表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/93

Ep55 Chapter“2” Scene“3” Cut“2” Take“1” 底無し沼は唐突に

 ミチルは気付けばヤバい事になっていた。いや、実際は前々から分かって()いたし、気付いて()いた。

 だが“推し活(ランポーくん)して(見て)、眠りにつき、ヤバい事などすっかり忘れて……といったループに“どハマり”した結果がコレだった。

 もうこれは“沼”としかいいようがない。それもとびっきりの“底無し”だ。


 よって、どうしようもない事この上ない……としか言いようがなかった――



「御劔さんッ!なんなんですかこの点数はッ!このままじゃ留年確定ですからねッ!」


 夏になってからというものミチルは、夜遅くまで再放送の“推しアニメ(ランポーくん)”見て、朝起きて学校行って、帰ってからバイトして……と、その欲望のスパイラルという“沼”に、どっぷりとハマっている。

 更に、夜遅くまで熱中しているモンだから、昼間の学校は、ノートに“ヨダレ世界地図”を作成しながら高イビキを掻いている事もしょっちゅう。

 そんなミチルに教師が、握力にモノを言わせた結果、犠牲になったチョークは数知れず。


 元から数学と英語は苦手で……と言うか、そもそも勉強が得意ではないミチルは、常に全教科平均点±10%に収まっていた。

 それが夜更かし&授業中居眠りが続けば、あれよあれよという間に点数は転がり落ちる。その結果、数学と英語は遂に“赤点”という晴れ晴れとした栄誉が、返却されたテストに刻まれていた――



 職員室から戻って来たミチルは鬱々としていた。勉強しようとノートを捲る。そこにはカピカピになっている広大な大陸地図が描かれており、何の役にも立ちそうにない。

 斯くなる上は……と、恥を忍んで友達に頼み込むしか方法は残されていなかった。こうしてお昼休みの間にコピーしようと、借りたノートを持ってコンビニに走ったが、そのサイフは異様に軽かった。


 ミチルはATMの手数料が気になったが、そのままコンビニでお金を下ろそうとしたら、残金は皆無――



 それは偏に、“ばすまいけっと”をクビになった(FA宣言した)事と、“業スムーパー”のシフトを新人に奪われた余波がシワ寄せを運んで来ていたという事になる。

 「こんなことならあの時、水着を買う時に、(ミコロ)に甘えておけばよかった」……などと悔やんでも、羽が生えたお金が戻って来る事はない。


 ミチルは家に帰ったら、バイトまでの間にノートを必死になって写そうと決意して、再び恥を忍びまくってノートを借りて家路についた――



「こんにちわぁ。はじめましてぇ。」


 部屋に向かう為に乗ったエレベーターに()()()()居合わせた女性。確かに「ハジメマシテ」だが、ミチルは今まで、ここの住人とそんな会話すらした事はなかった。

 会っても会釈する程度の、そんな希薄な関係性。


 一方で女性の甘ったるいその喋り方に、ミチルは(ミコロ)を思い出していた。そう言えば今朝、彼女は現れなかった。必ず見計らったかのように現れる皆勤賞だった(ミコロ)が現れない。

 あの子(ミコロ)の性格なら皆勤賞を逃すハズが無いと思いながらも、“母親同伴見守られ小学生”という不名誉なあだ名で今日()()は呼ばれない事が、ルンルン気分にさせてくれたので、凄く懐かしく感じていた。


「あらぁ、お隣さんなんですねぇ!」


 エレベーターを降りて廊下を歩き、ドアを開けようとした時、ミチルは突然話し掛けられ少しだけ()()()とした。

 さっきは気にも止めていなかったが、“お隣さん”と言われれば少しばかり興味が湧いてくる。

 相手に失礼がない程度にミチルが見た感想は、年齢は二十代前半くらい。甘ったるい話し方をしているが、見た目は“ギャル”。

 何故ならヘソ出しのピチTにダメージショーパンを履いているから。

 更に付け足すと、彼女の髪は短い。色は茶髪で毛先が外ハネしている。瞳は吸い寄せられそうな深い碧。

 そして、心が軽くなるような良い匂いがした――



 ミチルはギャルに偏見はないので、飽くまでも外見的判断(見た目で判断)だ。同じ外見的判断(見た目で判断)で言えばカレンもギャルになる。しかし“ギャル”はギャルでも、カレンとはまた違った感じのギャルだと思っていた。


「あーしはぁ、()() ()()()って言いますぅ。何かあったら、よろしくねぇ」


 ミチルは特に宜しくする事も、その気もない。

 ……が、誰とでも当たり障りのない対応が出来るミチルは、「こちらこそ。名前はミチルだよー。()()()()()ピチピチの高校生」とだけ返していた。

 斯くしてメグミはにっこりと笑うと部屋の中へと消えていった。


 ミチルはなんとなく違和感を感じていた。自分は至って普通の女子高生だと思っているが、周りの目はそう見てくれない事がほとんどだ。だから初対面の人間は大抵、ミチルの「高校生」発言に驚いた顔をする。

 だが、メグミはソレがなかった。


 ただ、お隣さんとはいえ、これから絡む事はないだろうと考えたミチルは、そんな事よりも先ずは借りて来たノートと、自分のノートを見比べるのが先だったのである。


「なんだろ、友達の几帳面な文字が、まるで呪文に見えるよーーーーッ!」


 ミチルに明日は来るのか――



 ―― To the Next Take ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ