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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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Ep71 Chapter“2” Scene“4” Cut“1” Take“4” 恐怖の鬼は唐突に

「先生!なんでここに?」


 驚きながらも安堵したような稜真の顔。血相を変えた表情から一変し、バツが悪そうな夕樹菜の顔。

 そしてそんな中に於いて、表情をハッと一変させ石化(フリーズ)から解けたミチルの頭から、二本のツノが()()()()()()()産声を上げようとしていた――



「なんであーしまで、土下座させられてるんですかぁ?およよよよ」


「黙って座ってろ、梓!こうなったのも、そもそもお前の()()だッ!」


 般若の形相になったミチルは無言のまま、稜真(善次郎)と夕樹菜を()()()()()()()歩を進め、隣の部屋の前まで辿り着いた。

 そして、自分の玄関で鳴った音以上の騒音を叩き出し、夕樹菜の部屋の玄関をそのまま、()()()()無言で蹴破り、()()()()()、ひいては()()()()()足音を踏み鳴らしながらリビングに到達した――



 独壇場を闊歩するが如く進んだ先でミチルは、(メグミ)とご対面したのである。

 (メグミ)はこの時、(ミチル)の部屋で何が起きたのか妄想を膨らませていた――それは“朴念仁”が困り果てているであろう(表情)である。

 自分が学生時代に、体育(コープス)でしか勝てなかった相手(稜真)が――それこそ飄々として生徒会を仕切っていた稜真が、女性問題で困り果てていると思えばこそ、梓が床に笑い転げるには充分だった。

 ……が、二人を引き摺りながら入って来たミチルと目があった瞬間、その剣幕に圧倒され「ヒィッ‼」と小さい悲鳴を漏らし、ガタガタと震え出していた――



 斯くしてミチルは、土下座している三人の目の前で、()()()()夕樹菜の椅子に深く腰を掛けたのである。


「夕 樹 菜さん?コレは一体ど う い う 事ですかッ!なんで、夕樹菜さんが、ミチルの隣の部屋にいるんですかッ!

 この部屋で善次郎さんと、メグミさんが同棲してると思ってたのに、そもそもさっき善次郎さんの事を、違う名前で呼んでましたよね?

 ちゃ あ ん と説明してくれますよ……ね?」


 ミチルのツノは成長を止め、それはそれはもう立派な般若のツノへと変貌していた。だが、その瞳の色は変わっていない。

 例え怒りゲージが“MAX”を振り切っていようとも、虚空から刀を出す事はしないようだ。

 それは偏に、危険を熟知したからこそ、『魔眼(真眼)』の力は二度と使わない……という、意志の現れなのかもしれない。



「そ……その、コレはその……アレ!そうアレなんだ!」


「先生は黙ってて!

 御劔さん、ボクから話させてもらっていいかな?」


 狼狽える夕樹菜を制して稜真(善次郎)が話し掛けたとしても、ミチルの鬼の形相は変わらなかった。

 だが一方でミチルは、夕樹菜では埒が明かないと考えたのだろう。よって、稜真(善次郎)の方にその冷たい視線を向けた。



「なんでしょうか?ぜ ん じ ろ う さ ん。

 ミチルの事をこれ以上、弄ぶんですか?ミチルは……ミチルは、本気で貴方の事を好きになったのに!あんまりですッ!酷過ぎですッ!ミチルの事を騙して、夕樹菜さんとメグミさんと三人で笑ってたんでしょッ!」


 ミチルの瞳は大粒の涙を湛えていた。それは今にも溢れ落ちそうな程だ。そして、その涙に()てられた女性二人は視線を背けていた。

 ……が、稜真だけは彼女(ミチル)の瞳をしっかり見据え、言の葉を紡いでいった。


「ボクの本当の名前は善次郎じゃなくて、稜真。森之木(もりのき) 稜真(りょうま)。ここにいる木之下先生の“元”教え子なんだ。

 騙していて、本当にゴメン」


「それじゃあ、『魔眼』……を?」


 ミチルの質問に彼は無言で頷いた。彼もまた覚悟を決めた様子だ。


「ボク達は、キミを守る為にここにいるんだ。キミの力は先生から聞いた。キミの力を悪用しようとする連中は、キミの事を見過ごすハズがない。

 だから――」

「待って下さい!ミチルは“特別”高校とはもう無関係って、夕樹菜さんから聞いています。それなのに、なんで狙われるんですかッ!」


 ――今の状況では、彼女に何を話しても言い訳になってしまう――


 稜真の中にそんな言葉が浮かんだ。だが、ここで黙ってしまえば更に彼女を傷付ける事になるだろう。


「御劔さん、それは違うよ。ボク達の通っていた“学園”以外にも、“特別”高校は日本各地にあるんだ。そしてそれらは今、全て“国”の管理下に置かれている。

 その全ての“特別”高校と国が、キミの事を見逃したワケじゃないんだ」


「そ……そんな……じゃあ、ミチルが“普通の高校生”じゃいられなくなる可能性も、まだあるって事なんですかッ⁉」

 ――コクッ


 ミチルは椅子の上で、その“ツノ”ごと完全に脱力してしまった。まぁ、それも仕方のない事だ。自分はもう「普通の高校生」として今の高校を卒業出来るつもりでいたのだから。


「だから、キミが卒業するまでの間、少なくてもボクだけはキミを守る。それがボクに出来る償いだ。だから勉強も教える。

 赤点なんかで留年は絶対にさせないから安心して」


「卒業……するまでなんですか?」


 ミチルのその一言に、梓はニヤニヤが止まらない様子だった。そして、そのニヤけ顔を見た夕樹菜は、強烈なエルボーを梓の無防備な横っ腹に入れたのだった――



 ―― To the Next Take ――

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