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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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Ep63 Chapter“2” Scene“3” Cut“6” Take“1” 胸を貸すのは唐突に

 梢は歩いていた。迎えの車には帰ってもらった。普段なら行きも帰りも、運転手付きの車で移動する事が多い梢だが、今日は何やら自力で帰りたい気分だった。


 街の雰囲気には似つかわしくない梢を、振り返る人は多い。だがそんな視線を気にして踊らされる梢ではない。


「まったく、こんな事になるなんて……思いもしませんでしたわ。

 あの木之下先生があそこまで熱くなられていたなんて……」



 ―― Return to Previous Cut ――



「ダシにはしてないさ。稜真もこちら側だ。

 だが、彼以外には梓しかいない。圧倒的に戦力不足だ」


「えっ?ま……まさか、“学園”とは……」


 夕樹菜は黙って頷いた。梢の口からは「信じられませんわ」と、侮蔑にも似た言葉が漏れ出していた。


「戦争に巻き込まれ、この国は変わってしまった。そしてそれは“学園”も同じ。

 梢、私はな、この戦争を終わらせたい。仮に終わらせられなくても、卒業生達が巻き込まれているこの現状を打開したい」


 梢の顔に驚愕が浮かんでいた。それは、彼女が知らない事実だったからだ。

 「()()()()()()()()()()()()()」その表情から夕樹菜は察した。


 夕樹菜は一度だけ梢の父・楓梢と面会した事があるが忘れようのない男だった。

 あの男なら娘にその手の情報が渡らないように仕組んでいても可怪しくない。留学先で平穏無事に過ごせるよう、日本の事は最低限しか伝えてないのだろう。


「冗談ではありませんわッ!わたくしにその片棒を担げと、おっしゃいますの?

 わたくし、こう見えてまだ学生ですのよ?」


「確かにな。だから強制はしない。“学園”とは何の関係もない組織。事が成し遂げられる前に“国”や“学園”に目を付けられたらそれでオシマイ。分が悪い賭けだ。

 だがな、私には教師としての矜持がある。卒業生達が消息不明にさせられている現状を、絶対に見過ごす事は出来んッ!」


 夕樹菜の瞳に宿る意思を梢は見た気がした。確かにあの時(学生時代)と何一つ変わらない、生徒に向き合う熱い眼差しがそこにあった。


「……。……はぁ……。

 条件がありますわ。宜しくて?」


 梢の気持ちは固まりつつあった。だが、無条件での参加というのは些かプライドが許さない。あんなメールで焚き付けられて呼び出されたと考えれば尚更だ。


「わたくし留学先への休学は、お父様から一年間だけと言われておりますの。それでその間に会長を、振り向かせる(倒す)事が目的ですわ。

 それを認めて頂けるのでしたら、日本にいる間だけは手伝って差し上げても宜しくてよ」


「はっはっはっ。()()()()()と来たか。まぁそれが()()()()()()()()「倒す」かは知らんが、好きにすればいい。せっかくだ、私が機会を作ってやってもいいぞ?

 梢に()()()()稜真(朴念仁)を見てみたいモノだからな」


 梢は少しだけムッとしていた。「バカにされている」とでも感じたのだろう。だが、夕樹菜が賛成するばかりか、「機会を作ってやる」の発言には正直驚いた。

 学生時代、稜真は夕樹菜のお気に入りだと思っていたからだ。要するに彼女(夕樹菜)は梢の恋敵だった。しかしそれが味方に回ると言うのであれば、梢にとって頼もしい事この上ない。

 口が軽過ぎる梓が味方になるより、申し分ない――



「さて、久し振りに見た梢はどうだった?」


「やはり“孔明”の異常さが際立ちましたね。“孔明”の「ボクらが隠れている事を悟った事」も凄かったですが、ここまで読み通りに事が動くと少し怖いくらいです。

 ところで、ボクは小森副会長に()()()()()()()()()なんですか?」


 三人は以前、“孔明”に対して行った事を今回も梢にやった。だが梢はこの場に“愛しの会長(稜真)”がいた事に気付かなかった。

 そればかりか、その“孔明”が話した“策”通りに進んでいく事態に、稜真は打ち震えていたとも言える。

 だがその一方で、そんな稜真の質問に対する答えは、意外な場所から飛んで来たのだった。


「梢ちゃんはぁ、倒すって言ってたからぁ、()()()()()()()()()()いいんじゃないかなぁ?」


「森園さん?何を言ってるの?「倒す」と「押し倒す」じゃ、意味が違い過ぎるでしょ!」


 突然の意味深な梓の発言に稜真は、()()()()返していた。その反応に梓は「これだから朴念仁(ぼくねんじん)は……ふぅヤレヤレ」と、無言アピールを夕樹菜に向けていく。


「稜真!梓のその案も案外面白いかもしれんぞ?校則にも書いてあっただろう?


『――学生の本文は勉学であり、質実剛健な肉体に精神は宿る。しかし、勉学のスパイスとして恋愛をするのであればハメを外し、ハメなければ良いものとする――』


 ってな。だから若人よ、いっちょ梢に胸を貸さずに揉んでこい!」


「先生まで、何を言い出すんですか。

 まぁ、下らない話しは置いといて次は中森君と、大森君ですね。二人の居場所は突き止められているんですか?」


 女が男にするセクハラの方が、露骨過ぎてエゲツないとはよく言ったモノだ。しかし彼は臆面にも出さず話しを戻す事にした――



 ―― Return to Previous Scene ――

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