Ep34 Chapter“1” Scene“8” Cut“3” Take“1” 日常は唐突に
――判決が下った。真智ノリトシと正門チエの二人は、殺人及び、死体遺棄。更には検察から次々と暴かれた過去の悪事や、反省が見られない事も加味され、無期懲役を言い渡された――
「異議アリッ!」
――カンッ
「傍聴人は静粛に」
「異議アリッ!」
――カカンッ
「傍聴人は静粛にッ」
「この事件に関してだけは、二人は冤罪です。検察、弁護側の双方が提示出来なかった証拠をボクは持っています」
判決が出た直後に傍聴席から上がった証言に、裁判所内は響動めき立った。裁判長はガベルを打ち壊す程に叩き付け、「静粛に静粛に静粛にィィィィッ!」と力強く連呼していたが騒動が収まらない。
その結果、判決が出たにも拘わらず特例で持ち越しが決まった。
「あんのバカ……」
弁護人席に座る京極圭介は、ドイル・ランポーを睨め付けながらも酷い頭痛に襲われていた――
「証人前へ――」
後日、新たに始まった審理の場。証人として法廷の場に現れたのは名探偵ドイル・ランポーその人だ。
裁判官はドイル・ランポーの職業と名前の胡散臭さから猜疑心に囚われ、しかもそれを顔に出していた。
しかし裁判所が“証人”として認めた以上、彼の言い分を聞く必要がある。
斯くして粛々と証人喚問が始まった。
「先ずこの写真を見て下さい。これは事件現場とされる神社に残されていた、ダイイングメッセージです」
「駅は幌に那智て?なんだねこれは?こんなのが証拠になるハズもない!裁判長、この証人を直ちに法廷から追放して下さい」
「検事は静粛に。証人続けて下さい」
「この文字は拝殿の下。即ち、床下に書かれていました。そしてその地面は激しく乱れていた。そこが恐らく犯行現場なのでしょう」
「馬鹿なッ!警察から上がっている調書にそんな事は……」
「被害者が水死体として上がった時、死後一週間は経過していた。だが、被告人が見たとされるのはその前日。恐らく、床下に放置した遺体の発見を恐れた犯人が、首吊り自殺に偽装しようとした。こう考えるのが妥当でしょう」
「死後一週間経っているのに自殺に偽装する意味が分からん」
「そこが犯人の意図です。誰しもが首を吊っていれば自殺と考える。それが殺人だとは思わないでしょう。そうすれば、自然と連絡が行くのは所轄ではなく、町の交番。そうでしょう?本木ハジメ巡査」
ドイル・ランポーに名指しされた本木は目を泳がせ汗だくになっていた。そして更に彼は追い打ちを掛ける。
「本木巡査はあの境内が被告人達の逢瀬の場に使われている事を知っていた。更には二人の小悪党っぷりも町のお巡りさんとして熟知している。だから、あの鳥居に遺体をぶら下げておけば発見するのは目に見えていた。そして二人は思惑通りに発見し通報するが、本人達は警察にツッコまれては困る様々な悪事がある。だからこそ逃げるだろう……これが、当時の流れです。よって犯人は本木ハジメ巡査、貴方です!」
「わ、私は通報を受けて臨場したが報告書に書いた通りだ。それに、私が犯人だという証拠がどこにある!これは名誉毀損。更には法定侮辱罪だッ!」
「証拠はこれです。犯行現場に残されていたダイイングメッセージ。先程検事は「駅は幌に那智て」と仰ったが、正式には「エキハホロニナチテ」カタカナなんです。そして、被害者の文字のクセ通りに書あてそれを縦書きに直すと……」
「証人はもう少し解りやすく説明して下さい」
「この文字は左右対称になんです。被害者の知人の中で、左右対称になる人物は貴方一人」
「わ、私の名前はハジメだ。左右対称なんかじゃない!」
「えぇ、被害者は知人は下の名前で呼んでいたそうですが、唯一、苗字で呼んでいた人物がいる。町のお巡りさん……貴方です。裁判長、以上がボクが提出する新たな証拠です」
――後日、本木ハジメは自白した。衝動的に被害者を殺し、日頃から悪さが過ぎる二人に、罪を擦り付けようとした事が明らかとなった。一方で本件は冤罪が証明されたが、余罪を追求された二人には新たな裁判が待っているという――
――名探偵ドイル・ランポーはコーヒーを片手に青い空を見上げていた――
名探偵ドイル・ランポー エキハホロニナチテ殺人事件 〜 Fin 〜
『みなさんこんばんは、NEWS18のお時間です。先ずは本日最初のニュースです。西地区の旧市街地で見付かった少年達の証言から、戦隊ヒーローのコスp――』
――ピッ
「今週のランポーくん、カッコ良過ぎじゃない?あの「異議アリ!」ってシーン!鳥肌たっちゃった!だけど、せっかくランポーくんが異議あるって言ってるんだから、裁判長も気を利かせてあげればいいのに!
それにしても途中で出て来た弁護士!ランポーくんに向かってバカって言ってたのちゃんと聞こえてるんだから!バカって言った方がバカなんですーーーッだ!」
斯くしてミチルの日常は戻っていた。そして今日もまた、この後慌ただしく部屋を出て行くのである――
―― To the Next Chapter ――




