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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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Ep54 Chapter“2” Scene“3” Cut“1” Take“2” ミスリードは唐突に

「性能比べ?以前、そちらの青年と戦った時に使っていたモノと同じなら、比べるまでもない」


「では聞こう。貴方達、“戦隊ヒーロー”は皆一様に同じ武器を使い、中の人間まで同じだとでも言うの?」


 夕樹菜は(オナカブラック)が参謀ならば、「『魔眼』についての知識が無い以上、それを知りたいハズだ」と考えていた。“孔明”が「(かれ)を知り己を知れば、百戦危うからず」と話していた事を思い出していたからだ。よって、この誘いには乗ってくるだろうと考えるに至る。

 如何にスーツが優秀とは言っても、『魔眼』の本質を理解していなければ、足元を掬われる可能性は往々にしてあるだろう。


「言ってくれる。それなら、その“性能比べ”とやらを試してみるがいい。

 それで?それは、ここでやるのか?」


「別に戦うワケじゃないの。私の『魔眼』を受けて、それが稜真のモノ(『魔眼』)とは違うモノだって理解してくれればいいのよ」


 夕樹菜の『魔眼』は『近眼』。彼女が“視た対象(モノ)”の行動を、阻害する事も促進する事も出来る。

 そして、その“視るモノ”を、彼女は自由に選ぶ事が出来る。

 つまり、この性能比べは――

 何を“視るか”で結果が変わる――


 夕樹菜はオナカブラックの中の人を知らない。よって、中の人の行動を“阻害”や“促進”しようとしても、効果は薄い。それならば狙うのは、中の人間ではない。

 要するに狙いは彼が纏う“(アクティブスーツ)”だ。


「それじゃあ、いくわよ?覚悟はいいかしら?」


 オナカブラックは何も言わず、頭を一回だけ縦に振った。それを“了承”と捉えた夕樹菜の瞳は、怪しく輝きを増していく。エメラルドグリーンに輝く宝石のような美しい彼女の瞳が怪しさを加味し、瞬時にブルーラベンダーへと変わっていった。


 ――アクティブスーツノ微小ナ損傷ヲ、確認。マタ、外部カラ、アクティブスーツヘノ、強制機能制限ヲ受ケテイマス。ヨッテ“自己修復機能”ヲ、開始デキマセン。

 コノママデハ“生命保護機構”モ、出力ガ下ガリマス――


「どうやら、何も起きないようだな?『魔眼』の力とは、些細なモノのようだ。

 これで満足か?」


「あれれぇ?腹黒さん。そのスーツが話してる内容と違う気がしますぅ。やっぱり腹黒さんは腹黒さんなんですねぇ!

 あーしは“耳”がいいんですぅ。ちゃあんと、聞こえてましたよぉ」


 オナカブラックは理解した。先程、夕樹菜は自分達には『目』と『耳』があると話していた。耳が『魔()』とどういった繋がりなのかは分からないが、恐らく彼女()が『耳』なのだろう。

 だがその前にやはり「腹黒さん」呼ばわりはお気に召さなかったようだ。


 しかし(オナカブラック)には、もう一つ解せない事がある。夕樹菜は(アクティブスーツ)の弱点を的確に突いてきた。それはこのスーツの構造を理解していなければ不可能だ。


 「なるほど、彼が『目』か」彼はその違和感に、スーツのセンサーが、稜真の瞳の色が先程までと違うと判定した事で気付かされた。

 要するにオナカブラックは、稜真の役割を読み違えて(ミスリードされて)いた事に気付いた。


「確かにこの状態で戦えば、私は負けるかもしれないな。だが飽くまでも、こちらが“武器(ヒーローウェポン)”を使わずに戦えば……だ。

 しかし、興味が湧いた。一つ条件があるが、それを飲めるなら、前向きに検討しよう」


「条件?」


 オナカブラックはコクっと頷いた。それと同時に夕樹菜の瞳の色は再び美しいエメラルドグリーンを取り戻していく。


「私は腹黒ではないのでな。その言い方を改めてもらおう」


「えぇぇ!腹黒さんって呼び方、あーしは凄く気に入ってたのにぃ!腹黒さんのケチんぼ!」


 「梓ッ!」と咄嗟に夕樹菜は怒鳴り付けていた。まぁ、当然と言えば当然なのだが、それでも梓は懲りずに口を開いていく。


「それじゃあ、腹黒さんはやめますよーーーッだ!その代わり、素顔を見せてくれる約束でしたよね?」


「そんな事を言ったか?

 いや、これはフェアじゃないな。しかし、協力体制が築けた後で……と話した気もする。よってまだ早い」


 梓は目を吊り上げ「ぶうッ!」と、フグのように膨らんでいた。だが、オナカブラックはそんな彼女を放ったらかしにして夕樹菜へと言葉を紡いでいく。


「私が前向きに検討するといった以上、今、そちらが持っている“手札(カード)”を提示してもらいたい。

 それは全ての情報である必要はない。既に居場所が特定出来ているメンバーの色だけでいい」


「分かったわ。今、潜伏先を掴んでいるのは一人。そしてその“色”は――」


 (オナカブラック)は目眩がした。それは偏に彼が期待していた“色”ではなかったからだ。そして、その“色”はオナカブラックからすれば、一番関わりたくない相手とも言える。

 しかし見方を返せば、居場所が突き止めてある以上、その地に足を踏み入れなければ、出会う事もない。


 「それはそれで僥倖……か」と、オナカブラックは割り切る事にした。だが、その“色”と交渉する気はない。よって「ソイツ以外を見付けたら今度こそ、前向きに協力を検討しよう」……と、告げるに至る――



 ―― To the Next Cut ――

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