Ep43 Chapter“2” Scene“1” Cut“6” Take“6” トンデモ理論は唐突に
「それで話しを戻しますけど、皆さんは何をしに来たんですか?」
「そりゃあモッチ、可愛いミチルっちに、ミコロっちと二人で会いに来たに決まってんじゃん!
それにミチルっちの怒った顔も驚いた顔もチョー可愛かったしマジウケる!もっと色んな表情を見せて見せてッ!」
志とカレンの理由は聞かなくても分かる。だからカレンが放り投げた言葉にミチルは納得はしていた。そう、百歩譲って納得だけだ。しかしその考えを理解しようとは思っていない。むしろ理解した時に、自分の身の危険性が問われる事こそ理解している。
だってミチルは「普通の高校生」だ。「ただの女子高生」だ。そんな高校生なのだから爛れたカンケイを望むハズもない。健全な恋愛ならいざ知らず、“百合の花園”なんてまっぴらごめんだった。
しかし夕樹菜の考えは分からない。あの夜の話し合いで、夕樹菜はミチルを金輪際狙わないと聞いた記憶もある。それなのに何故、今頃になって突然現れたのか?部屋の鍵を強引に開け、犯罪者紛いのコトをしてまで。
「学園の方針が決まったから伝えに来てあげたのよ。貴女だって、アタシとの口約束だけじゃ心配だろうと思って」
「いや、それならなんで、勝手に部屋に入ったんですか?」
ド正論のツッコミに夕樹菜は少しドモりながらも、「あ、暑かったから」と小声で話したのだった。
「マジウケる超ウケる!チョベリバ過ぎて草生えるッ!」
「うっさいわね!アンタだって人の事言えないでしょ!本当にシメるわよ?」
夕樹菜の言い分としてはこうだった。学園の方針をミチルに伝えに来たが、ミチルは留守。だからバイト先の“ばすまいけっと”に行ったが、ミチルはいない。しかし季節は夏。外は猛暑。外にはいたくない。
……で、悩んだ末に勝手にお邪魔した……と言うモノだ。
そんなトンデモ理論を語られたミチルは、何も言い返す事が出来なかった。そしてそれ以上に、“ばすまいけっと”以外の“バ先”を知られていない事に安堵していた。
その一方で夕樹菜とカレンは、ヒートアップし始めていた。その様子を「せめて外でやってくんないかなぁ」と、ミチルは呆れ顔で見詰めており、志は“通い妻ムーブ”に則り、飲み終えた湯呑みの回収を行っていた――
「そうだ三国さん。“孔明”と話す事は出来るかしら?戦隊ヒーローについて確認しておきたい事があるんだけど」
――ぴくッぴくくッ
カレンは夕樹菜が上げた名前――「孔明」について少しだけ興味を惹かれた。カレンの中のイケメンセンサーが反応したのかもしれない。その一方で「戦隊ヒーロー」については聞き捨てならなかった。
だから必死に聞き耳を立てて様子を窺う事にしたようだ。
「えっと、ごめんなさい夕樹菜さん。ミコロは孔明先生を常に喚び出しているワケではないんです。
それにここ最近は、カレンさんと一緒に生活しているので“瞳”を使わないようにしてるんです」
夕樹菜は「へっ?」と驚いた顔をした。志がこんな明らかに貞操観念の弛そうなオンナと、同居してるなんて思ってもみなかったからだ。
「そ……そそそ、そう?そうなのね、それじゃあいいわ。また日を改めて“孔明”と話しをさせてもらえれば問題はないから」
斯くして話しは全て終わった。夕樹菜は手早く荷物を纏めると、そそくさとミチルの部屋を後にした。
夏になり陽が伸び、空は深い紫色を纏っていた。外の暑さは日中ほどではない。だが外に出れば汗が出る。淡いピンク色のブラウスに汗が滲んでいった。
夕樹菜は一度、ミチルの部屋の方を見て「若い子の性癖って分からないわ」と呟くと駅の方に向って歩き出して行く――
「いい加減、二人共帰ってくれませんか?」
夕樹菜が帰っても中々に帰ろうとしない二人。結局、ミチルから直接的に言われるまで居座っていた二人が、外に出た時には空は真っ暗になっていた。
「ねぇ、ミコロっち。聞いてもい〜い?」
「どうしたんですか、カレンさん。急に改まって」
カレンはこの世界について知らない“事情”がある事を、先程の会話から察した。カレンは異邦人であって、元からこの世界の住人ではない。だからこそ、『魔眼』について知る由もなかった。
そして、「戦隊ヒーローについて」と夕樹菜が話していた事は、非常に疑問が残る。自分達以外の「職業戦隊ヒーロー」がこの世界にやって来ているとは思えない。だったら、自分達はいつの間にか、何者かに目を付けられた可能性が見えてくる。
カレンは志に話し掛けたものの、上手く言葉が出て来なかった。自分が目を付けられた可能性が残る以上、志の家で暮らすのは彼女に危険が迫る可能性がある。
それに自分が、『アタマピンク』だと志が知った時、どんな目で見られるのかを考えると、堪らなく不安にさせた。
「ごめんミコロっち!なんでもないし」
「変なカレンさん……」
志に自分の正体を明かすべきか否かを悩みながらカレンは、彼女と共に家路に着く――
―― To the Next Scene ――




