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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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Ep65 Chapter“2” Scene“3” Cut“6” Take“2” ヒーローウェポンは唐突に

「ヒィ、逃げ――」

「逃さんッ!」


 オナカブラックは散り散りに逃げ出していった不良達に対して、目にも映らない速さで先回りして投げ飛ばしていく。

 こうして出来上がったのは、恐怖に怯える不良達の文字通り“山”だった。そう、うめき声を上げる肉の山……である。


「さて、話しを聞かせてもらおうか?」


 手をボキボキと鳴らしながらオナカブラック()は、ゆっくりとその“山”に向かって歩を進めていた。

 しかし、彼にとって思いもよらぬ邪魔が入る事になる――



「解せんな。何故邪魔をする?ソイツらは貴殿を(かどわ)かそうとした連中だぞ?」


「わたくしは、()()()()()()()――()()()ですの。そしてこれ以上はただの暴力ではなくて?

 そんなのは()()()()()のする事ではないのではありませんこと?

 それとも、貴方のはただの()()()()かしら?」


 梢は解っている。この“黒い人”がコスプレなんかではない事を。先程、いとも容易く不良達を()()()あの動きが、コスプレ一般人ではない事の証明だからだ。

 しかしその一方で、自分の信念を曲げるワケにはいかない。それが例え、自分を攫おうとした者達でも……だ。


「正義の味方……か。だが惜しいな。我らジャスティスファイブは、“セイギの味方”――己が信ずる“セイギ”のみに従い、悪を倒す。

 邪魔をするなら、貴殿も(“悪”)と見做し排除するが構わないな?」


 オナカブラックの威圧は凄まじい。それはもはや一般人(モブ)でも分かる程の“殺気”だった。

 よって周囲に集まり始めている一般人(モブ)達は一言も発せず、握り締めたスマホを向ける事なく固唾を飲んで見守っていた。


「貴方の言う“セイギ”がどんな“セイギ”か知りませんことよ。でも、貴方がそのつもりなら、わたくしだって、曲げられない“信念”がありますわ。

 ……宜しいでしょう、お相手して差し上げます。その仮面、わたくしが剥がして衆目に晒して差し上げますわ。

 ――吠え面が見ものですわね」


 オナカブラックにも負けずと劣らない梢の冷徹なまでの視線。そして、彼女の瞳は深い橙色から朱色(バーミリオン)へと変化していった。


「(ほう?『魔眼』か。彼らは三人掛かりで、この(アクティブスーツ)に打ち勝った。だがこの女性は一人。どうなるか見ものだな)面白い。剥がせるモノなら、剥がしてみせよッ!」


 ――ギンッ


 ――【警告】アクティブスーツニ、外部カラノ甚大ナ圧力ヲ確認。“自己修復機能”及ビ、スーツノ出力低下ガ見込マレマス――


 梢の瞳が怪しく輝いた瞬間に、スーツの中に流れる警告(メッセージ)。そしてそれは、三人掛かり(夕樹菜達)の時よりも内容が遥かに重たかった。


「参りますわ……よッ」

 ――ドンッ


 それは梢から繰り出された強烈な一撃。そしてその強烈な肘打ちは深くオナカブラックの腹を抉り、スーツが軋む音を響かせていく。


  ――アクティブスーツニ損傷ヲ、確認。“自己修復機能”ヲ、開始シマス――


「どうですの?効きますでしょう?暫くは立つのも――ッ?!」


「確かに効いた。

 だが……ヌルいな。貴殿の“信念”とやらはその程度という事だな?」



 ――梢の『魔眼』。その名を『義眼』という――


 ――これは彼女の“信念”に大きく影響される。その効果は抑制と亢進(こうしん)

 即ち、梢の“信念”に反しない限り相手には、大幅な抑制(デバフ)効果が発生し、自身には強力な亢進(バフ)が入る事になる――



「強がりをッ!」


 梢のラッシュがオナカブラックへと繰り出されていく。その音は、打撃が繰り出され抉った後で鳴り響いていくほどの“速さ”と“重さ”を持っていた。

 そんな彼女は自分が着ている衣服がスカートだろうと関係なく繰り出していく。

 その一撃一撃は重く、オナカブラックの警告はその量を増していった――



 ――パシッ

「――ッ?!」


「仕方あるまい。コレだけは使いたくなかったが……。

 セット!アルティメットキャノン」


 ――しゃららららーん

 ぼわんッ――


 決死の連打が続く中、梢の拳を掴んだオナカブラックは、自身の(アクティブスーツ)に格納されている武器(ヒーローウェポン)を呼び出す事にした。

 ……が、その反面、周囲には緊張感を一気に脱力させるような軽快な音が木霊していく。


 一方でその音とは裏腹に、オナカブラックの肩には二門の砲門が出現した。

 そして、梢の顔は驚愕に歪んでいった。


「素手で戦うわたくしに武器まで向けるとは、やはり貴方の言う“セイギ”では、わたくしの“信念”には勝てないと悟ったという事の証明ですわね?」


 今まで、稜真以外に負けた事がない梢は、自分の(『魔眼』)に絶対の自信を持っている。だからこそ、強がりでも虚勢を張ってでも、自分の“信念”を失うワケにはいかない。


「私の“セイギ”は――“精技”だ。精神の果てまで私が私である限り、私の“セイギ”は負けん」


「無茶苦茶ですわよ?それに、“異端”が過ぎるって言われませんこと?」


 砲門は梢の頭と同じくらいの大きさがあり、それが自分の眼前にある。拳を握られている以上、梢に逃げ道は……ない。

 このまま武器(ヒーローウェポン)が火を噴けば、梢の命は跡形もなく刈り取られるのは明白だった――



 ―― To the Next Take ――

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