は、「あわわ」と金魚のように口をパクパクさせ、今にも泣き出しそうな顔でオロオロと手を彷徨わせていた。
「なぁんてねッ!うっそぴょーん!どう?アタシの演技もなかなかっしょ?
でもでも流石はミコロっち。ミコロっちの反応、マジで神過ぎて超ウケるんですけど!にへらッ」
「もうッ!カレンさんのいぢわるッ!もう、知りませんッ!」
どうやらからかいが過ぎた様子で、志はプクっと完全にふくれっ面になっていた。そんな彼女に対してカレンは、ケタケタと楽しそうに笑っていたのだった。
「それでミコロっち、アタシに何かを聞こうとしてなかった?」
「あっ!そうでしたぁ!カレンさんにお聞きしたいんですけどぉ、言い難い事なら、いいんですけどぉ……」
七変化のようにコロコロと変わる志の表情に、カレンはご満悦だった。その一方で、なにやら神妙な顔付きの彼女に対して、少しばかり緊張していく。
「カレンさんって、“アタマピンク”さんでしたよねぇ?それで、その……なんと言うか……“青い人”って知ってますかぁ?」
カレンとしては、想定外の質問だったに違いない。まぁ実際にシモネタしかアタマの中に入っていないカレンだからこそ、所謂一般的な質問は全てが想定外になるのは当然と言えば当然ではある――が、その“青い人”発言は、カレンの思考を完全に止めに入っていた。
「ミコロっち、その“青い人”って、まさかとは思うけど、“アタマピンク”と同じ鎧を着ていて色が“青い”ってコトぉ?
普通に“青人間”だったら超ウケるんですけど!都市伝説みたいじゃんッ!」
「ミコロも、チラっと見えただけなので、そのアクティブなんちゃらかどうかまでは分からないんですけどぉ。
そのスーツを着ていたなら、カレンさんのお知り合いなのかなぁって」
カレンは仲間を探しているワケではない。いや、正確には一人だけを探している。
そして、その“一人”は“青い人”ではない。しかし、カレンにとって、一番懐柔し易いのは“青い人”と言われればその通りだった。
よって、ソイツを使って、カレンの探し人を見付けようと考えるに至る。
要するにその“青い人”は、カレンにとっての舎弟……というか、パシりのような存在だったからだ。
「そっかそっか!いやぁ、マジウケるんですけど!
そいでねミコロっち。ソイツは多分、“ココロブルー”だと思う。でもでもブルーは、超ド級の根暗で、引き籠もって部屋の隅っこでキノコ栽培してる陰キャだし!
しかも絶滅危惧種の“DT”が過ぎるってゆーか、病原菌みたいな感じィ?
だからミコロっちは絶対に近寄っちゃ駄目!近寄ったら、可愛いミコロっちに“DT”が伝染っちゃうんだからッ!」
「ええぇッ!そぉなんですかぁ?でもそれなら良かったですぅ。まだ、お話しもした事なかったのでぇ。
カレンさん教えて下さって、ありがとうございますぅ!」
カレンは悪っるい笑みを浮かべていた。よって、彼女の矛先がどこに向かうかなど、考えるまでもないだろう――
―― To the Next Cut ――




