Ep44 Chapter“2” Scene“2” Cut“1” Take“1” 暑い夜は唐突に
――ある日、一人のVTuberが配信中に殺された。同接者数10万人が目撃者となった。そして、この前代未聞の殺人事件はネット上で瞬く間に拡散された――
――警察に通報を入れたのはその目撃者達。それだけ目撃者がいるなら犯人は直ぐ逮捕されると警察はタカを括っていた。
だが――
「まったく、どうなっておるんだ!」
叩き上げベテラン刑事の目黒は焦っていた。そんな彼は「現場百回」を信条にしている。その額には大粒の汗が滲んでいた。
「ここで殺人事件が起きたのだろう?それなのになんで物証が、犯人の痕跡が、そして被害者すらいないんだ!」
「それは簡単なコトですよ、警部」
「誰だ!ここは捜査関係者以外、立ち入り禁止だッ!直ぐに出て行けッ!逮捕するぞッ!」
「それはご勘弁を。ボクはただの通りすがりの名探偵です。この事件、ボクに任せてみませんか?お望みなら、直ぐに解決してみせますよ」
――必死に痕跡を探す刑事と、不敵に笑う名探偵……これが、二人の出会いだった――
――斯くして刑事と名探偵。異色な組み合わせの二人はこの後、次々に難事件を解決し、二人はいつしかお互いの事を“相棒”と呼ぶような関係を築いていった――
――あの“事件”が起こるまでは――
「目黒警部、そこは危ないッ!早くこっちに!」
――ドガんッ
「相ぼおぉぉぉぉぉぉぉッ」
突如として巻き起こる大爆発。名探偵ドイル・ランポーはその場に立ち尽くす事しか出来なかった。あの爆炎の中に相棒の目黒がいると知っても尚、彼の足は前に踏み出す事を躊躇った――
――遂に明かされる、怪盗・アダルティの正体とは
名探偵ドイル・ランポー 恐怖のグルグル男・復讐劇 〜 Coming Soon 〜
『みなさんこんばんは、NEWS“ゼロ”のお時間です。先ずお届けするのは、こちらのニュースです。本日の夕方――』
――ピッ
「ふわぁ……ランポーくんが面白過ぎてこんな時間だよぉ。それにしても映画公開楽しみだなぁ。今回は何回見に行こっかなー?
うんッ!やっぱり最低でも三回は映画館に行かないとだよねッ!週替りの入場特典があったら、全部貰いに行かなきゃッ!」
大きな“あくび”と共に時計を見上げるとそこには、長針と短針が見事に抱き合っている姿が見える。
ミチルは明日も学校がある。最近はずっと夜更かし続きで、授業中によく寝てしまっていた。先生から何度注意されたか、もうよく覚えていない。
そんなミチルとしては考えなきゃいけない事が山ほどある。それはランポーくんの事にバイトの事。それ以外は多分、眠れば忘れるようなどうでもいい事。中には忘れちゃいけない事があるかも知れないが、ミチルからすれば些細な事。
だけど今は瞼が重い。明日……いや、今日もちゃんと起きて学校に行かなくちゃならない。それが「普通の高校生」なら当たり前の事。
自分しかいない部屋で誰かに聞かせるワケでもない「おやすみなさい」を呟くと、ミチルは夢の世界へと堕ちていった――
―― To the Next Cut ――
あれから一週間のうち数日は“あの女”がやって来るようになった。何かを買うでもなく、ただ近寄って来ては頭の悪い誘い文句を宣いながら、人のパーソナルスペースに、これでもかと土足で乗り込んでくる。
そんな頭が「悪い」を通り越して「オカシイ」女。
志之先 礼がどんなに冷たくあしらおうとも、出禁を言い渡そうとも、それこそ警察に通報しようとも懲りずにやって来る。そんなあの女にほとほと嫌気が差していた。だが、それと同時に「まさか……な」と思うような事もあった。
あの女は礼の“知人”によく似ているのだ。その“知人”は以前の仕事上の付き合いでしかなく、“本名”すら知らない。だが顔を見れば必ず言い寄って来た。
その女性とよく似ている。特に“掌ペロペロ”なんて、行動パターンがそっくりとしか言いようがない。
でも、そんな事にも興味は無い。対応はいつも通りだ。
「まったく……いつまでこんな生活が続くんだ?」
礼は目的を持ってこの街にやって来た。目立たず行動出来る“夜”を中心に動いているが、なかなか見付からない。だから仕方なく、現金を得る為にバイトをする事にした。
しかし自分が“ばすまいけっと”に入った事で、一人の少女がシフトを削られ犠牲になってしまった。だが、犠牲になったのは小学生だ。本来なら小学生は働けない。法律で決まっている。物理的に働かせてはいけない。それなのにこの店では小学生を働かせていた。
まぁ、そんな事も礼にとってはどうでもいい事。礼は、女性という“生物”に魅力を感じる事はない。それが大人だろうと小学生だろうと関係無い。
かといって、男に対して性的嗜好があるという事でもない。
礼が追い求めた女性は既にこの世にいない。だからこそ、言い寄る女性に靡く事もない。
今日も礼は夜道を歩く。夜中でも暑いが汗一つ掻かずにただ歩く。ただただ目的のモノを探し出す為に――
―― To the Next Take ――




