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ミツルとミチルとミクニとミコロ 〜 Romance Trium Regnorum et nobilis gladius 〜  作者: 硝酸塩硫化水素


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Ep35 Chapter“2” Scene“1” Cut“1” Take“1” お買い物は唐突に

 あれから幾ばくかの月日が流れた。季節は夏。今年も日本の夏は暑かった。

 流れていった月日のその間、学校は特に休校になる日が多く、それは超大国間の戦争が激化している事を裏付けていた。


 時折、“Jアラート”がけたたましく鳴り響き、ミチルの住む新町にもミサイルが着弾するなどの実害はあった。しかし特段大した被害などはなく、人々の日常は続いていた――



「ミチルせんぱあぁぁぁぁぁぁい!待って下さぁあぁぁぁぁい」


 学校が休校になる事が多ければ出席日数が足りなくなるのは世の理。従って、夏休みなどという制度は意味を為さなくなる。生徒達からすれば恨み言の一つも多くなるが、それでも暑い夏はやって来る。

 一際大きな声と共に。


 ――がしッ

「うわぁ、ミコロさん⁉ やめてよーあついよーあついのヤだよー」


 アレ(お泊りの日)から学校がある日は、いつもミチルの登校時に()()()()()()()()()()()()現れるようになった。それも必ず後ろから。

 ミチルが訝しんで苦手な早起きをして、電車の時間を早めても結果は同じだった。流石に電車の時間を遅くする事はミチルには出来ない。何故ならここ最近は、遅刻(デッドライン)ギリギリの電車に飛び乗っているからだ。

 それは偏に、“推しアニメ(ランポーくん)”が原因とも言える。毎年映画の公開時期に合わせて必ずやって来る、再放送の皮を被った“推し活”の功罪。

 通称、寝不足――


「良かったですぅ。今日もミチル先輩と一緒に学校に通えるなんて、ミコロは嬉しいですぅ」


 彼女の過度なスキンシップをミチルが、「やめて」と言ったところで(ミコロ)がやめるハズもない。ミチルはそれを、「距離感の詰め方がバグってるから」だと考えた。だけど暑いモノは暑い。押し付けられている部分は特段暑い。むしろ熱い。

 これが寒い冬なら少〜しだけミチルにとっても利益はあるが、夏にはソレが一切無い。コンプレックスと併せると被害は格段に大きい。


「こんだけ暑いと、プールか海にでも行きたくなるなー」

 ――ぴくッ


 それは暑さ故の過ち。人知れず意識が朦朧としていたのかもしれない。故に有意識という名の無意識。()()()()現状で腕に押し付けられた“マグマカイロ”を通じ、(ミコロ)から伝わる“熱”と“振動”を直に感じ取った瞬間、ミチルは酷く後悔した。


「行きましょう!是非是非行きましょう!ミチル先輩の水着姿が見られるなんて、ミコロ感激ですぅ」


 「誰も“行く”なんて一言も言っていない」と、ミチルは言いたかったが、スイッチが入った(ミコロ)は止められない止まらない。諦めるしかない(どうしようもない)

 斯くなる上は、適当な言い訳を付けて逃げるしか道は残されていない。ただ、逃げ切る事が出来る割合を考えると、ミチルは暑さも相俟って頭が非常に痛くなっていった――



「えっと……どちら様ですか?」


「へぇ、アンタがミチル?マジ可愛くて超ウケる!ミコロっちは、こぉゆぅのがタイプだったんだ?新たな発見にアタシの心は超ウケてる」


 弾ける夏。ここは海――



 ミチルは断る為の“策”を練った。そもそも、コンプレックスの塊のミチルは水着を持っていない。幸いにも高校に水泳の授業は無い。だから「水着を持っていない」と言えば、(ミコロ)は諦めると考えた。

 水泳の授業があるなら少なくとも一着は持っている事になるので、その手は使えない。しかし、学校指定の水着を学校以外で着る勇気は誰にも持ち合わせていないと思われるので、やはり使えなくはないかもしれない。

 ……が、案の定、そのくらいの“策”で引き下がる(ミコロ)ではない。結局ミチルは手を引っ張られ、その日のうちに、新町にあるデパートへと連行された。これは「バイトがある」と言う口実を防ぐ為だと思われる。


 更なる上は……と、ミチルは「持ち合わせがない」として断ろうにも、(ミコロ)は「まっかせて下さい!」と一言。胸をドンッと叩き、これでもかとばかりにその大きな胸を揺らしていた。ミチルはその揺れを見て、自分の心も色々な意味で揺れた。


 あれから良く出てくるようになった「もう、どうにでもなれ」がミチルの口癖になりかけているような予感がしたが、「水着購入を防ぐ」という全ての策が葬り去られた今、その口から出て来るのは、その口癖だけだった。


 結局、ミチルは水着を購入する事になった。なるべくコンプレックスを刺激しないような布面積の大きな水着。流石に身長という名のコンプレックスはどうにもならないが、少しでも“盛れ”ば自尊心と引き換えに自己満足は得られる。

 その為にワンピースタイプは最低条件だった。


 しかしミチルは諦めが悪い。水着は買わざるを得なくなったが、公営プールに行けば誰かと出会す可能性がある。流石にそれは居た堪れない。“盛った”姿を見られでもしたら、ある意味で社外的な死を迎えてしまう。

 結論、海に行く事になった。そうなると必要なのは保護者だ。海は遠い。女子高生二人では危険が過ぎる。ミチルは保護者不在の為、断ろうと画策したのだ。


 そして、ここでカレン登場となる――



 ―― To the Next Cut ――

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