Ep33 Chapter“1” Scene“8” Cut“2” Take“1” 思い出話しは唐突に
アタシには昔から変なクセがあったし。“アタマピンク”として“アクトウダン”と戦ったあと、必ず記憶がぶっトぶ。そして必ずと言っていいほど、隣には可愛い女の子かイケメンが裸で眠ってて、アタシとしては何があったのか記憶ないから、一人で超ウケてた。
まぁ、その理由は教えてもらったから、もう理解してるんだけど……さ。
でも今回は違った。アタシはこの家で一人だった。いつもだったらいるハズの子がいなかった。
アタシは少しだけ、ホッとしたんだよね――
結局その日、カレンは志と一緒に寝た。カレンは“”悪食”だ。相手が男(イケメンに限る)でも、女(可愛いは“セイギ”)でも構わない。どっちだってイケる。
だから最初、清楚な感じの可愛らしい美少女・志は格好のターゲットだった。初めて声を掛けられた時も、「カモがネギ背負ってやって来た。だから骨の髄まで貪り尽くそう」と思っていたくらいだ。
だが、志の家に到着するなり気が変わった。志からは同じニオイがすると感じたからだ。本気で手を出せば、食うか食われるか。ミイラ取りがミイラになる危険性を直感で感じ取った。
だから本気で食指を伸ばさず、ツマミ食いだけで様子を見る事にした。それが彼女流の“スキンシップ”だ。
カレンは志が本気で激怒しないラインを見極めながらジワジワと、手を変え品を変え、時には過激なスキンシップを繰り返す事、三カ月。こうしてそんな二人の純情で純粋で、少しだけ爛れたカンケイは出来上がった。
そしてこれは、志が高校受験の直前に終わりを告げる――
志は寝ると警戒心が非常に緩くなる。カレンからすれば食べたい放題だった。しかし自分と張り合う程にまで成長してる大きな胸も、柔らかい太ももも、張りのある艷やかな唇も、自分が奪った先に何かがありそうで怖かった。
だから過度なスキンシップだけで満足する事にしていた。
だから一緒のベッドで寝ても、何もしない。しかし志は勝手に抱き付いてくる。カレンはその柔らかさと温もりが実に心地良かった。
その事実だけは雰囲気が変わったと感じた後の志でも同じだった。
カレンはそれだけで幸せだった――
志は親がいない。親が残してくれた蓄えを切り崩し、あの家で慎ましく暮らしていた。幸いにもあの激しい爆撃でも形だけは残った。だから生活をするだけならば問題はない。
しかしその家が残ってしまった事は、少しだけ悔しかった。本当の事を言えば、跡形も残らないくらい徹底的に破壊し尽くして欲しかった。
裏庭にあるモノを隠す為にも――
ミコロはある冷たい雨が降る日、カレンと出会った。中学校からの帰り道だった。そんなカレンは、裸同然の格好で路地裏に転がっていた。その姿を見た時に彼女の心は揺れた。だから気付けば声を掛け、制服を脱ぎ、カレンに着せる事にした。
中学生にしてはあちこち発育が良過ぎる志のブレザーは、少しだけ小柄なカレンを目立たせる事なく隠してくれた。
カレンが来てから無機質な家に少しだけ温かみが戻った気がした。志は実に一年以上、無機質な暮らしをしていたからだ。しかし、持ち前の前向き思考と、“英傑”達が支えとなってくれたお陰で、そんな無機質な暮らしも「住めば都」だった事に変わりはない。
志は最初、カレンの行動に戸惑いを隠せなかった。受験勉強で必死に足掻いているのに、カレンはベタベタと身体に触れてきたからだ。だけどそれもやはり前向きに考えれば、カレンも寂しかったのだろうと考えるに至る。
それを境に戸惑いは薄れていった。
そして自分と他人との間にある高い壁を乗り越えるには、「パーソナルスペースを踏み荒らしてでも乗り越えればいい」と悟ったのである。
自由奔放なカレンに戸惑いながらも、志は少しだけ心を開き、時間がある時はカレンが甘えて来る事も赦した。それがどんな甘え方だろうと、拒絶する事なく受け入れるようにした。
しかしそれも、高校入試の直前に突然、終わりを迎えた。二人の間に特別な何かがあったワケではない。ケンカしたワケでも、裏庭にある秘密を見られたワケでもない。
志は理由を知りたかった。しかし目の前には試験が迫っていた。
そんな彼女は、受験会場でミチルと出会った――
ミチルはバイトをしていた。学校側が募集を掛けたその日だけのバイト。時給は高くはなかったが、真面目にやれば内申点に加点が入ると情報を聞き付けたので、手を挙げない理由はなかった。
そこでミチルは明らかに挙動不審な受験生を見付けた。話し掛けてもモゴモゴと聞き取れず、ここが地元じゃないミチルは、学区単位で会場が別れるこの受験会場に於いて、その制服を見ただけではどこの中学校かまでは分からなかった。だから受験番号だけで会場を探す必要がある。非常に面倒だった。
だけどそれで諦めたら貴重な加点が無駄になるかもしれないと考えればこそ走り回り、彼女を無事に受験会場まで送り届ける事を成功させた――
―― To the Next Cut ――




