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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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Ep45 Chapter“2” Scene“2” Cut“2” Take“2” 変なあだ名は唐突に

 ――ザッ

「お話しがあるんですけどぉ、いいですかぁ?」


 「また女か……」最初、彼はそう思った。だが甘ったるい声で話しながらも、どこか様子が可怪しい。明らかにこちらを警戒している。言い寄って来るなら警戒などしないモノだ。

 まぁ、()()姿()なのだから、言い寄ってくる原因は()()()()()に釣られて寄って来る羽虫()ではないという事だ。


「巷を騒がせている「戦隊ヒーロー」の方とお見受けするんですけどぉ。お話しを聞いて頂けませんかぁ?」


 彼女は“戦隊ヒーロー”と単語を発した。それは“ジャスティスファイブ”ではない。「それならこの女はどこまで情報を掴んでいる?」少しだけ興味が湧いた。

 だが――



「生憎だが名乗りもしない相手に付き合ってやる義理はないな。私は探しモノの途中で忙しい。付き合ってやる暇はない」


 ――ザッ


「仲間か?二対一で、私を脅しているつもりか?」


 彼はスーツの下で()()()()()()いた。何があろうと(アクティブスーツ)を着ている自分に、()()()()()()()()()()()からだ。

 それが一対多数であろうと、何も変わらない(遅れは取らない)――



 この世界に、自分が着装している(アクティブスーツ)や、武器(ヒーローウェポン)を貸与した『スポンサー』はいない。それならば、“禁止規約”が定める条項も効力を発しない。


 そして“人数”で自分の事を拘束しようとしているならば、それが指し示す“情報”は「戦隊ヒーロー」という事()()でしかない。

 よって結論を考えるならば、技術的な何かの協力を求める政府機関か、興味本位のメディア関係者……そんなところだろう。前者ならモルモット、後者なら視聴率稼ぎ……両方共お断りだ。


「更に興味が薄れたな」


 彼はボソっと呟いた。その言葉を聞き取ったか否かは定かではないが、後ろから現れた相手は徐に口を開いた。


「二対一ではありません。彼女は手出しさせませんから、何もしないで頂けると助かります。

 話しを聞いてもらえるように、ボクだけで貴方を説得するんですからッ!」

 ――ダッ


 パシッ――


 「舐められたモノだ。この世界に“職業”戦隊ヒーローはいないのだから、それも仕方がない」と彼が心の底で呟いた瞬間、相手は距離を詰めていた。しかし彼は飛んで来たその拳を事も無げに掴んだ。


「おっかしいなぁ。体育(コープス)は得意だったんだけどなぁ」


「か~いちょッ、何言ってるんですかぁ。かいちょおなんて、あーしより体育(コープス)の成績悪かったじゃあないですかぁ」


 「なんなんだ、この緊張感の無さは?」彼はやはり心の底で考える。言葉を発し、情報を与える事は戦闘に於いて不利になる場合が多い。ワザワザ自分の情報を与える必要はない。


 ――彼は違和感を覚えていた――


 ――明らかに人間離れし過ぎた動きだ――


 ――単調な攻撃に交えて多角的に拳を混ぜている――


 ――これではまるで、“線”をぶつ切りにして、“点”のみで殴り掛かっているかのようだ――


 ――これは(アクティブスーツ)や、改造人間とも違う異質の力――



 彼は幾度となく襲って来る拳を受け、弾き、いなす。彼の肉体は疎か、(アクティブスーツ)にすらダメージは届かない。

 よって、彼が見た“多角的な拳”であろうと、その一撃が決まる事はなかった。


「少し興味が湧いた。話しを聞こう」


「やったね、かいちょお!話しを聞いてくれるって!それじゃあ、名前を聞いてもいいですかぁ?名前がないと呼び難いんでぇ」


 この女は調子が狂う。「話しがある」と言っておきながら名前を聞くなど、()()()()()()だろう。


「多分戦隊ジャスティスファイブのオナカブラックだ」


「たぶんせんたい?の腹黒さんですねぇ!ありがとうございますぅ」


 彼は頭を抱えたくなっていた。そもそも面と向かって「腹黒さん」と言われた事など今まで一度もない。初対面の人間に向かってそこまで言い切れるこの女の剛胆さを称賛すべきか、はたまた激怒すべきか実に悩ましかった。


「こちらが名乗ったんだ。そちらのまだ名前を聞かせてもらえるか?」


「ボクは楠 善次郎です。それでこっちが――」

「森下 メグミですぅ」


 オナカブラックの(センサー)が二人の心拍数の高鳴りを捉えた。スーツに隠された口元が「フッ」と口角を上げていく。


「偽名だな。まぁいい。本名を名乗る気がないなら話しはここまでだ」


「ほらだから言ったじゃないですかぁ、かいちょお!もう、これで腹黒さんと交渉決裂したら夕樹菜せんせぇに怒られるのは、あーしなんですからぁ」


 どうやらオナカブラックの見立て通りだ。この男、頭は相当にキレるのだろう。相手に情報を渡さない事はしっかりと抑えている。それなら少しばかり称賛に値する。そして、あの身体能力。一般人には到底思えない異質な力。

 だが、「中途半端な頭の良さは逆手に取りやすい」オナカブラックはそんな事を考えていた。


「ボクは森之木(もりのき) 稜真(りょうま)です。それでこっちの五月蝿いのが――」

「五月蝿いは余計だよ、かいちょお!あーしは森園(もりぞの) (あずさ)。ヨロシクぅ、腹黒さん」


 先ずは梓と名乗った女性にどうやって「腹黒さん」(不名誉な名前)を止めさせようか悩むオナカブラックだった――



 ―― To the Next Take ――

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