Ep36 Chapter“2” Scene“1” Cut“2” Take“1” そういうカンケイは唐突に
「初めまして。今日はお願いします。えっと、ミコロさんの……お姉さん?」
ミチルの視線はその胸元に向かっていた。「両親がいないという事実」以外の家族構成を知らないミチルは、その胸の大きさから志の“姉”と断定したのだろう。
しかし不用意なその発言はカレンに火を付けたようだ。
「違うし!アタシはミコロっちのお姉ちゃんじゃないし!でもミチルって可愛いだけじゃなくて、ギャグセン高くてマジウケる!
それに、おっぱいが大きいだけで“姉妹”になるなら、全世界に“姉妹”がどんだけいんのって話しになるから、超ウケるんですけど!
ミチルサイコーじゃない?サイコー過ぎって言われない?」
「あ……」
ミチルの視線はカレンにバレていたらしい。よってミチルは少しだけ気マズくなっていた。しかしミチルが気マズくなったからと言って、話しが終わる事もない。だからこそカレンはズズズいとミチルに近寄った。
そんなミチルの目と鼻の先には、カレンのそれはそれは立派な二つのバレーボールが巨大な壁のように聳えている。
「それともなぁに?ミチルもアタシと“姉妹”になりたいのぉ?いいわよぉ、お姉さんが優しく色々と教えてア・ゲ・ル」
「もうッ!カレンさん、怒りますよ!ぷんぷんッ」
夏の陽炎よりも脆いパーソナルスペースを崩され、後ずさるようにたじろぐミチルに救いの手を差し伸べたのは、ほっぺたをパンパンに膨らませた志だった。カレンはそんな志の表情を見て直ぐににへらッと笑うと、「妬いてるミコロっちもマジウケるんですけど」と話しをはぐらかしていた――
「ミチル先輩は水着にならないんですか?せっかく可愛いのを買ったのに……」
「い、いやぁ、ミチルはそのぉ……」
カレンの自己紹介から少し経ち、三人は浜辺を歩いていた。照り付ける太陽を遮るモノがない浜辺。カレンは「こんなんじゃ、アタシの珠のお肌が灼けちゃうし」と何やらブツブツ言っていなくなり、どこかからパラソルを借りて来てくれた。
こうして三人は無事に、照り付ける太陽から身を隠す“拠点”を作る事に成功したのだった。
暑いから水に浸かりたいとの想いも忘れ、日陰に座って三人はほのぼのと海を眺めていた。寄るさざ波の音と火照った身体を冷やしてくれる風が心地良かった。
そんな“まったり空間”の静寂を破ったのが、“直情型暴走特急”の志である。
普段からカレンの過度なスキンシップによって距離感をバグらせている志は、どうしてもミチルの水着姿が一刻も早く見たかった。だから、しおらしく言いながらも、その瞳は夏の太陽よりもギラギラと輝いていた。
そんなミチルだが、自分よりもナイスボディ過ぎる二人がいる手前、怖じ気付いていたのだ。よって距離感をバグらせる諸悪の根源たるカレンは、ミチルの背後に回り込み「えいッ」……と、隙を付いてミチルが着ていた薄手のパーカーを脱がしたのだ。
「くぁwせdrftgyふじこlpッ?!」
「なんだ、ミチル。控えめだけど可愛いじゃん!ミコロっちがいなければ、アタシがツマミ食いしちゃいたいくらい。にへらッ」
いきなり水着一枚にさせられたミチルは思わず声にならない声を上げた。そして、無防備になったそのパーソナルスペースへとズカズカ足を踏み入れるカレン。しかしその言葉に反応しない志ではない。
よってミチルをカレンに取られまいとする志も、羽織っていた上着を盛大にパサッと脱ぎ捨てると、ミチルの顔面に向かって暴力的な肉圧を充てがったのである。
「ミチルの顔におっぱいを押し付ける遊び?アタシもヤルヤル〜!」
志の奇行に臆する事なく参加表明したカレンも、同様に上着を脱ぎ捨てると、志の肉圧を受けていない側へ自慢の胸を押し付けていった。これは左右から迫る自尊心を打ち砕く一撃だった。
その光景は、同じ海に来ていた見ず知らずのオトコ共の視線を集めていたのは言うまでもない。
――グいッ
「やめて下さい!ミチルは別にお胸なんて、お胸なんて……うえぇぇぇぇぇん」
コンプレックスをこれでもかと刺激されたミチルは、二人の胸をその掌で押し返し突然の号泣。ミチルが泣き出した事で志はオロオロしていたがカレンはミチルを背後から優しく抱きしめて声を掛けたのだった。
「ミチルが余りにも可愛いくって、ちょーしに乗っちゃっただけだし。ごめん、ミチルっち。ミチルっちは胸がコンプレックスなのかな?
でも、だいじょーぶだし!ミチルは充分可愛いから、世のオトコがほっておいてもアタシがちゃんと――」
――グいッ
「カレンさん!もうッ!本ッ当に怒りますよ!ミチル先輩をツマミ食いなんて許しませんッ!食べるならミコロだけにして下さいッ!」
「ふぇッ?!」……と、ミチルの心に動揺が奔った瞬間だった。そして「二人ってそういうカンケイだったの?」と頭に疑問が湧き、「ミチルってもしかして、そっち方面で狙われてる?」と結論付けるのに五秒も掛からなかった――
―― To the Next Cut ――




