表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/93

Ep59 Chapter“2” Scene“3” Cut“3” Take“1” お嬢様の怒りは唐突に

「やっと着きましたわね。久し振りの日本ですわ。

 さて、お迎えはどちらにいらしてるのかしら?」


 とても日本人とは思えない容姿をしている女性が、第二新東京国際空港に降り立った瞬間だった――


 その髪色は暗めのプラチナブロンド。瞳の色は深い橙色――


 ()()()()なら、「髪を染めて、カラコンを入れた日本人」で通用するかもしれない。だが、問題はその先の“容姿”だ。

 先ずは髪の毛。前髪は左右にある髪束がクロスしている。そして一際目を引くのが前髪のその左右にある、通称“お嬢様ドリル”と呼ばれる縦ロール。続けてサイドにはキメ細かく編み込みの“層”が成されている。後ろ髪はサラサラストレートの、腰まであるスーパーロング。

 更に、着ている服も含めて“更なるその先”がこれまた凄い。


 中世貴族を思わせるような黒く、光沢のある“Aラインドレス”をベースにした、“エージェントスタイル”のような服装。

 纏ったオーラが、誰も寄せ付けない冷たさを醸し出している事から、只者では無いと直感させられる。

 ついでに容姿を反映する、その口調(お嬢様言葉)


 総合的に見て初めて彼女を見た人間は、「どこの国のお貴族様がやって来たんだ?」と勘違いするコト間違い無しである――



「梢お嬢様。こちらに」


 彼女こそが小森 (こずえ)であり、稜真が優勝した回、第二十回目“チェラビムス”の準優勝者になる。そして、世界有数の大企業“小森財閥”のご令嬢でもあるので、「お貴族様」という表現は、(あなが)ち間違ってもいない――



 梢は送迎車に乗り込むと、そのまま深い溜め息を付いた。きっかけは二週間前に梓から送られて来た、一通のメール。

 そこに添付されていた写真を見て、梢がその手をワナワナと震わせ、スマホの画面が()()()と悲鳴を上げた事に始まる。


 結局彼女は、その写真を見てしまった以上、いても立ってもいられなくなり、留学先に休学届けを出して日本に帰って来てしまったのだ。

 しかし衝動的に帰って来てしまった以上、彼女の父親をちゃんと説得出来なければ、スグにでも留学先へと()()()()()させられてしまうだろう。

 それでは意味がない。日本まで片道十二時間以上掛かっているのだから、往復でまるっと一日以上を無駄にする事になる。そんな最悪タイパは認められない――



 少なくとも梓に詰め寄り、この写真の意味を問い詰め、何でこんなコトになっているのかを詰問し、激しく追及しなければ気が済まない。それでは泣く泣く身を引いた挙句、忘れる為に留学を選んだ自分が、凄く馬鹿馬鹿しく思えてしまう。

 そうでなければ、掛けたコストにも見合わない。


 そう。梢の手には愛しの稜真と、紫髪のお団子頭の女(ミチル)()()()()()視線を合わせている写真があった――



 要するに梢は、誰とも知らない女に、自分が惚れ込んだ稜真が()()()()と思ったのだ。更に付け加えるとすれば、その稜真が、梓と一緒の部屋で暮らしている事も知らない――



「あの時、わたくしが勝てなかったばっかりに……」


 梢は苦々しい記憶が込み上げて来ていた。“学園”に所属している三年間で、一回でも優勝出来れば、望む願いが叶うとされる“チェラビムス”。

 だが梢はあと一歩というところで三年間、勝利を掴めなかった。

 更に言えば、学園生活三年間を通して、主要(クインク・プ)五教科(リンシパリス)と呼ばれる試験では(稜真)に、一度たりとも勝てたコトがない。

 故に彼女は常に万年二位に甘んじて来たのだ。


 二位である以上、生徒会も“副”会長止まり。だから一縷の望みを懸けて挑んだ“チェラビムス”もこれまたあと一歩のところで、稜真を超える事は出来なかった。

 「稜真を自分に振り向かせてみせる」為に三年間必死に頑張ったのに、写真の中の女と稜真は()()()()()()()()()()


 ――グシャッ


 メールからワザワザ印刷した写真を、梢は握り潰していた。その写真を見る度に彼女のプライドはズタズタに切り裂かれ、その深い橙色の瞳は、淡く儚い恋心を怒りに焚べて、激しく燃やしているかのようだった――



「あ……わたくしとした事が。せっかく印刷した会長(稜真)のご尊顔を握り潰してしまうなんて……はぁ」


「お嬢様、間もなく本社ビルに到着致します。会長がお部屋にてお待ちになっておられますので――」


 「会長(お父様)が待っている」その一言が、梢を非常に憂鬱にさせた。若くして急死した先代会長の跡を継ぎ、早々に社長を梢の兄に譲り渡した父親――小森 楓梢(ふうしょう)。亡くなった先代会長が始めた商いを、楓梢がその手腕のみで世界有数の大企業に育てあげた。

 だからこそ彼の眼力は鋭く強い。


 彼は『魔眼』こそ持っていないが、その有用性にいち早く気付き、“学園”にも多額の出資を行っているとも聞く。そしてその見返りに、多くの卒業生達が“小森財閥”の礎を支えてくれている。


 『魔眼』ではない『慧眼』を持つ“傑物”とも言える父親。そんな強敵を説得しなければならなくなった自分の“衝動”を、少しばかり後悔しつつ彼女()は、会長室へと向かって歩を進めていく――



 ―― To the Next Take ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ