Ep66 Chapter“2” Scene“3” Cut“6” Take“3” 戦いの決着は唐突に
オナカブラックが呼び出した武器は甲高い音を立て、エネルギーを収束していく。
梢は完全に“万事休す”に陥っていたが、その“瞳”は絶望に囚われていないばかりか、更に色味を増し“黒い人”を睨め付けていた――
――ボソッ
梢が何かを口ずさむ――
「負けを認めるか?認めるなら攻撃を中止して、直ちに解放してやるが?」
――ボソッ
その声は聞き取れない程に小さい――
オナカブラックからの冷徹な声が、甲高い音と混じって不協和音を為していた。
彼が言葉を発する度に、梢の口元は小さく動いていく。しかし、それは彼のセンサーに声として認識されていない。
「時間切れだ。
どうやら、私の“セイギ”が勝ったようだな」
先程まで見守っていた一般人達から、短い悲鳴が上がり始めていた。どうやら彼らも、コレが何かしらの見せ物の類ではなく、命を張った戦いだと気付いたのかもしれない。
――ボソッ
「――は負けません。わたくしは負けられませんッ!わたくしは、小森家長女、小森 梢ですのよッ!」
ギギンッ――
――【緊急事態】アクティブスーツニ、外部カラノ更ニ甚大ナ圧力ヲ確認。ソノ影響デ、スーツノ出力ガ維持出来マセン。ヒーローウェポン及ビ、アクティブスーツノ性能ガ、即時機能ヲヲヲ――
色味を増した梢の瞳が、彼女の叫びと共に強力な力の奔流となって鎧を強襲した。
その結果、二十二世紀の技術の粋を結集した現代のオーバーテクノロジーは沈黙するに至る。
「――なッ?!
まさか、スー」
ドゴッ――
「くぁwせdrftg」
絶対の信頼を寄せる鎧の沈黙。流石にコレばかりは驚愕を隠せなかった。
だが次の瞬間、想像に反して彼の股間には痛烈な衝撃が奔っていった――
梢は拳を握られ、砲門の眼前に晒されて尚、その戦意を喪失する事なく、最後の攻撃に転じたのだった。しかし、彼女は動けない。
その一方で、彼女の“脚”だけは自由だった。だからこそ――必死の形相でスカートをふわりと舞い上がらせ、彼の股間目掛けて高々と蹴り上げたのだ。
――そう、“金的”である。
――これは偏に鎧の機能が万全なら、その優秀な“生命保護機構”と“自己修復機能”で“中の人”はさしたるダメージを負う事はなかっただろう。
だが、今、鎧は機能不全に陥っている。よって“亢進”で強化されまくった梢の金的は、いとも容易く“中の人”へと衝撃を貫通させるに至る。
結果――
「ふんッ!どうやらわたくしの“信念”が貴方の“セイギ”とやらを勝ったようですわね。
これに懲りて、弱い者イジメを金輪際しなければ、今回の件は水に流して差し上げますわ。
それでは――ごきげんよう」
……と、勝ち誇った表情を梢に齎したのだった。
そして彼女は、観衆という名の一般人達に見送られてこの場を後にした。
――アクティブスーツ復旧。オールグリーン。個体名、「志之先 礼」ノ損傷ヲ確認。“生命保護機構”ヲ、緊急モードデ、開始シマス――
――ぱちッ
梢の『義眼』の影響力が失くなった事でアクティブスーツは無事に復旧した。
そしてオナカブラックが意識を取り戻した時、周囲には人だかりが出来ていたのだった。
テレビやSNSで取り上げられ、話題になっていた精巧な“戦隊ヒーローのコスプレ”が目の前にある光景に、興味津々だったのだろう。
だが、彼が目を覚ますと同時にムクッと上半身を起こした事で、人だかりは瞬時に後退していった――
―― Return to Previous Scene ――
――時は少しだけ遡る。
「先生、大変です!」
「どうした、稜真?何が大変なんだ?」
梢を無事に取り込めた事で“孔明”の策の効果を実感した三人は、もう一人の副会長・中森検の攻略について議論していた。
……が、その途中で稜真が驚きの声を上げたのである。
「オナカブラックと、小森さんが、戦ってるみたいです」
「なんだってぇ!
梓!お前の『耳眼』でその様子が聞こえるか?」
この状況では、夕樹菜だけが何も情報を得られない。こうなっては二人が頼みの綱になる。
「あぁ、確かにぃ。梢ちゃんと、腹黒さんが戦ってるみたいですぅ。“セイギ”とか“信念”とか言ってますぅ」
「“信念”?それは梢の『義眼』か。確かに梢の状態次第じゃ、あの『魔眼』は最強クラスだろうからな。
だけど、何故あの二人が?オナカブラックがこの街に来た理由はなんだ?彼は廃墟街で探し者をしていたハズ……。
だが、この状況はマズいな」
夕樹菜は状況が分からないな以上、思考を巡らせるしか出来ない。だが、この状況は非常に危険だった。
「せんせぇ、何がマズいんですかぁ?あーしは、マズいご飯よりも、美味しいご飯がいいですぅ」
「森園さん!今は集中して情報を集めよう!」
梓を制した稜真に対して、夕樹菜はGJと思っていた。……が、その表情は途轍もなく険しい。
だからこそ彼は勘付いたワケだが、その事を梓には伝えず彼女を誘導し、そのまま部屋から廊下へと出て行く事を選択したようだ――
―― To the Next Take ――




